有害な農業−工業化された農業の影響
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 110, Number 5, May 2002 Harmful Farming The Effects of Industrial Agriculture By Tina Adler http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2002/110-5/ss.html 掲載日:2002年5月5日 「工業化農業は小規模な家族農業をのみ込み、化石燃料と水と表土をむさぼり食い、汚染物を吐き散らし、地域の経済を押しつぶす」とメリーランド州ボルティモアのジョン・ホプキンス ブルームバーグ校 公衆衛生センターの都市農業コーディネータ、レオ・ホリガン、等はその論文 EHP110: 445-456 でこのように断言している。 農業が環境と人間の健康へ与える影響についての概要の中で、この研究チームは問題の重要性とそのことに関心を持つことの重要性を述べている。「農業がいかに我々の健康に影響を与えているかを考えるときに、公衆衛生の分野ではそれらについての関心をほとんど持っていないということに驚かされる」とホリガンは述べている。 農業が農薬と化学肥料に依存するようになってから、農業が環境へ与える影響は増大している。1950年代以来、化学肥料と農薬は世界中で急速な広がりを見せた。しかし作物は与えられた肥料の3分の1から2分の1位しか吸収せず、殺虫剤にいたっては目標とした害虫に有効に働くのは1%にも満たない。これらの化学物質は地域の土壌や水域を汚染している。実際、農業は全米の70%河川の汚染に関わっている。 多くの昆虫、1990年現在約500種が農薬に対し耐性を持つようになった。農薬は、ミツバチの激減、両生類の発育異常、イルカやアシカ、クジラの免疫機能の不全と関係がある。農薬は人間の、特に農場作業者のがん発生の危険性を高め、また内分泌及び生殖機能に異常を与える可能性がある。 家畜の高密度飼育により、家畜の廃棄物管理上の問題が生じており、特に環境に大きな負荷を与えている。米国の家畜は1997年には140万トンの排泄物を出している。 家畜は、タンパク質を生産するという観点では他の天然資源に比べて非効率的である。例えば、穀物と比べると牛は同量の蛋白質を生産するのにを約100倍以上の水を必要とする。 畜産ビジネスは人間の健康に直接的な害を与えている。抗生物質の家畜への過剰な使用により、抗生物質耐性の問題が世界的に生じている。アメリカで生産される抗生物質の70%は、成長促進剤として健康な家畜に与えられている。 また、食品に起因する中毒、例えばサルモネラ菌は主に大農場の高速処理設備で生産される食肉によってもたらされる。心臓疾患、がん、タイプU糖尿病は、食肉の消費が世界的に増大する中で一般的になっている。 農業では、世界中の膨大な量の非再生可能な化石燃料と貴重な水が使用されている。世界中で約3分の2の水が農業用に使用されている。アメリカの農場では1kcalの食糧を得るために平均して3kcalの化石燃料エネルギーを使用している。牛肉生産ではその比率は1:35となる。食品加工は多大なエネルギーを必要とする。冷凍果物及び野菜1kgに対し1,800kcal、朝食用セリアル1kgに対し16,000kcal、そしてチョコレートにはなんと18,600kcal必要である。 農業の恵みは本当に必要とする人々に対して行き渡っていない。1950年以来食肉の消費量は世界の富裕層の間では2倍に増えているが、貧困層ではそれほど増大しているようにはみえない。大農場は小規模農場を駆逐し、地方の経済を崩壊させている。このような状況にもかかわらず、政府の補助金は、不均衡に大農場に流れ込んでいく。 「このようなことではだめだ」とホリガンは主張する。「我々は技術革新により、投入が少なく(例えば、化石燃料と農薬の使用を少なくし)、作物の多様性があり、そして再生可能なエネルギーと持続可能な手法を用いる比較的小規模で収益の上がる農場経営を開発することができる。例えば大きなワイン製造会社であるガロ(Gallo)は、6,000エーカーのブドウ栽培を化学農法から有機農法へと転換した。その結果は? 生産高は同等でコストは低減した。 (訳: 安間 武) |