ダイオキシン、既知の発がん性物質として認定される
米政府の発がん性に関する第9次報告書

情報源: (NIEHS)/プレスリリース 01/19/01

FOR RELEASE JAN. 19, 2001 NIEHS PR #01-04
TCDD - Dioxin -- is Listed as 'Known Human Carcinogen'
in Federal Government's Ninth Report On Carcinogens
http://www.niehs.nih.gov/oc/news/dioxadd.htm
掲載日:2001年1月21日




 米国国家毒性計画(National Toxicology Program)は19日、発がん性に関する第9次報告書の改訂版を発行して、TCDD 又はダイオキシンとして知られる2,3,7,8-四塩化ジベンゾパラジオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin)を人間に対する“既知の発がん性”物質として追加すると発表した。

 発がん性に関する報告書を作成した米環境健康科学研究所(NIEHS)及び米国国家毒性計画(NTP)の長官、ケニス・オールデン博士はこの改訂が、ダイオキシンを既知の発がん性物質としてリストすることについての係争で、リストしないよう命ずる請求を却下したコロンビア地区巡回裁判所の決定を支持するとするアメリカ上訴裁判所の最近の審判に基づくものである、と述べた。

 当初、ダイオキシンは第9次報告書で人間への発がん性が“十分に予想される(reasonably anticipated)”物質から“既知(known)”の物質へ変更することになっていたが、法廷での係争により遅れていた。訴訟の原告側はダイオキシンを“既知”の発がん性物質としてリストすることは不適切であるとして、米厚生省と米国国家毒性計画を訴えていた。昨年の5月15日に発行された第9次報告書では、ダイオキシンは人間への発がん性が“十分に予想される”物質としてリストされたが、係争中の裁判の結果を見て、改訂版を発行するという但し書きが付けられていた。

 米国国家毒性計画がダイオキシンを発がん性が“既知”である物質とする根拠は、ダイオキシンへの曝露と人間への発がん性の間には因果関係があるということを示す疫学的な情報を含む、人間への発がん性に関する研究によって得られた十分な証拠である。

 ダイオキシンは現在では意図的には製造されていないが、いくつかの除草剤や殺虫剤から不純物として検出され、また廃棄物の焼却時に非意図的に発生する。アメリカでは環境規制のために、近年、ダイオキシンのレベルは減少してきているが、しかし環境中にまだ広範囲に存在し、また人々の体内からも微量に検出される。
 “発がん性報告書”は、がんの危険性を示すもので、人間に発がんを及ぼす危険性のある物質について論じている。この報告書では発がん性に関する定量的な評価は行っておらず、危険を容認できない条件についてだけ評価している。

 従ってこのリストに示す物質が、必ずしも日々の生活における個人にがんを引き起こすというものではない。そのような公式な評価は、連邦政府、州及び地域の健康に関する規制や研究機関によってなされるべきものである。米環境保護局(EPA)及び米食品医薬品局(FDA)がダイオキシンの発がん性に関する定量的なリスク評価を行っている。

 “発がん性報告書”は、米国議会が発がん性に関し“既知”及び“十分に予想される”ことを認定するリストである。報告書の作成は、米厚生省長官により、米環境健康科学研究所(NIEHS)の米国国家毒性計画(NTP)に委託されている。公衆衛生法第301条(b)(4)は、米厚生省長官は報告書を作成するとともに、自然環境中での曝露に関する情報提供、曝露が予想される人数の推定、及び連邦政府による規制がそれらの化学物質への曝露のリスクを減らすための改善効果についてを述べるよう規定している。

 全ての追加物質を含んだ第9次報告書の改訂版は米国国家毒性計画(NTP)のウェブページ:
http://ntp-server.niehs.nih.gov/NewHomeRoc/AboutRoC.html で入手可能である。

(訳:安間 武)

化学物質問題市民研究会
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