平成21年3月26日 内閣府食品安全委員会事務局評価課 「コリンエステラーゼ阻害作用を有する農薬の安全性評価のあり方について(案)」に対する当研究会の意見をに提出したので掲載します。
■参考資料
内閣府食品安全委員会事務局評価課 御中
2009年4月24日
化学物質問題市民研究会
事務局長 安間 節子
〒136-0071
東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4階
- 前文で「農薬の安全性評価は、固定的な判断基準に基づいて行われるべきものではなく、試験データを詳細に検証し、剤の特性に応じて柔軟になされるべきものであり、ここに示した評価方法を機械的に適用するべきではない。」と書きながら、「2.毒性影響の判断基準」において「農薬専門調査会では、統計学的有意差があることを前提に、ベースライン値からの20%以上の阻害を毒性影響ととる判断基準としている。」と、ひじょうに固定的な判断基準を示しているのは、矛盾しているのではないか。
- 「2.毒性影響の判断基準」の、「統計学的有意差があることを前提に、ベースライン値からの20%以上の阻害を毒性影響ととる判断基準としている。(20%以上のChE 阻害があり、統計学的有意差がない場合は、その他のデータも考慮し、毒性影響か否かを判断する。)」 「総合的な毒性影響の判断は、脳(中枢神経系)、赤血球(末梢神経系の代用項目)の いずれかで20%以上の阻害があった場合に毒性影響としている。」:「20%以上」と定めた根拠が示されていない。農薬専門調査会で定めた科学的根拠とそこに到った論議の過程を示すべきである。
- 米国EPAの「統計学的有意差がついた場合、毒性影響とする。固定した阻害率(20%以上)はあらかじめ決定しない。統計学的有意であるが、阻害は20%未満である場合、試験ごとに生物学的意義の有無を判定する。」という判断基準が農薬の安全性を確保する上でもっとも適切であると考える。農薬専門調査会の判断基準は、JMPRの判断基準と比べても、ひじょうに固定的かつバランスを欠いている。
- 環境省/平成20年度農薬吸入毒性評価手法確立調査において、トリクロルホンのラットを用いた吸入による28日間毒性試験のアセチルコリンエステラーゼ活性の測定結果は、「統計学的に有意な活性の低下が、雄では血漿で全投与群、脳と赤血球で30 mg/m3 以上の群に、雌では脳と血漿で30 mg/m3 以上の群にみられた。無毒性量(NOAEL)は、赤血球のアセチルコリンエステラーゼ活性への影響をエンドポイントとして30 mg/m3 であると考えられた。」としている。
この時、もしも農薬専門調査会の判断基準を適用すれば、無毒性量(NOAEL)は、100mg/m3 となる。(雄:脳 30mg/m3:94%、100mg/m3:85%、赤血球 30mg/m3:85%、100mg/m3:75% 雌: 脳 30mg/m3:93%、100mg/m3:81%、赤血球 30mg/m3:94%、100mg/m3:82%)
http://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/hisan_risk/hyoka_tih/com05/mat01.pdf
この例でも分かるように、農薬専門調査会の判断基準は人の健康を守るという安全側に立った観点から、大いに疑問である。
- 「ベースライン値」の定義を示すべきである。この言葉は毒性評価において通常使われる用語なのか、教えていただきたい。
以上
読者のための情報(当研究会)
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