EHNニュース 2009年9月29日
EPA 新たな計画を明らかに
議論ある6つの化学物質の見直しと
アメリカの有害物質政策の改革


情報源:Environmental Health News, September 29, 2009
EPA unveils plan to review 6 controversial chemicals, reform US toxics policy
By Jane Kay
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/epa-chemicals

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年10月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/ehn/ehn_090929_EPA_reform_US_toxics_policy.html


サンフランシスコから報告/ジェーン・カイ

 公衆は、彼らの体内や環境中の化学物質について”当然のことながら不安に思い当惑している”と述べ、オバマ政権下の環境当局最高首脳が、国は工業化学物質を規制する方法を変えることを新たに推進すると9月29日(火)に発表した。

 米環境保護庁長官リサ・ジャクソンはアメリカの1976年有害物質規制法を”異常に煩雑で時間がかかる”と呼んだ。そして、オバマ政権は今後数ヵ月で、化学物質が安全であることを立証する責任を産業側に課す新たな化学物質法の議会通過に努めるであろうと彼女は述べた。

 一方、ジャクソンは、EPAは健康懸念が提起されている6種の注目を浴びている化学物質の分析を開始し、規制すると述べた。これらには、硬質で透明なポリカーボネート・ボトル中に見出されるビスフェノールA(BPA)とビニールや化粧品中で使用されるフタル酸エステル類が含まれる。

 電子機器やその他の製品に添加される臭素化難燃剤;焦げ付き防止コーティングや食品容器包装の製造に使用される過フッ素化合物;潤滑剤、ベンジン染料及び顔料に使用されるいくつかのパラフィンもまた標的とされている。多くの科学者らはこれらの化学物質にはホルモン作用があり、胎児やこどもの発達を阻害し、また生殖障害、がん、その他の健康影響を引き起こす可能性があると述べている。

 ジャクソン長官の表明はブッシュ政権の政策からの劇的な変化を発信するものである。3年前に議会で証言したEPAの最高首脳は工業化学物質からの公衆の健康保護に効果的であるとして有害物質規制法を弁護した。

 ジャクソン長官は、6種の化学物質の安全性を評価し暴露を制限するための確固とした期限を設定することができるよう、EPAはこららの化学物質に関して産業側からデータを収集していると述べた。EPAはその使用を制限するか又はリスクを警告するために消費者製品にラベル表示することを求めるかもしれない。EPAはすでに既存の法の下にそのような権限を持っていると彼女は述べた。

 EPAは6種の注目を浴びている化学物質から着手したが、さらに追加するであろう。EPA当局者らはどのようにこの当初の化学物質を取り扱うかを記述した”化学物質行動計画”を12月に公示し、その後、もっと多くの化学物質についての計画を4ヶ月の間隔で公示すると述べた。

 約8万の化学物質−それらのあるものは消費者製品中に広く使用されている−が現在市場に出ており、あるものは健康と安全に関するデータが欠如している。ジャクソンは、EPAと製造者は時宜を得た方法で最も優先度の高い化学物質を見直し行動すると述べた。

 ”我々の体や環境中にますます多くの化学物質が見出されるので、公衆は当然のことながら心配し当惑している。多くの人々が政府に対し化学物質は利用可能な最良の科学を使用して評価されており、許容できないリスクは無視されていないという保証を求めている”とジャクソン長官は火曜日の夜(9月29日)サンフランシスコのコモンウェルス・クラブでのスピーチで数百人の聴衆に述べた。

 聴衆の一人が、EPAは水質清浄法(Clean Water Act)にある条項のように市民が法の非遵守を告訴する権利を加えるかどうか質問した。

 ”それは良い考えである。それは検討に値する”と彼女は述べた。

 彼女は、市民と州が工業化学物質に自分達で対処していることの功績を認め、それは古い環境主義と新しい環境主義との違いであると述べた。

 ”市民の力は決して無視するべきではない”と彼女は述べた。例えば、化学物質への暴露を懸念する幼児の母親は多くの製造者に対しビスフェノールAを使用しない哺乳瓶を製造するよう働きかけてきた。

 ジャクソン長官はEPAの最高首脳として初めてのカリフォルニア訪問の間にこの声明を発表した。カリフォルニアは昨年、新たな化学物質法を制定したが、それは化学物質を管理するためのより強化された規制を促すよう設計されている。

 さらに、化学製造会社を代表する米国化学工業協会は、もっと研究を増やし化学物質の安全性評価に取り組むための金を出すために”あるレベルの支援を提供すること”に原則として同意すると述べている。

 ”我々は、産業側はもっと多くのデータとそのデータのより高い透明性を提供しなくてはならないことを理解している”と米国化学工業協会の代表カル・ドーリーは述べた。産業側の参加を促進させる力のひとつは消費者の製品への信頼を得たいとし、また化学物質の安全性における世界のリーダーシップを取り戻したいとする願望である。

 産業側の数値によれば、現行法の下で、毎年約7,000種の化学物が合計25,000ポンド(訳注:この数値は小さすぎる)以上が製造又は輸入されている。

 この法が33年前に制定されて以来、わずか5物質が禁止又は制限されただけである。同法は、産業側を規制するためには、EPAは有害物質が健康又は環境に不合理な(unreasonable)リスクを及ぼすことを証明し、使用を制限するコストを考慮し、”最小の煩雑”アプローチを選択することを求めている。アスベストはほとんどの用途で禁止されたが、製造者側が1989年の裁判に勝訴したときに破棄された。

 ”アスベストの決定はEPAに冷や水を浴びせる効果があった”とジャクソンは述べた。

 既存法の改革のための立法は、上院議員フランク・ローテンバーグ(民主−ニュージャージ)と下院議員ボビー・ラッシュ(民主−イリノイ)によって今秋に提案されるであろう。

 ジャクソン長官は、議会を導くことを彼女が期待する一連の原則を発表した。

 EPAは、公衆を保護するためのEPAの能力を強化するであろう新たな法を検討中であり、既存の法を書き変えことにそれほど注力していないと彼女は述べた。

 火曜日(9月29日)に発表された一連の原則の下に、EPAは製造者に、新規及び既存の化学物質は安全で公衆の健康又は環境を危険に曝さないと結論付けるに十分な情報を提供することを求めるのであろう。EPAはまた、化学物質を禁止又は制限するための明確な権限を望んでいるが、社会的便益とコストを考慮する柔軟性を保持するであろう。

 エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ、アース・ジャステス、及びブレスト・キャンサー・アクション・ファンドの代表者らは、新たな規制プログラムはどのように機能するのかと疑問を提起する。グリーン・ピースのリック・ヒンドは、この立法は先手を打って州の行動を封じるものではないかといぶかっている。すでにいくつかの州はいくつかの化学物質に対して措置をとっているからである。

 EPAと産業側双方の首脳は、現時点では先行することで州の行動を妨げることはしないと本日、言明した。産業側首脳は、彼らが州の管理の”ツギ当て”とい言うところの連邦法を望んでいる。

 多くの専門家らは、アメリカは有害物質規制においてはるかに遅れているという。2007年に欧州連合では世界で最も規制的な化学物質法を実施し始めた。それは製造者らに数千の化学物質の特性に関する基本的なデータを提供するよう求めている。欧州化学物質庁は化学物質をレビューし、最も有害なものについては代替を求めている。


訳注:関連記事


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る