ストックホルム+50:より良い未来を切り開く
Stockholm+50: unlocking a better future
Published by:
the Stockholm Environment Institute (SEI) and
the Council on Energy, Environment and Water (CEEW)
この報告書は、2022年6月2日から3日までストックホルムで開催される国連国際会議「ストックホルム+ 50:すべての人の繁栄のための健全な惑星−私たちの責任、私たちの機会」の科学的根拠を提供するために書かれた。 持続可能な未来に向けた変化が人間と地球が直面する課題と歩調を合わせて起こっていない理由についての情報に基づいた議論を刺激し、指導者らが関連する科学によって情報を得て、今とることができる行動に導く。
主要なメッセージ
- 私たちが残した遺産:1972年ストックホルム会議(訳注1)から50年後、私たちは地球(惑星)と人間の両方の絡み合った危機の中で生きている。人間は私たちの気候と生態系に前例のない変化を引き起こしており、地球の危機にほとんど寄与していない人々もその最悪の影響に苦しんでいる。地球の危機と極端な不平等には、変革的な行動と、これらの問題の多くの中心的な推進力としての経済システムへの取り組みが必要である。拡大する不平等は将来の世代と彼らの生活の質にまで及び、環境の変化を加速させ、転換点が突破されるリスクを伴う。
- ”行動の隔たり”(action gap)は顕著である。私たちは政策や願望に隔たりはなく、むしろ行動に隔たりがある。 1972年以来、各国が合意した数百の地球環境と持続可能な開発目標のうち約 10分の 1 しか達成されておらず、あるいは意味のある前進が見られず、それは十分ではない。私たちの問題を解決するための知識と手段は知られており、利用可能であるが、実施されていない。
- 私たちはこれまで以上に変化への備えができている。変化への勢いを利用することにより−増大する公的支援、クリーン・テクノロジーのより迅速な取り込み、包括的で革新的な資金、そして今行動することの前向きな共同利益に関する確固たる科学的証拠 − 2022年は地球上の私たちの持続可能な未来を追求するための新しい分水嶺の瞬間になる可能性がある。
- 変化の速度を加速するためには、大胆で科学に基づいた意思決定が必要である。全てのレベルの意思決定者は、この 10年間で意思決定のための期間を一斉に圧縮して変革を図り、計画対象期間を拡大してロックイン(訳注:今あるものを捨て、同じ種類の別のものへ切り替えることが困難な状態のこと)を回避し、時間のずれに対応し、世代間の認識力の差を減らす必要がある。
- 私たちは、より良い未来を開く鍵を持っている。私たちの科学研究と新しいアイデアの統合は、自然との関係を再定義し、全ての人に持続する繁栄を確保し、持続可能な未来に投資するために、今すぐ行動を必要とする 3つの大きな変化を示している。これらの行動が今開始されれば、それらは変革をもたらす可能性がある。
- 私たちの自然との関係は、採収(extraction)から管理(care)へと再定義する必要がある。都市の自然を完全なものにし、動物福祉を守り、より植物性の食事に移行し、子どもたちと若者のための自然に基づく教育を増やし、先住民の地場の知識を評価、利用することにより、私たちの社会規範と価値体系の中で、そして私たちの日常生活の仕方において、人間と自然のつながりを強化すべきである。
- 私たちの生き方を完全に再考し、有効な基盤を構築し、新しい支援的な社会的規範を鼓舞することによってのみ、全ての人のために持続する繁栄を確保することが可能である。持続可能なライフスタイルを圧倒的に好まれる選択し、製造された製品ではなく提供されるサービスに焦点を当てたビジネスモデルを描き、サプライチェーンを人間と環境の両方にとってより良いものにし、国の統計を持続可能性の目標に合わせ、持続可能性の基準に従ってイノベーションシステムを形成することで、変革を解き放つことができる。
- 私たちは、政府の強力な支援を得て、より良い未来に投資しなければならない。今日、持続可能性への投資にこれまで以上に多くの民間資本が利用可能であるが、低中所得国では資金不足が続いている。より良い未来に投資するには、イノベーションにおける政府の重要な役割を認識、強化し、イノベーションを市場にもたらし、それを必要な規模に引き上げるために民間金融を奨励し、持続不可能性のコストを引き上げる一方で持続可能性へのリスクを軽減する必要がある。
- 変化の条件は向上しなくてはならない。過去の課題を解決した制度とガバナンスシステム(訳注:組織や社会に関与するメンバーが主体的に関与を行なう、意思決定、合意形成のシステム)は、現在の課題の創出に貢献しているかもしれない。指導者には、政策の一貫性を改善し、行動に対する強力で一貫した動機を確保し、私たちが直面する共通の課題に対する連帯を再構築し、多国間主義を刷新し、責任ある約束の文化を創造することによって、効果的な行動を妨げる構造的障壁に取り組む十分な機会がある。
- 今、変革を起こす行動を解き放てば、ストックホルム+100 必要ないであろう。
訳注1
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