EurActiv 2006年10月2日
EU の新たな化学物質規制 REACH 決定の時が迫る 情報源:EurActiv, 2 October 2006 Decision time edging closer for EU-chemicals law http://www.euractiv.com/en/environment/decision-time-edging-closer -eu-chemicals-law/article-158389 (訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2006年10月5日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/06_10_02_decision_time_edging_closer.html 概要: EUで最も激しく議論されている法案、REACH が今週、議会で重要な第二読会に入る。EurActiv は、ほぼ10年前の理事会における当初の提案にまでその歴史を遡って概観する。 関連記事:Chemicals Policy review (REACH)/ EurActiv, Tuesday 17 August 2004 背景: ■化学物質に関わる問題は何か? 1981年以前に市場に出された約10万種の化学物質(既存化学物質)の99%に関し、一般的に知識が欠如している。これはその時以前には市場に出す化学物質について、健康と安全のための厳格なテストが求められていなかったためである。1981年以降、もっと厳格な安全審査を通らねばならなかったいわゆる”新規化学物質”は3,000種類ある。 アスベストのようにいくつかのよく知られている化学物質はすでに禁止されているが、欧州委員会はがんや白血病のように疾病の発症率の増加は化学物質と関連していると信じている。ヒトと動物の血液検査は既知の有害物質による汚染を示しており、それらがどのようにして体内に入り込んだのか、そしてそれらが引き起こす可能性のあるダメージの程度に関する疑問が提起されている。 ■REACH はそれにどのように対処するのか? 新たな規制は、11年の期間に”既存”及び”新規”の両方の化学物質を対象にして、”REACH(化学物質の登録、評価、及び認可)と呼ばれる単一の規制の枠組みとして実施される。 製造者と輸入者は当該物質が市場に出される前に、現在当局が実施しているシステムとは異なり、当該物質が安全であることを示すことが求められる(立証責任の逆転)。申請を認可する又は却下するために新たな機関が設立される。安全審査と登録は二つの基準に基づいて3段階で実施される。 製造・輸入量: ・年間、業者当たり1,000トン以上製造又は輸入される物質は3年以内 ・100〜1000トンまでの物質は6年以内 ・1〜100トンまでの物質は11年以内 リスク: ・発がん性、変異原性、又は生殖毒性を有する物質(CMRs)は最初の3年間で優先的に評価されなくてはならない。 ■どの位の数の物質が評価されるのか? REACH 提案は1981年以前に市場に出された既存の化学物質10万種のうち約3万種をその範囲に含む。これは、年間1トン以下の製造・輸入量の物質はなにも要求されないからである。従来のシステムでは、”新規物質”は年間 10kg以上製造又は輸入されるなら、安全審査を通らねばならなかった。 ■REACH はどこに由来するのか? REACH に関する初期の取組は、1998年4月、イギリスのチェスターにおける非公式な EU 環境大臣会議で発案され、市場に出ている全ての化学物質をテストすために、現状の化学物質政策を見直す必要があることを認めた。規制当局、科学者、環境NGO及び産業界による会議が行われ、1999年に理事会は、将来のEUの化学物質戦略に関する決議を採択し、既存の法的文書の見直しを欧州委員会に要請した。 実際の立法作業は2001年2月発表の将来の戦略の主要な要素を規定した『欧州委員会白書』をもって開始された。 同白書はある化学物質によって引き起こされる”ヒトの健康への深刻なダメージ”についての懸念を反映した。同時に、ヨーロッパで第三の大きな産業分野であり、170万の人々を直接的に雇用し、EUに410億ユーロ(4兆3,000億円)の貿易黒字をもたらす化学産業界の重要性を認めている。新たな規制の枠組みがより安全な化学物質の確信を促進することによって世界市場におけるヨーロッパの競争力をさらに向上させることが望まれた。 2001年、EUの大臣らは、予防原則が新たな政策の基礎となるべきであると述べつつ、健康保護と競争力は両輪の関心事であると認めた。 論点: 提案に先立って行われたインターネット・コンサルテーションの段階で、EUの歴史上かつてない激しいロビーイング活動が行われたとしばしば語られている。2003年5月から10月まで、欧州委員会は産業界、NGOs、及び各国政府から6,000通以上のコメントを受けた。アメリカや日本のような貿易相手国からもまたコメントが出され、欧州委員会の提案は最終的に2003年10月に発表された(EurActiv 28 Oct. 2003)。 最も多大な注目とロビーイング活動は REACH システムで予想されるコストと便益に向けられた。欧州委員会による当初の評価は産業側により異議が唱えられ、産業側は数百万の雇用が危険にさらされると警告した(EurActiv 16 Aug. 2003)。一方、健康団体、環境NGOs、及び労働組合は、莫大な医療コストの節減を指摘して産業側の戦術を”デマ”であると糾弾した。欧州委員会の当初の影響評価は化学産業界およびその下流側ユザーにかかるコストとして、11年間で23億ユーロ(約2,500億円)(産業界の年間売り上げ高の0.05%)であると見積もった。しかしこの口論は2005年4月に発表された最終調査報告まで続き、そこでは化学産業界を破滅させることはないとする欧州委員会の当初の所見だけが確認された(EurActiv 27 April 2005)。 影響評価の論戦は、長い間継続されている REACH の議論における根本的な傾向を描き出した。欧州委員会が2003年10月にその提案を発表した時には、コンサルテーション手続きの間に提起された懸念を考慮するために、多くの重要な変更がすでになされていた(EurActiv 25 Sept. 2003)。最も重要な変更には下記がある。
”議会と理事会の立場はそれほど多くずれていない”−と11月の本会議の前に妥協点を見いだすことができると信じているサッコーニは述べた。 今後の予定:
EU 公式文書 ■第一読会
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