EurActiv 2006年12月13日
REACH 欧州議会で採択
最後の議論渦巻く中


情報源:EurActiv, 13 December 2006
REACH chemicals law adopted amid final controversy
http://www.euractiv.com/en/environment/reach-chemicals-law-adopted-amid-final-controversy/article-160456

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年12月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/061213_REACH_adopted.html


論点:

 REACH妥協案は12月13日、議会において賛成529、反対98、棄権24で可決された。同法案は、本年12月18日における形式的な最終承認のためEU閣僚議会に送られる。

 2007年6月から発効するこの新たな規制は、化学物質の製造者及び輸入者に、現在日用品中で使用されている約30,000物質の健康と安全に関するデータを提出することを求める。これらの物質はコンピュータや携帯電話に用いられているプラスチックから繊維製品、塗料、家具、おもちゃ、クリーニング用品にまであらゆるものに使われている。

 全ての化学物質はヘルシンキに新たに設立される化学物質庁に11年の間に登録されなくてはならない。登録手続きは高生産量化学物質とともに最も有害な化学物質から着手される。

 妥協案の詳細は議会のREACHに関する交渉責任者ギド・サッコーニによって明らかにされた。合意の核心は最も有害な物質のより安全な物質への代替である(訳注1)。もし合理的なコストのものが存在するなら、有害な物質は代替されなくてはならない。もし存在しなければ、会社は将来の代替のために代替計画又は研究開発計画を作成する必要がある。同案は産業側のロビーイングによりひどく後退させられたと環境団体に警告されたが、議会は法案本文の基本的な部分−立証責任の当局から産業側への転換は損なわれずに保つことができた。

 ”特定の化学物質についての懸念を正当化しなくてはならなかった各国当局に代わって製品が安全であることを示す責任は製造者側に移った”と自由民主党(ALDE)の環境報道担当クリス・デービスは述べた。

立場:

 欧州化学工業協会(CEFIC)は、全ての利害関係者−産業、川下化学物質ユーザー及び環境団体−に受け入れられる妥協案に達するためにEU諸機関によってなされた努力を認めた。

 ”立法過程での課題は、真の改善をもたらすよう実行可能性を確保することであった”とCEFICの代表アレン・ぺロイは述べた。しかし彼は、”有害物質の代替に関連してREACHの認可要素に不必要な要求が加わった”と遺憾の意を表明した。

 ”それは明らかにコストに加算される”とし、代替は ”規制と管理のアプローチ” によって支配できるという誤解をペロイは非難した。それはビジネスに”法的不確実性”をもたらし、投資と革新を抑制するとペロイは警告した。

 CEFICは、これからはこの新たな規則を実施することに焦点を当てるべきであると述べた。ペロイはEU機関にREACHの実施を成功させるために必要な技術的ガイダンスと文書を開発し続けるよう要求した。”このことに関連して最も重要なことは効率的でコスト効果のある機関を設立することである。”

 中小企業の団体は、低生産量物質の安全性評価を低減することにより中小企業の手続き的負担を軽減した努力を評価すると述べた。しかし全体として、中小企業団体である UEAPME は、結果には”全く失望した”と述べた。

 ”データの共有とデータの自由化の問題は結論が出ず、コストの分担に関する法的な規定は将来の指針に示されることとなった。もっと多くのことができたはずだ”と UEAPME の環境政策ディレクター、ギド・レナは述べた。

 欧州労働組合連合(ETUC)は、化学物質リスク管理に関して進展したことを歓迎するが、産業界が改革を後退させるために EU の諸機関に7年にわたってロビーイング活動を行ったことを非難した。

 特に、ETUC は労働者の健康を保護するために重要な化学的安全報告書中の情報は、”今では当初計画されていた化学物質の3分の1に要求されるだけ”となったと述べた。

 ETUC はしかし、製品の安全性を立証する責任は製品の製造者に転換されたこと歓迎した。”産業側は今後は市場に出す前にその化学物質の安全性に関する情報を提供しなくてはならなくなったことは、明らかに進展である”と ETUC のジョーエル・デカイロンは述べた。

 環境団体は妥協案に懐疑的である。肯定的な面として、グリーンピースとWWFは以下の点を歓迎した。
  • 今後、会社は大量に製造又は輸入する(年間10トン以上)化学物質の安全性を証明する責任があること
  • 残留性及び生物蓄積性がある化学物質に関し、もしより安全な代替品があれば、代替するメカニズムがあること
  • 公衆は製品中に含まれる化学物質についての情報を要求することが許されること
 しかし、否定的な面として、彼らは”大きな抜け穴”を指摘した。それらには次のようなものがある。
  • 発がん性物質と出生障害及び生殖障害を引き起こす化学物質に対する安全要求が弱められたこと
  • 低生産量(年間10トン以下)に”意味のない安全データ”が要求されること
  • ”高懸念”化学物質において、人の健康に脅威を及ぼさないとする”安全閾値”が定義できる場合には、生産者が”適切に管理できる”ことを証明できれば市場に出すことが許されること
 ”適切な管理というアプローチ−及び安全な閾値は、もし化学物質の組み合わせによる未知の影響が脆弱なホルモン機能、及び生命の最も早い時機における子どもの発達に及ぼされるなら、それはリスクのある賭けである”と同環境団体は述べた。

 最終的に、多くのことはフィンランドのヘルシンキに設置される新たな化学物質庁に依存すると彼らは述べている。”ヘルシンキの新化学物質庁はREACHが期待された結果を出すことを確実にするためにしっかりと監視しなくてはならない”と WWF は述べた。”化学物質庁による必要な支援がなければ、有害な化学物質は野生生物、我々の家、そして我々の体を汚染し続けるであろうし、REACH は失敗であることを証明することになるであろう”

今後の展開:

2006年12月18日理事会の形式的な同意
2007年:REACH 発効予定
2008年:欧州化学物質庁業務開始、高生産量化学物質及び最も有害な化学物質の事前登録開始
2018年:少生産量化学物質(1トン以上)の登録終了


訳注1:
EurActiv 2006年12月5日/REACH 妥協案 非難の集中砲火



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