REACH パブリック・インターネット・コンサルテーション
アメリカ政府のコメント概要

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:Comments of the United States on the European Commission's Draft Chemicals Regulation
掲載日:2003年10月18日

アメリカ政府のコメント概要
この概要はアメリカ政府の
Comments of the United States on the European Commission's Draft Chemicals Regulation の
はじめに (Introduction) 、概要 (Overview) 、及び結論 (Concluding Remarks) を翻訳したものです。
主要なコメント (Key Elements of Concern) の訳は省略しました。

はじめに

 欧州連合 (EU) の経済、及び政治の主要なパートナーとしてアメリカは、EU の新しい化学物質に関する法の枠組みへの取り組みに対し非常に関心を抱いている。化学物質はいくつかの方法で製造、又はほとんどの製品中で使用されているので、欧州委員会の提案は、 EU に輸出されているアメリカ製品 (2002年度 1,430億ドル 約 17兆円) の大部分に影響を与えることになる。
 したがって、我々は、欧州委員会の REACH (化学物質の登録、評価、及び認可) 実施による化学物質規制に対し、コメントする機会を得たことを歓迎する。

 この重要な法規制に関する欧州委員会の今回のパブリックコメント募集は、建設的で注目すべきことである。我々は、委員会が EU の化学物質規制案に対しパブリックコメントを求めていることに意を強くし、非 EU 関係者を含む全ての関心ある団体がコメントする機会を与えられたことを評価する。
 我々は経験的に、規制プロセスは、広く世間に周知し、コメントを求めることで改善されるということを知っている。それにより全ての関連する見解と情報が検討され、その結果、より効果的で現実的な法規制とすることができるからである。
 我々はまた、委員会の影響評価が完了したら、是非それを検証したい。それは法規制の質を高めるのに重要なツールであるからである。

 欧州委員会の ”より良い法規制パッケージ Better Regulations Package” に関する昨年の我々の広範なコメントの中で述べたように、アメリカは EU の法規制の質を高め、規制プロセスをもっと透明にしようとする委員会の目標を支持するものである。
参照 http://europa.eu.int/comm/secretariat_general/sgc/consultation/docs/cont_us.pdf
 我々は、欧州委員会がその提案を最終的なものとするにあたって、欧州委員会と建設的な対話を続けることを期待している。

概要

 アメリカは、環境と人間の健康の強固な保護への EU の関心に共感するものである。これらのことは、我々が国内法を通じて、また、化学物質の分野における国際的な規制と調和を促進するために積極的に活動に参加することを通じて、達成しようとしている目標でもある。
 我々はまた、化学物質の法規制に関する欧州委員会との建設的で双方向の法規制の対話と技術情報の交換を歓迎する。

 アメリカはまた、現在使用されている化学物質に関する情報の収集、環境によく安全な新らたな化学物質の導入、そして、化学物質規制のための EU におけるシステム改善の努力についの EU の関心を高く評価し、それを支援するものである。

 しかし、我々は、 EU の化学物質規制案が、特に高価で、煩雑で、複雑なアプローチを採用しようとしているように見えることについて懸念を抱いている。それらは規制を機能しないものにし、革新に悪影響を与え、世界貿易を混乱させるものである。
 その提案はまた、政府と産業界に対し、多くの資源(人材と資金)を強いることになる。この点に関し、委員会の提案する法規制アプローチは、実行可能性について、したがって、健康と環境政策の目標を効果的に達成する能力について、疑問を生じさせるものである。

 委員会の規制案の実行可能性に関し、アメリカが懸念する多くの重要な点がある。それらの中で、我々は下記の点をハイライトする。
  • 提案は一般的に実行不可能な法規制アプローチを設定している
  • 現在進められている国際的な法規制に関する努力から逸脱している
  • 不確実な利益に対し著しいコストが発生する
  • 中小の企業 (SMEs )に対し不都合な影響を与える
  • 世界貿易を混乱させる
  • 革新に対し悪影響を与える
  • 市場を不確実なものにする
  • コンソーシアム及びデータ共有に関する懸念が生じる
 提案の範囲と意味するところは広いので、この EU の規制案は EU の多くの貿易パートナーにとって多くの関心と懸念 がある。我々はまた、委員会の法規制アプローチに関する多くのヨーロッパ人による研究が、ヨーロッパの経済と雇用に多大な悪影響を与えると予測していることを指摘する (MERCER, Arthur D. Little)。
 委員会の規制案は、プラス及びマイナス双方の影響に関し正確に、かつ完全に評価されることが重要である。

主要なコメント
(略)

結論

 我々のコメント概要で示したように、委員会の規制法案は、特に高価で煩雑で複雑なアプローチを採用しようとしているように見える。それらは規制を実行不可能なものとし、革新に悪影響を与え、世界貿易を混乱させるものである。その目標を達成するための、より良いアプローチとして、我々は委員会に対し、下記を強く勧告する。
  1. 最も高いリスクを及ぼすと思える物質に EU の資源が注力できるよう、法規制の適用範囲を狭めること
  2. 既存の化学物質が及ぼすリスクに対し、効果的に向けられている現在の国際的な共同努力を補完するものであり、決してそれに置き換えるものではないというアプローチを展開すること
  3. 法規制が決定される過程を明確で透明なものにすること
  4. EU の規制案は、プラス及びマイナス双方の影響に関し、完全で、かつ透明性をもって評価されること
 委員会はまた、その最終提案は EU の国際的義務に完全に沿うものであることを確実にすべきである。

 透明性は、バランスの取れた効果的な法規制アプローチにとって重要である。この大規模な法規制における広範囲な関わり合いと世界中の関心を鑑みて、我々は、委員会がどのように最終提案に取り組もうとしているのかということを含めて、受け取った全てのパブリック・コメントに対し、徹底的に、意味ある検討を行うために、委員会が十分な時間を割くよう主張する。
 7月10日のパブリック・コメントの締め切り後、委員会は、貿易、雇用、そして革新に不必要なコストを賦課することなく健康と環境を保護するために、規制を効果的なものに改善する改訂案を作成するために適切な時間をとることが重要である。

 提案を最終的なものにする前に、委員会が、”より良い法規制の主導”に合致した、川下ユーザーと将来の投資及び革新に関する影響評価を含む広範な影響評価を実施するよう主張する。
 この提案された法規制案が EU 及び国際的関係者に及ぼす影響は広範なものなので、いかにそれが実施されるかということについての現実的な仮定に基づき、完全で包括的な評価を行うことに値する。

(訳: 安間 武 /化学物質問題市民研究会)


化学物質問題市民研究会
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