ChemSec News 2016年10月21日
化学物質へのハザードベース・アプローチが
革新と市民の健康の両方にとって
解決のカギとなる

テリーザ・キイェル (上席政策ビジネス関連顧問)

情報源:ChemSec News, October 21, 2016
The hazard based approach to chemicals is key for both innovation and citizen health
Theresa Kjell, Senior Policy and Business Advisor
http://chemsec.org/the-hazard-based-approach-to-chemicals-is-key-
for-both-innovation-and-citizen-health/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年10月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/161021_ChemSec_hazard_based_approach.html

 今週、ケムセック(ChemSec)は、欧州員会事務総局(Secretariat-General)と会い、REACH と REFIT プロセスを討議した。欧州員会事務総局は非常に興味深い組織である。それはどこにでも顔を出しているが、人目につかず、人々はほとんどそれについて聞いたことがない。それでは一体どんな組織なのか? そこは欧州の政治の場で発言力をもち、欧州委員会委員長ジャン=クロード・ユンケルに答申する600人の人々からなる。

 その会合の理由のひとつは、欧州委員会が化学物質立法においてハザードベースの要素を減らし、もっとリスクベースのアプローチを取り入れるために、REFIT プロセス(訳注1)を使用することを望んでいるという噂があるからである。なぜこのことがそのように重要なのか? それは欧州が、それ以外の他の地域が取り入れているリスクベースのアプローチより、むしろ化学物質が持つ人間や環境に対する固有の有害性を意味するハザード特性に基づいて化学物質を特定するという事実のためである。ハザードベース・アプローチは欧州が持つ有害化学物質から市民を守る最良の方法である。リスク支持者らは、有害化学物質への暴露を制限すれば、それは問題を引き起こさないと主張する。そして閉ざされた環境中ならその通りであり、私は同意できる。しかし、世界の市場は閉ざされた環境からほど遠い。製品や成形品の全ライフサイクルを通じて全ての可能性ある暴露を予測することは不可能である。

 しかしハザードアプローチは市民や環境を保護することだけについてのアプローチではない。それはまた、新しいより安全な化学の革新のための非常に効果的な推進力でもある。我々は今後なされるであろう化学物質規制の予想がいかに市場におけるより安全な代替物質を作り出すかを何度も見てきている。リスクベースのアプローチでは疑いなく規制される化学物質の数が少なくなり、革新がなされず、いつも通りのビジネスとなる。

 サプライチェーンの下流側にいる多くの会社やブランドはこのことを理解している。彼らは有害化学物質が彼らの製品中に含まれていることを望まない。家具小売り店は、厳密には合法であろうと、ソファーに発がん性物質が含まれていることを望んでいるとはあなたは思うであろうか? もちろん思わない。もし顧客がそれを見つけた時の反動を想像してみればよい。

 持続可能な化学のこの傾向は、遅い列車であるかもしれないが、それは間違いなくスピードを上げている。欧州委員会委員長ジャン=クロード・ユンケルと事務総局がこの列車に乗り続けることを期待しよう。


訳注1:REFIT (Regulatory Fitness and Performance programme)関連情報

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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