下記は、COP7(ストックホルム条約第7回締約国会議)が対応するよう要求する問題に関する IPEN の見解声明の概要である。
POPs 廃棄物
- バーゼル POPs 廃棄物は、第5条及び第6条、並びに BAT/BEP ガイドライン中の義務を考慮しつつ、それらの分解効率のための技術提案と非意図的な POPs を生成する可能性を評価するために、ツールキット(Toolkit)及び BAT/BEP 専門家グループにより、見直されるべきである。
- 括弧中で提案されている低POPs含有制限値は、既存の POPs 50 mg/kg という暫定的な制限値と一貫性がない。低POPs含有制限値は、HBCD、商用ペンタ BDE 混合物、及び商用オクタ BDE 混合物について 50 mg/kg 又はそれ以下であるべきである。50 ppm という低 POPs 含有制限値は健康に基づく基準ではなく、POPs の特性を考慮すると、もっと低く、厳しくすべきである。
- ガイドライン(UNEP/CHW.12/5/Add.2)中にある自治体の廃棄物焼却に関する括弧付きの部分は削除されるべきである。これらの施設は、第5条及び第6条中の義務の下にある POPs 廃棄物を取り扱うように設置されていない。
- セメントキルン燃焼廃棄物は 附属書 C (非意図的生成物)中の POPs の発生源分類のひとつである。POPs 廃棄物ガイドライン草稿(ドラフト)は不完全であり、BAT/BEP ガイドラインの中にあるセメントキルンについて多くの重要な警告が足りない。ガイドラインは、主にクリンカーを作るためのものであって、これらの条件は廃棄物の分解には適切でないかもしれないと言及している。セメントキルンはしばしば、POPs の分解には不適切であり、多くの国では、これらの専門的装置の規制及び管理を行うのに極めて重要である規制及び分析能力が足りない。
- POPs 廃棄物ガイドラインは、廃棄物焼却炉、セメントキルン、パルプ製造、及び冶金プロセスを含んで第5条発生源分類を明示的に述べて含めるべきである。
- POPs を含む製品は、その廃棄物の経路及び在庫目録を効果的に管理するためにラベル表示されるべきである。これは、容認できる例外の下に現在、リサイクルされている製品はもちろん、廃止された製品も含む。
- 新たにリストされた POPs のための分解のレベル、低POPs 含有量、及び他の POPs 廃棄物問題は、 POPRC(POPs 検討委員会)、ツールキット、及び BAT/BEP 専門家グループを含むバーゼル及びストックホルム条約の適切な組織により協力して実施されるべきであり、単にバーゼル条約組織に引き渡されるべきではない。
- COP は、締約国がまたBAT/BEP ガイドラインを、条約の 附属書 C (非意図的生成物)にリストされている発生源分類、特にバーゼル技術ガイドライン中のESM(環境的に適切な管理)技術の中にリストされているものに適用するするよう促すべきである。
財源
- 化学物質関連には十分な資金が供給されていない。GEF6 では化学物質と廃棄物は総額の12.5%($554 million USD)である(Note 1)。GEF6 における POPs のための資金は GEF5 と同じで $375 million USD である(Note 2)。GEF5 を越える資金増額は主に水銀のために向けられている。(訳注:GEF については 地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)(外務省)を参照のこと)。
- 現状の資金必要性評価のための TOR (terms of reference 枠組み)は、必要資金の見積もりは第15条に従い、NIPs(国家実施計画)と報告書に基づくであろうと述べている。もし、87%の締約国が2009年にリストされた POPs についてすら国家実施計画を更新していないなら、その評価がどの程度正確なのか不明である。
- 国家実施計画中で特定された2015年〜2019年の期間の必要資金の COP6 の見積りは、$1.9 billion USD である(Note 3)。この見積もりは新たな POPs に関連するコストを含んでいない。GEF の資金供給は同じなので、条約の必要とこの期間の資金供給の間に少なくとも5倍の相違がある。
- 時間的制限があるのだから、特別プログラムが諸国の必要とそれらが述べる目標に実際に合致することを確実にするために、必要性評価をその設計中に含むべきである。
- COP は、公益 NGO の条約実施への寄与という重要な役割り、及びプログラムの目的に合致した NGO 活動のある程度の資金供給を可能にするための制度的強化を検討するために、特別プログラムの執行委員会を招聘すべきである。
- 第13条に概要が示されている新たなそして追加的な資金供給のための必要性と義務は実現されていないので、POPs を製造した会社及び/又は彼らの拠点国からコストを回収する経済的手段を含んで、他の資金供給源が調査されるべきである。
技術的支援と地域センター
- PCBs の大量の保管を考慮して、条約の要求に合致する焼却しない分解手法への技術的移行が最優先である。
- 国家報告及び目録データの収集に関する訓練が条約実施に極めて重要である。
- 直接的な”体験学習”アプローチは、特定の問題のための技術的支援を得る、そして将来同様な問題にどの様に取り組むかを学ぶワークショップより効果的で持続可能であるかもしれない。
- 16か所のストックホルム条約地域及び準地域センターのうち6 か所(37.5%)が65%又はそれ以下の不十分な評価得点を示した。条約実施を効果的に支援するために不十分な実績の理由が特定され、地域センターとして継続するためにその運用が改善されるべきである。
- 地域センターは、諸国の必要を満たし、それに従い彼らの作業プログラムを開発すべきである。作業プログラムは地域センターが受け持つ国に承認されなくてはならない。
- 経験と最善の実施は、南−南の協力を含んで、センター間で共有されるべきである。
- 地域センターは、プロジェクトの設計及び実施への直接参加を通じて、彼らの作業に公益NGO及び市民社会組織の関与を増やすべきであり、基準が彼等の評価と報告に含まれるべきである。
手続きの規則
- 締約国は、合意のための全ての努力が失敗した場合には投票で決定することができるよう、規則45.1 中の括弧を外すことによって、条約の効果的な運用をはかるべきである。
遵守
- 第17条は、”可能な限り速やかに” COP が遵守システムを開発することを求めている。 COP7 は、不遵守をはっきりさせ、それを取り扱うための手続きとメカニズムを承認することにより、合意を完成させて第17条 の要求に応じるべきである。
- 不遵守メカニズムは、技術的及び資金的支援の優先的必要性を特定するのに役立つであろうし、全ての条約義務を考慮すべきである。遵守メカニズムは、タイムリーに最も効率的な方法で問題を明らかにし諸国を支援するとともに、条約の実施の効果を評価するためのツールである。
- バーゼル条約は、様々なトリガーを含んで、ストックホルム条約のための有用なモデルを提供する遵守メカニズムを持っている(Note 4:GEF)。
- 報告要求についての不遵守を含んで、条約義務の不遵守は、その目的を達成するための条約の能力を損なうものである。例えば:
- 締約国の13%が、最初の12種の POPs をカバーする国家実施計画を条約事務局に提出していない(Note 5)。
- 締約国の87%が、2009年にリストされた9種の POPs の更新を国家実施計画の中に織り込んでいない。ほとんどの国にとって更新期限は2012年8月26日であった。ある国家実施計画は大気排出だけに対応しており、要求されるような全ての媒体に対応していない。
- 締約国の30%だけが、第15条に従い、2014年11月15日までに第3回国家報告書を提出した。
ペンタクロロフェノール(PCP)の 附属書A(廃絶)へのリスト
(訳注:【主な用途】農薬、殺菌剤、木材の防腐、シロアリ駆除(ペンタクロロフェノール/ウイキペディア))
- PCP は、POPs 検討委員会(POPRC)により勧告された通り 附属書A(廃絶) にリストされるべきである。
- 天然の硬材、コンクリート、鋼材、及びファイバーグラス強化材を含んで、技術的に実行可能な非化学的及び経済的に存立できる代替が広く利用可能なので(訳注:木製の電柱に防腐剤として使用するケース)、特定適用除外(specific exemptions)を PCP のリストに含めるべきではない。現在の PCP 用途に対する非化学的代替は、より長寿命であり、POPs 廃棄物にならないであろう。これらの代替物を作っている産業は代替の準備ができているようであり、既に PCP を禁止している多くの国、又は現在 PCP を使用している少数の国で効果的に実施されている。
塩素化ナフタレン(CNs)の 附属書A(廃絶) 及び 付属書 C(非意図的生成物)へのリスト
(訳注:【主な用途】ケーブル絶縁、木材保存、エンジンオイル添加剤、電気めっき用マスキング材、キャパシタ、屈折率
測定用浸油で染料用原料としても用いられる。 (世界保健機関 国際化学物質安全性計画:塩素化ナフタレン))
- CNs は、POPs 検討委員会(POPRC)により勧告されたように、附属書 C(非意図的生成物) 及び特定適用除外(specific exemptions)なしに附属書 A (廃絶)にリストされるべきである。
- 現在の意図的な使用は知られておらず、ダイオキシンやフランのような非意図的に生成される POPs を削減する措置はまた、CNs にとっても効果的であろう。
ヘキサクロロブタジエン(HCBD)の 附属書A(廃絶) 及び 付属書 C(非意図的生成物) へのリスト
(訳注:【主な用途】日本での用途は不明 (環境省))
- HCBD は、POPs 検討委員会(POPRC)により勧告されたように、付属書 C(非意図的生成物)及び特定適用除外(specific exemptions)なしに附属書 A (廃絶)にリストされるべきである。
- 現在の意図的な使用は知られておらず、ダイオキシンやフランのような非意図的に生成される POPs を削減する措置はまた、HCBD にとっても効果的であろう。さらに、代替製造プロセス、改善されたプロセス制御、排出制御措置、及び現在利用可能なパークロロエチレン及びトリクロロエチレンのより安全な代替を実施することにより、非意図的な排出は最小にすることができる。
適用除外及び容認できる用途
- 締約国は、特定適用除外及び容認できる用途への依存を速やかになくし、可能な限り早急により安全な代替を導入すべきである。
- リンデンと PFOS/PFOSF の特定適用除外は、特定適用除外は2016年と2019年に終了するという修正を後に受け入れた二締約国を除く全ての締約国について、2015年に終了すべきである。
- 締約国は、ジコホルには POP 特性があるので、閉鎖系で場所限定のジコホル製造過程の中間物としての DDT の製造と使用のための終了期日を延長すべきでない。 附属書B 第一部 注釈(iii)は、COPは、”附属書D1の基準を考慮して残留性有機汚染物質の特性を示さない”場合にのみこれらの延長を承認すべきであると述べている。 インドは2014年3月に延長要求を提出したが検討委員会(POPRC)は、2014年10月の第10回会合でジコホルは附属書D のスクリーニング基準に合致するということに合意したということに留意すること。
DDT
- IVM(包括的ベクター管理)の規模拡大及び地域社会の参加への支援増強を含んで、非化学的手法のさらなる研究と実施、及び疾病ベクター・コントロールのための戦略が加速されるべきである。
- 締約国は、非化学的手法の実施を含んでマラリア・コントロールのための戦略を報告すべきである。
- 屋内残性留散布によるDDTの使用は、より安全な代替を選び、疾病の影響と殺虫剤の耐性を考慮して、可能な限り制限されるべきである。
- 技術的支援はDDTの代替開発に焦点を当てるべきである。
- 疾病害虫管理のための DDT に対する代替として製品、手法及び戦略の開発と配備のための世界的同盟(Global Alliance for the Development and Deployment of Products, Methods and Strategies as Alternatives to DDT for Disease Vector Control)からの、もっと公的に利用可能でタイムリーな更新及び報告が必要である。
(訳注: Global Alliance for Alternatives to DDT 疾病害虫管理のためのDDTに対する代替として製品、手法、及び戦略を開発するための世界連合:2009年5月に開催された第4回会合でCOPが承認)
PCBs
- 条約要求の下でのPCB類の標準化された在庫目録、販売と流通の禁止、そして廃絶は積極的に促進されるべきである。ストックホルム条約の発効の時に世界中でポリ塩化ビフェニル類(PCBs)を含む又はそれによって汚染されているとして見積もられた機器及び物質の合計質量の約80%はまだ、条約により規定されている期限2028年までに廃絶されなくてはならない(Note 8)。Non-legacy sources (例えば顔料や塗料)にもまた、目が向けらる必要がある。(訳注:有機顔料中に非意図的に副生するポリ塩化ビフェニルの有無の再確認について/経済産業省平成24年11月30日)
- COP は、電気機器以外の用途を含んで閉鎖系及び開放系でのPCB類の在庫目録と将来の評価のための標準化された手法の開発を要求すべきである。
- COP は、PCBs の分解のための非焼却手法に関するガイダンスの開発を要求し、PCBsの焼却は附属書C(非意図的生成物)の発生源であるので、その焼却とセメントキルンでの同時焼却を思いとどませるべきである。
- 事務局、PEN(PCBs Elimination Network)、及び地域センターは、公益NOGsとともに、PCB在庫と廃絶に関する情報のの拡大と意識向上キャンペーンを図るべきである。
PFOS の評価
- 容認できる用途の下での PFOS の継続使用は、在庫品及び物品のラベル表示を含むべきである。
- 商業的入手可能性と効果的でより安全な代替に言及してるUNEP/POPS/POPRC.8/16中のオープン・アプリケーションにおける PFOS の使用のための検討委員会(POPRC)による勧告を考慮して、泡消火剤としての PFOS の容認できる用途は終了すべきである。
- COP は、ハキリアリ(Atta spp. and Acromyrmex spp.)のための容認できる用途は環境への直接的な放出なので、廃止するための取組みを加速するよう促進すべきである。
- 締約国は、附属書D 基準に合致する又は合致する可能性があるとして検討委員会により特定された PFOSの2つの代替を推薦することを検討すべきである。:オクタメチルシクロテトラシロキサン (D4) 及びクロルピリホス。
国家実施計画(NIPs)
- 締約国の13%が最初の12種のPOPsについて国家実施計画に反映していない。これは可能な限り早急に完成させるべきである。
- 締約国の87%が2009年にリストされた9種のPOPsのために国家実施計画を更新していない。ほとんどの国の更新期限は2012年8月26日であった。これは可能な限り早急に完成させる必要がある。
- 加盟国は、効果的で、包括的で、規則的な公衆の参加プロセスを可能とし、第7条及び10条の公約を遵守するために、国家実施計画の設計と実施において、多様な利害関係者との協議を強化すべきである。
- 国家実施計画の更新に関するガイダンスは、PCBs の在庫と評価の開発に関する指示を含むよう修正されるべきである。
- 事務局は、国家実施計画を開発する又は更新する時に、POPs の評価とレビューのためのデータを収集することを含んで、締約国が直面するかもしれない技術的問題を特定すべきである。
報告
- 締約国は、第15条で求められるように国家報告を遵守する必要がある。わずか30%の締約国しか、2014年11月までに要求されていた報告書の提出をしていない。COP は、COP8 までに100%の報告を目標とすべきである。
- 資格ある締約国は、国家実施計画を準備するための財政支援及び技術的支援を地域センターから受けることができるべきである。モントリオール議定書、生物多様性条約(CBD)、及び気候変動枠組条約(UNFCCC)は、報告に財政的支援を提供しており、このことは高い報告書率に強く関連している(Note 9)。
- 締約国が、汚染物質排出、在庫、 PCBs 及び その他の POPs に関して開発した情報は編集され条約ウェブサイトで利用可能とされるべきである。
世界的監視計画
- 監視プログラムはまだ、アフリカ、アジア太平洋、 中東欧 (CEE)、ラテンアメリカ・カリブ海(GRULAC)、北極、及び南極において大きなデータギャップを残したままである。このことは、条約の効果が適切に測定できるよう、優先的に対応されるべきである。
- 新たにリストされた POPs は、今後、監視計画に組み込まれるべきである。
- 監視結果は、意識向上を図るために国内で及び条約ウェブサイトを通じて公的に発表されるべきである。
- 世界的監視は、POPsを生成した国、及び適用除外及び/又は容認できる用途を要求した国を含むべきである。
- 高汚染場所は長距離移動によってより広い汚染をもたらすので、気候温暖化に起因する潜在的な加速された放出及び移動をを含んで、監視計画は高汚染場所を含むべきである。
- 監視計画はまた、伝統的及び市場食物源、特に魚、海洋ほ乳類、精製脂肪、あぶら身、肝臓及びその他の臓器組織を含む北極圏先住民の伝統的食物中の POPs を含むよう更新されるべきである。
手続き 第3条2b(輸出条項)
- 国家報告書は、条約の意図に反して容認できる用途がまだ有効である付属書A及びBに掲げる化学物質の輸出及び輸入の増加を示す。
- 第3条2bに概要が示される手続きは継続されるべきである。
Notes
- $4.43 billion USD for the GEF-6 period of which $554 million USD is programmed under the chemicals and waste focal area (12.5%); $1.35 billion USD for climate (28%) and $1.2 billion for biodiversity (29%).
- Breakdown is as follows: POPs $375 million USD; Mercury $141 million USD; SAICM $13 million USD; and ODS $25 million USD; GEF6 Programming Directions; https://www.thegef.org/gef/replenishment_docs/1043/40
- UNEP/POPS/COP.6/INF/20
- http://www.basel.int/TheConvention/ImplementationComplianceCommittee/Mandate/tabid/
2296/Default.aspx
- UNEP/POPS/COP.7/16
- UNEP/POPS/COP.7/16
- UNEP/POPS/COP.7/27
- UNEP/POPS/COP.7/6
- UNEP/POPS/COP.6/INF/28
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