IPEN 2014年10月30日プレスリリース
国連の専門家:ペンタクロロフェノールは全世界で廃絶されるべき
デカBDE 難燃剤は世界で最悪の化学物質のひとつであることに同意


情報源:IPEN For Immediate Release 30 CTOBER 2014
UN Experts: Pentachlorophenol should be eliminated globally
Agrees that DecaBDE flame retardant is one of the world’s worst chemicals
http://ipen.org/sites/default/files/documents/IPEN%20POPRC%2030%20Oct%202014%20Final_0.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年11月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/141030_IPEN_Press_POPRC10.html


【ローマ、イタリア】 POPRC10(訳注1)において、国連専門家委員会は、電柱を含む木材防腐処理に使用される農薬であるペンタクロロフェノール(訳注2)の全世界での廃絶を勧告した。ストックホルム条約のための勧告の中で、同委員会はペンタクロロフェノールの残留性、生物蓄積性、長距離移動、及びその有毒影響に言及した。同委員会は、ペンタクロロフェノールより安全な非化学物質の代替が広く利用可能であることを見つけた。世界中の政府はこの勧告に基づき、2015年5月に(開催予定の COP 7で)決定するであろうが、一般的には専門家委員会の勧告を採択する。

 ”これはペンタクロロフェノールの終焉の始まりである”と、有毒物質に関するアラスカ地域行動のパム・ミラーは述べた。ペンタクロロフェノールは、北極の先住民を含んで世界中の人々の体内で見いだされるので、世界的な健康影響を及ぼしている。今こそ、各国政府と 民間分野は最終的にこの有毒化学物質を廃絶するために働く必要がある”。

 ストックホルム専門家員会はまた難燃剤として市場に出されて一般的に使用されている化学物質であるデカBDE は、その有害特性のために、世界的な行動の必要性を正当化している殊に同意した。

 ”デカBDE (訳注3 )は、消費者電子製品中に広く見い出されているので、我々全ての身近にある”と、IPENの科学技術顧問であるジョー・ディガンギ博士は述べた。”専門家委員会は、デカBDE は管理することができないという合図を示した。このことは、消費者、会社、及び政府を世界的禁止の方向にきっと動かすであろう”。

 同委員会は、様々な用途を持つ表面処理剤である PFOS (訳注4)の代替を精査した。PFOSは、石油、ガス及びフラッキング産業によりフラッキング流体(訳注5)で使用される時に環境に直接放出される。同委員会は、政府がある用途を終わらせるのを支援するためにPFOS代替物に関する新たな情報を発表するであろう。

 ”我々は、POPRC がPFOSで汚染されている消費者製品の完全なラベル表示を勧告したことを大いに喜んでいる”と、IPEN の政策顧問であるマリアン・ロイドスミス博士は述べた。”今、政府はこの有害な化学物質に対して次の段階の措置を取り、望まれない不必要な免除規定を削除する必要がある”。

 最後に、専門家グループは、その合成にDDTを使用する農薬であるジコホール(訳注6)は、完全な調査を正当化する重要な有害特性を含んでいると決定した。

 ”ジコホールは DDT のいとこであり、家族的類似性(family resemblance)がある”と、農薬行動ネットワークのメリエル・ワットは述べた。”それは農業とラン栽培で広く使用されており、母乳中で見いだされ、内分泌かく乱を引き起こす。この化学物質は、廃絶が遅きに失した”。

 IPEN は、国際的に及び自国で有害で有毒な物質を最小化し、可能ならば廃絶するために活動する116か国の700組織からなる国際NGOである。IPENは10年間、POPRC プロセスに積極的に関与している。


訳注1:POPRC10
 「残留性有機汚染物質検討委員会第10回会合」(Tenth meeting of the Persistent Organic Pollutants Review Committee (POPRC10)) 2014年10月27日(月)〜30日(木)にローマで開催。2015年5月に開催予定の ストックホルム条約第7回締約国会議(COP 7)に向けての検討会議。

訳注2:ペンタクロロフェノール
ペンタクロロフェノール/ウィキペディア
 日本では殺菌剤としてナトリウム塩が1955年9月22日に、除草剤としてナトリウム塩が1956年12月26日に農薬登録を受けた。その後殺菌剤としてはバリウム塩が1975年3月8日、ナトリウム塩が1989年11月10日、銅塩が1990年6月26日に失効。除草剤としてもヒドラジンが1969年6月20日、カルシウム塩が1975年11月20日、ナトリウム塩が1990年2月19日に失効している。 農業用途のほか木材の防腐やシロアリ駆除、水虫薬にも使用された。

訳注3:デカBDE
Chemical Watch 2013年7月12日 ノルウェーがデカBDE のストックホルム条約への追加を提案
 リスク・プロファイル草案は、2014年10月に POPRC によって検討される。しかし、もし同委員会が審査基準を満たしていないと決定すれば、関係グループに知らせ、この提案を棄却する。 ノルウェーの提案を考慮して、欧州化学物質庁(ECHA)は、デカBDEをREACHの認可リストに加えることにに関するパブリック協議(コメント)を取り下げたと発表した。

訳注4:PFOS
ペルフルオロオクタンスルホン酸/ウィキペディア
 完全フッ素化された直鎖アルキル基を有するスルホン酸。界面活性剤として表面張力の低下の目的で、めっき浴のミスト防止剤、塗料のレベリング剤、水性膜形成泡消火剤や中性強化液消火液、殺虫剤、半導体リソグラフィの反射防止剤、合成原料に用いられる。
 2000年に大手製造メーカーであった3M社は世界各地の野生生物中にPFOSが高濃度に検出されたことを明らかにし、製造を2002年に中止した。
 2009年、ストックホルム条約(POPs条約)の第4回締約国会議(COP4)で、PFOSを含む9種類の物質が同条約の附属書Bに追加されることが決定された。日本では2010年4月1日の化審法改正で第一種特定化学物質に指定され、製造と輸入を許可制にし、事実上禁止した。

訳注5:フラッキング流体
Newsweek 2014年8月13日 フラッキング化学物質についてわからないことがまだ数多くある
 フラッキング流体化学物質の有害性に関する情報は手に入れることが非常に難しいという理由のひとつは、ある場合には、使用されている流体と化学物質の正確な成分は企業秘密として保護されており、したがってそれらを製造している会社により報告されていないということである。
 注入される前及び注入後に地表戻ることまで含んで、掘削中における使用の全てのシナリオで、フラッキング流体に関するもっと多くの研究を要請することである。研究者らは、様々な複雑な環境の脈絡の中で化学物質の運命が分析されるまで、環境的ハザードを理解することはできない。
 毒性、生物分解性、物理的定数、及び使用濃度に関するデータのギャップは、正確で情報に基づく環境と健康評価ができるよう対応されるべきである。

訳注6:ジコホール
ハザード概要シート(案)(ジコホール/ケルセン(平成22 年度食品安全確保総合調査)
  昭和31 年(1956 年)12 月26 日農薬登録、平成16 年(2004 年)3 月19 日農薬登録 失効、殺虫剤、普通物. 一般名:ケルセン。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る