IPEN 2012年10月19日 プレスリリース
国連”科学”委員会 政治的になる
発がん性物質に措置をとらない


情報源:IPEN For Immediate Release 19 CTOBER 2012
UN 'Scientific' Committee Turns Political
Fails to Take Action on Cancer Causing Chemicals
http://www.endseurope.com/docs/121019c.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年10月20日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/121019_IPEN_Press_POPCR8.html


【ジュネーブ、スイス】世界で禁止すべき有害で残留性のある化学物質を評価し勧告することに責任ある国連の’科学委員会’は、発がん性があり、また水生生物にも有毒な、ある産業用化学物質類に対してどのような措置をもとることをしなかった。皮肉なことに同委員会(脚注1)は、短鎖塩素化パラフィン(SCCPs)(訳注1)は、毒性、残留性、生物蓄積性、及び移動性があり、したがって、POPsに関するストックホルム条約の下に世界的に禁止すべき候補物質であるということには同意した。しかし、全ての科学的基準に合致するにもかかわらず、同委員会はSCCPsに対して何も行動を起こさないことを決定した。同委員会はこれらの物質に対する行動を過去6年間、遅らせてきた。

脚注1:残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)として知られ、ストックホルム条約に追加すべき物質を評価する専門家グループからなる。

 ”SCCPs は、ストックホルム条約により義務付けられている潜在的に有害な化学物質に注力するということをせず、広く使用されているという理由で同委員会は再び措置を遅らせることにしたらしい”と、IPENのマリアン・ロイドスミスは述べた。”そのことは科学的健全性への懸念及び、商業的配慮が人の健康と環境を保護するというスットクホルム条約の目標より優先するのかという懸念、を提起する”。

 10月14日〜19日まで開催された同科学委員会(訳注:残留性有機汚染物質検討委員会第8回会合(POPRC8))で議長は、SCCPsへの行動に対する賛成者と反対者にそれぞれの立場を示すレポートを作成し発表するよう要請した。中国と日本はさらなる行動を止めるべきとする理由を概説する短いレポートを提出した。カナダ、フランス、及びオランダは、委員会の評価作業という次のステップに進めるべきとする理由を概説した包括的なレポートを提出した。これらに対応して、同委員会メンバーはSCCPsに関して何かをするということに同意しなかった。

 ”何人かの委員会メンバーは、SCCPsには科学的不確実性があると主張した”として、ロイド・スミス博士は次のように説明した。”しかし、そのことは何もしないことの理由にはならない。ストックホルム条約は、’完全な科学的確実性がないことをもって、事態進行の提案をさまたげてはならない’と明確に述べている”。

 SCCPsは北極の生態系と人々の健康についての懸念をもたらす。北極の魚、鯨、アザラシ、セイウチの体内の測定されたSCCPs レベルは著しいものがあり、この化学物質類は北極の先住民女性の母乳中にも見出されている。

 ”北極の先住民たちは、食物による曝露を通じて高いレベルのPOPsに世界中で最も曝露している人々であり、SCCPsはさらにそれらに加わる”とアラスカ・コミュニティー有害物質行動のパム・ミラーは述べた。”委員会は、北極の生態系と先住民族を保護するという条約の約束を敬うべきである”。

 SCCPsは、金属加工における潤滑油、塗料、接着剤と密閉剤、プラスチックとゴム、及び難燃剤として使用される有毒な産業用化学物質類である。これらの用途での労働者の曝露に現実の懸念があり、いくつかの国々では既にそれらを禁止している。SCCPs はまた、かつてない拡大を続けるガス産業により、フラッキング掘削流体の中で使用されて環境中に直接注入されている。2007年、中国では塩素化パラフィンの製造が急増したが、それはガス採取において従来とは異なる水圧破砕法(hydraulic fracturing)(訳注2)の有害プロセスが世界中で採用され始めたときである。

 IPENは、各国政府に対して、科学委員会が、北極の生態系と先住民を完全に敬いつつ、予防に基づくメカニズムであるストックホルム条約の枠組みの義務の範囲でSCCPsとその運用に措置をとることを求める要求に加わるよう促した。

以上

 IPEN は、世界中で人の健康と環境を守る安全な化学物質政策と慣行を確立し実施するために活動する主導的な世界組織である。IPEN の世界的なネットワークは、116カ国の700以上の公益組織からなる。世界の化学物質政策の場でそして発展途上国で活動している。
http://www.ipen.org/index.html


訳注1:SCCPs
訳注2:水圧破砕法
化学物質、砂、水の混合物を、高圧で地下岩層に注入してガスを採掘する方法
訳注:関連情報
EU NGOs Joint Press Release on 19 October 2012 / Delegates Decision Prolongs Toxic Pollution



化学物質問題市民研究会
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