IPEN 2025年4月
2025年 BRS 条約締約国会議における主要課題 情報源:IPEN April 2025 IPEN Key Issues for The 2025 Meeting of The Conferences of The Parties to The BRS Conventions https://ipen.org/sites/default/files/documents/brs_issues_links_0.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2025年5月12日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/NGOs/250400_IPEN_Key_Issues_for_The_ 2025_Meeting_of_The_Conferences_of_The_Parties_to_The_BRS_Conventions.html ■ストックホルム条約締約国会議(COP)第12回会合 条約附属書 A への化学物質の記載 POPs 検討委員会(Persistent Organic Pollutants Review Committee / POPRC)の勧告に基づき、3つの化学物質類/化学物質群を附属書 A に掲載し、世界的に廃絶する必要がある。
実行可能な代替物質が存在し、使用されていることを考慮し、これらの新たな POPs については、どのような例外も認めるべきではない。 在庫品、製品、使用中の物品、及び廃棄物中の POPs の特定手段 POPRC の報告書は、締約国が在庫品、製品、使用中の物品、廃棄物中の POPs を日常的に特定することができず、追跡可能性が非常に限られていることを明確に示している。これは条約遵守の障害となり、POPs を含む物品や廃棄物が開発途上国に流入するケースが多く見られる。この証拠は、別の会議文書「臭素化ジフェニルエーテルの評価とレビュー」にも示されている。 したがって、締約国は、条約に基づく将来のリストへの掲載を含め、POPs の追跡可能性を確保するための措置を講じ、国際的な協力と調和を強化する方法を検討する必要がある。例えば、ストックホルム条約締約国会議(COP) は、POPRC に対し、免除の評価や新設の遵守委員会への通知など、このテーマに関する更なる作業を行うことを義務付ける決定を採択すべきである。詳細については、IPEN の報告書をご覧いただきたい。 UV-328 の記載を改正し、新たな免除を追加する提案 COP による過去の決定を再検討し、新たな免除を追加するという提案は、ストックホルム条約の歴史において前例のないことである。これは、条約の完全性、そして 2023 年の締約国会議で決定された UV-328 の附属書 A への記載を著しく損なう可能性があるため、再検討すべきではない。 (訳注:UV-328の用途:主な用途は自動車産業で、例えば、「紫外線による劣化または変色から素材を保護するための自動車塗料、コーティング剤、封止剤、接着剤、プラスチックおよびゴム」並びに「冷却液/作動液およびモーターオイル中の潤滑油などの様々な自動車用流体」に使用されている。|EnviX) (訳注:「UV-328」、「メトキシクロル」及び「デクロランプラス」の第一種特定化学物質への指定等を行う法律施行令の一部を改正する政令の閣議決定について|環境省報道発表資料 2024年12月13日) BAT BEP POPs汚染サイトガイダンス POPs汚染サイトの管理と持続可能な修復に関する BAT BEP ガイダンスは、2016 年から策定され、このたび最終版が完成し、COP で提示される予定である。このガイダンスは、汚染サイト管理の枠組みをまだ構築していない締約国向けに設計されており、サイト浄化のための技術、法律、政策、財務に関するガイダンスが含まれている。本ガイダンスは、非燃焼技術を用いた持続可能な修復を重視し、非意図的 POPs(UPOPs)のさらなる発生を回避することに重点を置いている。当事者には、このガイダンスを歓迎し、採用するよう奨励されるべきである。 (訳注:残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約において,附属書 C の非意図的生成物を最小化する技術や管理体制を議論する際に,「利用可能な最良の技術 (BAT) 」 および 「環境のための最良の慣行 (BEP) 」 という概念を用いる。用語の定義,非意図的生成物の排出源,排出制限値,生成因子,排ガス制御装置,および BAT/BEP の適用等に関する 「BAT ガイドラインおよび BEP 暫定ガイダンス」 に基づき,各締約国の技術的・経済的・地域的な特性を考慮した上で,非意図的生成物の最小化に向けた取り組みが進められている。日本では,法制度の整備,制御技術の導入,また有機顔料中の副生 PCB への対応等がなされてきた。近年では,非意図的生成物の対象は附属書 A (廃絶) や附属書 B (制限) の POPs にまで拡張し,BAT/BEP の適用が議論されている。廃電気・電子製品の野焼き等の新たな排出源や,附属書 A の新規 POPs の熱分解に伴う非意図的生成といった諸課題への広がりもみせている。|POPs の非意図的生成と制御/藤森崇、川本克也 2019年30巻3号 p. 201-211) ■バーゼル条約第17回会合 COР POP廃棄物に関する技術ガイドライン 条約において POPs 廃棄物と定義される廃棄物は、含有 POPs が破壊されるか、または不可逆的に変化するように処分されなければならない。低 POP 含有レベル(Low POP content level)は当該廃棄物が POPs 廃棄物であるかどうかを判断する閾値である。このレベルを高くすると、高濃度の POPs を含む廃棄物であっても、非有害物質として扱うことができるようになってしまう。したがって、低 POPs 含有量レベル(すなわち閾値)は可能な限り低く抑える必要がある。 IPEN は、以下の基準値を採用することを提案する。
(訳注:メカノケミカル法:ボールミルで物質を粉砕する際に化合物の結合状態が化学的に活性化されることを利用して、有機塩素系化合物を常温・常圧で無害化する技術|表 1 POPs 廃農薬等の分解法(42頁)POPs 廃棄物の適正処理/高岡昌輝、藤森 崇) その他の POP 技術ガイドライン 他に3つの POP 技術ガイドライン(TGs)の改訂版も採択が推奨されている。
その他の技術ガイドライン 3つの追加技術ガイドライン(TGs)が検討されるであろう。
プラスチック廃棄物に関する更なる検討 この項目における作業は、プラスチック廃棄物に関する追加作業の提案に焦点を当てるであろう。一つの提案として、プラスチック廃棄物に関する改正案の有効性評価を行うための SIWG を設置することが挙げられる。これには、プラスチック廃棄物に関する技術ガイドラインの有効性評価も含まれる可能性がある。この提案は支持されるべきである。また、これは、廃棄物固形燃料(RDF)が越境移動の目的において、製品や非廃棄物ではなく、プラスチック廃棄物(Y48またはA3210)として分類されることを確実にする機会でもある。 (訳注:バーゼル条約第14回締約国会議(COP14)において、プラスチックの廃棄物を新たに条約の規制対象に追加する条約附属書改正が決議された。|バーゼル条約附属書改正と改正を踏まえた国内運用について(令和2年)/環境省) さらに、一部の締約国は、ケミカルリサイクルに関する情報を提出し、検討することを提案している(現在、プラスチック廃棄物ガイドラインのセクション G および付録 A に括弧で囲まれている)。しかし、他の締約国が指摘しているように、プラスチック廃棄物に関する技術ガイドラインの公開は時期尚早であり、支持されるべきではない。 ■ロッテルダム条約締約国会議(COP)第12回会合 ロッテルダム条約は、各国が自国の国境を越えて流入する化学物質を、主権的権利と同様に管理する権限を与える重要な手段である。これは、条約附属書IIIに化学物質を記載することで実現される。附属書IIIでは、これらの化学物質類の輸出前に事前の情報に基づく同意(PIC)を取得することが義務付けられている。ただし、これは貿易禁止には当たらないため、締約国はこれらの化学物質を輸入することができる。 残念ながら、一部の締約国は、条約のすべての基準を満たしているにもかかわらず、長年にわたり、いくつかの化学物質類の記載を阻止してきた。これらの化学物質類の輸出規制の欠如は、人の健康と環境への害をもたらしており、COP は化学物質検討委員会の勧告に従い、以下の 10種類の化学物質を附属書IIIに掲載すべきである。アセトクロール、カルボスルファン、クロルピリホス、クリソタイルアスベスト、フェンチオン、イプロジオン、二塩化パラコート、水銀、臭化メチル、およびパラコートを含む液剤。 |