Environmental Investigation Agency (EIA) 2025年7月1日
(環境調査エージェンシー) マレーシア 他国からの「廃棄物植民地主義」を阻止するため プラスチック廃棄物規制を強化 情報源: Environmental Investigation Agency, 01 July, 2025 Malaysia strengthens plastic waste controls to close the door on 'waste colonialism' from other countries https://eia-international.org/news/malaysia-strengthens-plastic-waste- controls-to-close-the-door-on-waste-colonialism-from-other-countries/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2025年7月17日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/news/250701_Malaysia_strengthens_plastic_ waste_controls_to_close_the_door_on_waste_colonialism_from_other_countries.html マレーシアへのプラスチック廃棄物の輸入に対する厳格な規制が本日(7月1日)から施行され、他国からの「廃棄物植民地主義」輸出に事実上歯止めがかかる。 地域社会と環境をプラスチック汚染から守るための画期的な措置であるこの新規則は、マレーシア政府の関税(輸入禁止)(改正)命令 2025(Customs (Prohibition of Imports) (Amendment) Order 2025)によって導入され、プラスチック廃棄物の輸入条件を大幅に厳格化し、米国を含むバーゼル条約非締約国からの輸送を除外している。 マレーシア王立関税局、政府運営の技術標準化組織 SIRIM Berhad が施行する改正法では、バーゼル条約締約国からの輸送のみが事前承認を申請できることが定められている。 。 HS コード 3915 に基づくすべてのプラスチック廃棄物の輸入は、より厳格な汚染基準を満たし、船積み前検査を受ける必要がある。 かつて中国は 2018年に国家ナショナルソード政策(National Sword policy)を導入し、特にプラスチックをはじめとする特定の固形廃棄物の輸入を大幅に制限する以前は、世界のプラスチック廃棄物の半分以上を輸入していた。 (訳注:廃プラスチック中国輸入禁止:2017年7月18日、中国は世界貿易機関(WTO)に対して、「2017年12月末までに廃プラスチックなどの固形廃棄物について、一部輸入を禁止する」と通告した。(中国のナショナルソード 2017 政策)・・・日揮通商株式会社) 高所得国は、低価値の汚染プラスチックを海外に輸出することに依存するようになったが、中国の輸入禁止措置はこれらの流れに大きな影響を及ぼし、廃棄物輸出への世界的な過度の依存を露呈させ、根深い制度的不均衡を浮き彫りにした。 しかし、輸出業者や廃棄物取引業者らは、責任を負って国内の廃棄物インフラに投資するのではなく、流入を管理する能力が低い地域内の他の国に急速に事業を移転した。例えば、2020年のマレーシアでは、生産量と輸入量、そして責任ある管理量との間に 270万トンの差があった。これは、EIA の報告書”ゴミの真実(The Truth Behind Trash report)”に詳述されている。 こうした状況に対し、マレーシアをはじめとする国々は、規制を強化し、法執行を強化し、他国の廃棄物の投棄場所にならないという明確なメッセージを送るなど、管理を強化するための称賛に値する措置を講じてきた。これらの行動により、マレーシアは、より公正で説明責任のある世界的な廃棄物管理システムの構築に向けた取り組みにおいて、アジア太平洋地域におけるリーダーの地位を確立している。 しかし、根本的な責任は、これらのプラスチック廃棄物を生産・輸出している高所得国にある。 シニア海洋キャンペナーのローレン・ウィアーは次のように述べている。”2018年以降、廃棄物取引業者は、環境規制が緩く、法執行能力が低い国に拠点を構え、主にグローバル・ノースからグローバル・サウスへとプラスチック廃棄物の輸送ルートを変更してきた。” ”だからこそ、マレーシアや大量のプラスチック廃棄物を受け入れている国々が、汚染された、あるいは有害なプラスチック廃棄物の流入を遮断するだけでなく、それに伴う健康リスクや環境リスクから地域社会を守るために、国内で強力な対策を講じていることは称賛に値する。” 中国の輸入禁止以降、マレーシアは英国のプラスチック廃棄物の主要な輸出先として浮上している。バーゼル・アクション・ネットワークのデータによると、入手可能な最新の月である今年 2月だけでも、英国はマレーシアに 4,200トンのプラスチック廃棄物を輸出した。 新たな規制の導入は、違法または不適切な管理によるプラスチック廃棄物処理に関連する健康および環境への害に対する国民の懸念の高まりと、世界的な認識の高まりを示している。 ウィアーは、”輸入されたプラスチック廃棄物は、特に分別が不十分であったり汚染されていたりすると、焼却、投棄、または安全でない方法で処理されるなど、不適切に扱われる可能性が高くなり、地域社会に深刻な汚染リスクをもたらす”と付け加えた。 ”同時に、これらの輸送は、地域のシステムを混乱させ、地域市場を圧迫することで、国内のリサイクル活動を阻害する可能性がある。” 新規則はバーゼル条約非加盟国を明確に除外しており、主要な廃棄物輸出国に明確なメッセージを送っている。 EIA の法務・政策専門家であるエイミー・ヤングマンは次のように述べている 。”欧州と米国の国々は、一人当たりのプラスチック排出量が最も多く、大量のプラスチック廃棄物を輸出している。これは、自国のインフラに投資するよりも、廃棄物を他国に押し付ける方が経済的に有利だと考えているためである。 こうした慣行は、グローバル・ノースにおける大量消費の環境的・社会的コストがグローバル・サウスに転嫁される、一種の廃棄物植民地主義を反映している。” EU は経済協力開発機構(OECD)非加盟国へのプラスチック廃棄物の輸出を禁止する計画を発表したが、米国、英国、日本などの国々は、規制の抜け穴を利用して廃棄物を輸出し続けている。 ”マレーシアがプラスチック廃棄物の輸入を規制し、バーゼル条約に基づく国際協力と多国間ルールの必要性を認識するなど、輸送条件の厳格化に向けた力強い努力をしていることを称賛する”とヤングマンは付け加えた。 ”これらの規制をバーゼル締約国だけに適用することは強力かつ正当な措置であり、そのことは、米国などの非締約国が国際的な説明責任を回避しつつ、マレーシアのリサイクルインフラの恩恵を受けるということを許さない正当な行為である。多国間主義は、選択的参加ではなく、相互責任に基づくものでなければならない。” マレーシアの行動は、来月ジュネーブで再開される予定の世界プラスチック条約のための交渉において、マレーシアを潜在的なリーダーとして位置づけるものである。プラスチック廃棄物の輸入を制限するための明確で強制力のある措置を講じることで、マレーシアは条約が実現すべき野心と説明責任の模範を示している。 ”マレーシアは、有害なプラスチック廃棄物の輸入を阻止し、最も影響を受ける地域社会のために立ち上がるための断固たる措置を講じることで、世界プラスチック条約交渉の最終ラウンドにおいて、我々が必要とするリーダーシップを示している”とヤングマンは述べた。 ”しかし、プラスチック汚染は国境から始まるのではない。マレーシアのような政府は、プラスチック生産量を制限し、製品設計を改善し、持続可能な廃棄物管理を拡大するための上流規制を推進する必要がある。廃棄物植民地主義を終わらせることは、まず蛇口を止めることから始まる。” 同時に、高所得国はプラスチック廃棄物の輸出を停止し、自国が排出するプラスチック廃棄物に対して全責任を負わなければならない。特に英国は、国内法と拘束力のある国際義務の両方を通じて、プラスチック廃棄物の輸出を終わらせることにコミットしなければならない。 EIA は長年にわたり、このような行動を求めてきた。例えば、当時の環境大臣テレーズ・コフィーに宛てた書簡の中で、英国政府に対し、すべてのプラスチック廃棄物の輸出を禁止するよう強く求めており、この要求はこれまで以上に緊急性を帯びている。 |