はじめに
G8環境大臣会合2008神戸3R行動計画(行動計画)は、各国の国内3R政策及びプログラムの推進の重要性を述べ、国際コミュニティに世界的な廃棄物問題に取り組むために協力することを求めているという点において意義がある。また、3Rと気候変動の関係を指摘していることも価値がある。
しかし、この行動計画は環境イニシティブではなく、再製造製品の貿易を自由化することを目指した地球規模の自由貿易メカニズムに基づく経済イニシアティブであることは明らかである。行動計画は3R関連行動を通じてまた適切な国際資源循環を通じて資源生産性の改善や途上国の雇用創出を強調している。
行動計画は、世界の廃棄物の現状、すなわち、途上国の環境と人の健康はリサイクルという名目で先進国から途上国に輸出される有害廃棄物によってますます、そして不釣合いに影響を受けているということを完全に無視している。さらに、行動計画は、ある種の製品や原料、廃棄物の毒性によって引き起こされている問題を解決するために必要な重要な措置に対する適切な配慮をはなはだしく欠いている。
懸念
行動計画に関する主要な懸念のいくつかを下記に示す。
- G8及び他の先進国は、全ての人々が安全で健康な環境で生活し働くための権利を確実にするために、有害廃棄物が途上国に輸出されることを防ぐために、先進国の資源を投資するという明確な約束をすることを怠り続けている。特に、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどいくつかのG8メンバー諸国は、有害廃棄物を処分及びリサイクルのために先進国から途上国へ輸出すること全面的に禁止するバーゼル禁止修正条項を批准していない。
- 原料、廃棄物、再使用可能な製品、再生利用可能な資源、及び再製造製品というようなことばが有害廃棄物と非有害物質との明確な区別をすることなく用いられており、それによって行動計画は、有害廃棄物を含んで、再製造製品の製造、市場開拓、及び貿易を推進している。これらの明確な区別をしなければ、バーゼル条約の義務、決議、原則との矛盾が起きる可能性がある。
- 行動計画は、バーゼル条約によって求められているように、有害廃棄物の発生を源から削減し、有害廃棄物管理の国内処理を達成するという先進国の責任を認め、それに目を向けることをしていない。
- 第T章 目標1で、”廃棄物の発生抑制の優先順位を高める”ことを掲げているにもかかわらず、最初のR、削減を実施するための具体的な目標値と方法が提案されていない。行動計画はG8諸国が廃棄物削減に演じる大きな役割を持っているという事実を忘れている。例えば、行動計画は、特に途上国において、有害物質を使用する製造プロセスや大量消費のライフスタイルを変えるという待ち望まれる変化をもたらすための計画をG8諸国がどのように立てているのかの例を示していない。
- エネルギー回収や廃棄物の熱処理又は焼却のような潜在的に環境を汚染する技術が行動計画の中で推進されている。廃棄物焼却が温室効果ガスを排出することを考えれば、行動計画は、地球規模の廃棄物危機に対応するために求められる、源からの廃棄物の削減や焼却の代替など、もっと重要な取り組みに触れていない。
- ”地球規模のゼロ・ウェイスト社会(Global Zero Waste Society)”ということばの下に、それぞれの国の社会的条件を考慮することなしにリサイクル産業を推進することは、持続可能な開発の目的を技術への疑いに変えることになる。持続可能な開発は、社会的、経済的及び環境的権利の間で微妙なバランスの上に立っている。他の権利の中からひとつの権利を軽視することは、真の持続可能な開発のあるべき姿を歪めることになる。
G8諸国への勧告
神戸3R行動計画は、途上国における不適切な廃棄物管理に関連して悪化する環境汚染と健康リスクは、先進国から途上国に輸出される増大する大量の有害及びその他の廃棄物が原因であることを認めるよう強く促す。
これに関し、我々、市民社会のメンバーは次のことを要求する:
- バーゼル禁止修正条項を批准していないG8メンバー国は同禁止修正条項を速やかに批准すること。G8諸国は、経済的動機に基づく有害廃棄物の投棄を禁止することによって、環境正義原則を制度化する大きな責任がある。
- 例えば、有害廃棄物生成について10年間、増加を止めるためにG8メンバー諸国にかぶせる有害廃棄物生成キャップを確立する等によって、廃棄物削減のための真の取り組みを開始すること。
- 製造者、消費者、及びG8廃棄物輸出国への責任を認め、それを課すこと。第4のR−責任が必要である。生産者及び製造者は、自分達の製品及び製造プロセスから有害物質を廃絶すること。消費者は、自分達の生態系への足跡(cological footprint)に目をやり、その消費パターンを変えること。G8諸国政府は、国際法の義務を果すことによってこれらの問題に取り組むに当たり、強いリーダシップの役割を演じ、またそれら国際法をの基礎を崩すような試みを止めること。
- バーゼル条約とその決議を支持すること。有害廃棄物貿易を推進するための貿易協定の狡猾な利用は、バーゼル条約を蝕むことでバーゼル条約を脇に押しやり、廃棄物を商品、原料、製品と再定義し、有害廃棄物貿易の禁止を制度化することを禁じ、有害廃棄物や有害技術をもたらす投資を含んで、全ての形の投資を保護することを諸国に義務づけることに役立たせるだけである。
以上
G8環境大臣会合2008 神戸3R行動計画
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