バーゼル条約 COP12 2015年5月9日
BAN の発言
電気・電子廃棄物ガイドラインと修理の抜け穴

情報源:Basel Convention COP12 BAN Intervention
BAN Intervention on the e-Waste Guideline and Repair Loophole, May 9, 2015

http://www.ban.org/wp-content/uploads/2015/05/
ban_intervention_on_the_e.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年5月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP12/COP12_Intervention_e-Waste_Guideline.html


 議長及び卓越した代表者の皆さん、ありがとうございます。

 電気・電子廃棄物の国境を越える移動のための技術ガイドラインに見られる基本的な概念は適切で正しいものであり、もし物が壊れている、機能しない、又はテストされていないなら、それらは廃棄物であるとみなされるということです。

 私たちが直面している問題、そして現在吹き荒れている論争は 第26条(b)項(26b)(訳注1)に関することであり、それは基本的な概念をひっくり返すことになることがらです。この 26b 案(訳注:括弧[]内)は、壊れた機能しない機器の非常に広範な一般的カテゴリーを、それらの廃棄物は非廃棄物として修理が予定されていると宣言することにより、バーゼル条約の対象から免除しようとするものです。

 この新たな考えは明らかに非常に危険であり、実際に多くの締約国の政策、規範及び規則に逆行するものです。

 例えば EU 法は、多くの指令と規則の中で機能しない機器は実際に廃棄物であり、それが有害な時には発展途上国に輸出されるべきではないと断言しています。そのEUが、彼ら自身の法律や彼らが批准したバーゼル禁止令を損ねるようなことを喜んですることができるでしょうか?

 同様にアフリカでも、この新たな免除は、以下に引用するバマコ条約(訳注2)第1回締約国会議における決議のひとつ 1/15 (訳注2:DECISION 1/15 )に完全に逆行するものです。

(引用) ”まだそのようにしていない締約国及びその他のアフリカ諸国に対し、全ての機能しない又はテストされていない中古電子機器を有害廃棄物であると法的にみなし、それらのアフリカ大陸への輸入を防止するするよう求める”。(引用終り)アフリカ諸国は自身の決議を損なうようなことを求められる筋合いはありません。

 そして、バーゼル禁止令が発効していれば当然それによって禁止されるであろう正に同じ有害物質の輸出を許すことになれば、現在考えられているような内容の 26b は、81の締約国が批准した合意であるバーゼル禁止令の目標と目的をくつがえすことになります。そしてそのようにすることは、条約法に関するウィーン条約の第18条に直接的に違反することになります(訳注3)。私たちは、81の加盟国にバーゼル禁止令の目標と目的をくつがえし、それによって彼らのウィーン条約の義務に違反するよう依頼することができるでしょうか?

   修理という言葉はよいことのように響き、危害を輸出するための言い訳として使用されなければ、それはよいことです。バーゼル条約がその信用にかけて同条約の規則を逃れるための理由として使うことに決して同意することのなかった”リサイクル”と同様に、再使用(reuse)もまた乱用のための言い訳になり得るでしょう。

 第一に、修理のための輸出はほとんどいつも、交換が必要となるであろう有害廃棄物部品の輸出を伴います。すなわち、鉛を含んだ古いマザーボード、又は水銀を含有する薄型表示装置、又は POPs をしみこませたプラスチック筐体、これらは全て 26b の抜け穴から輸出されるでしょう。

 第二に、私たちは、事実上全てのものが修理可能であるとみなすことができるということを認めなくてはなりません。したがってそれは、小さな免除であることを意味したものが、免除というよりむしろ規則になるということです。

 最後に、廃棄物ではなく修理可能であると主張するやいなや、拘束力のあるバーゼル条約やバーゼル禁止令の保障措置と義務は、人々と環境の安全を守れなくなります。そこにはもはや、環境上適正な管理 (ESM) のための義務も、通知の義務もありません。諸国はもはや、何がその国境を越えて入ってくるのかを知ることができません。拘束力のある行使は不可能となるでしょう。

 どのようなことも、再使用も含めて、良いことにも悪いことにも利用され得るでしょう。もし、修理と再使用が価値のある目標なら、それをバーゼル条約の枠組みと規則の中で正しく行うことに、なぜ価値がないのでしょうか?

 世界は、論理的で環境保護的な電気・電子廃棄物のガイドラインを求めています。そして、残念ながら制御不可能となっている 26b を除外すれば、私たちのガイドラインは素晴らしい出来栄えです。もし 26b にちりばめられている免除が劇的に狭められないのであれば、そしてバーゼル禁止令が重んじられないなら、今回私たちは、 26b に単純にノーと言わざるをえません。基本的な規則に対する小さな免除のつもりであったことをガイドライン全体の人質にすることはよくないことでしょう。

 卓越した代表者の皆さん、世界はすでに、中古品であるとして船に満載されて発展途上国に届く壊れたガラクタを十分に見ています。私たちは、廃棄物犯罪者と悪徳商人によるさらなる搾取に防潮門を開くことになる新たな条項 26b を必要としません。電気・電子廃棄物をバーゼル条約から排除しても電気・電子廃棄物の機器は解決しません。

 私たちは、機能しない機器は廃棄物であるという基本的な命題と矛盾しないガイドラインをもってこの会議の結論とすることができることを確信します。このことが私たちの目標であるべきです。この長いプロセスを、今後長い間私たちが間違いなく後悔することになるであろう大きな抜け穴をもって終わらせないようにしましょう。

   ありがとうございました。


訳注1:電気・電子廃棄物に関する記述ガイドライン関連情報
  • Paragraph 26b
    Development of Technical Guidelines on e-waste / Basel Convention
    26.Used equipment should normally not be considered waste:

    (b) [When an exporter of used equipment and their components exports such equipment for testing, repair and refurbishment and all of the following conditions are met:

    (i) Equipment and their components are exported only to Parties that have notified the Secretariat of the Basel Convention via Article 13(2) that they do not consider used equipment subject to the conditions included in paragraph 26b to be waste. Further restrictions made on a national basis can be so noted (e.g. import bans for certain types of used equipment). In the same transmission these Parties shall indicate which facilities are permitted to receive and process the used equipment under the conditions in paragraph 26b. Such information will be publicly available on the SBC website and be kept up to date;

    (ii) Exported equipment and their components are compliant with legislation on Restrictions of the Use of Certain Hazardous Substances (RoHS) compliant and do not contain cathode ray tubes (CRTs);

    (iii) Used equipment and their components and any residual waste, materials, and products shall continue to be owned or controlled by the exporter (with or without third parties involved in implementation) throughout the export, transit, import, testing, repair, and refurbishment processes, until they are either tested, fully functional equipment or components and are made available for direct reuse, or as resulting scrap/waste disposed of according to vi below;

    (iv) Each shipment is sent under a valid contract between the exporter and the importing facility, requiring the importing facility to complete all applicable requirements in paragraph 26b. The exporter shall perform regular on-going due diligence to ensure importing facility(s) and any other third parties involved are consistently meeting the requirements of paragraph 26b;

    (v) Each shipment is accompanied by a written and signed declaration by the exporter which is readily available in full to all relevant government authorities. The declaration by the exporter shall declare that all of the criteria of paragraph 26 b are met. A standard form (Appendix II) can be used for such a declaration;

    (vi) All residual waste generated from the testing/repair/refurbishment operation which is hazardous according to the Basel Convention definitions (Article 1, 1(a) and 1(b)) or its hazardous characteristics are unknown, shall be disposed of [in an environmentally sound manner (ESM) in accordance with the Basel Convention][in an Annex VII country][ in an Annex VII country unless accompanied by a conclusive proof that the residual hazardous waste can be treated at a facility in the importing country is ESM]. Any transboundary movements necessary shall be accomplished in accordance with the Basel Convention; and

    (vii) [Each piece of equipment and their components is individually packaged to prevent hazards and loss of value, including protection against abrasion, static charges, ignition, loss of fluids or toxic contaminants, or breakage.] [Appropriate protection against damage during transportation, loading and unloading, in particular through sufficient packaging and stacking of the load] ]

  • 使用済み電気・電子機器の輸出時における中古品判断基準(環境省による現時点の解説)

訳注2:バマコ条約関連情報

訳注3:ウィーン条約関連情報
  • 条約法に関するウィーン条約(ウィキペディア)

  • 条約法に関するウィーン条約(日本語訳版)

    (条約の効力発生前に条約の趣旨及び目的を失わせてはならない義務)
    第18条 いずれの国も、次の場合には、それぞれに定める期間、条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わないようにする義務がある。
    (a)批准、受諾若しくは承認を条件として条約に署名し又は条約を構成する文書を交換した場合には、その署名又は交換の時から条約の当事国とならない意図を明らかにする時までの間 (b)条約に拘束されることについての同意を表明した場合には、その表明の時から条約が効力を生ずる時までの間。ただし、効力発生が不当に遅延する場合は、この限りでない。

  • CHAPTER XXIII LAW OF TREATIES STATUS AS AT : 17-05-2015 06:45:52 EDT


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