ラーメンライダー
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文/林英男
はやし・ひでお
下北沢「裏窓」主人。おかげさまでのイベントは無事終了。『ラーメンライダーが行く!』も売れましたよ。協力してくれた方、来店の皆様には感謝、感謝。 
裏原宿ラーメンイベント顛末記

「いつまでも♪ンタンタンタ♪湯気のむこうに何かを見つけて〜え」……軽快なテンポのラーメンライダーのテーマソングが高らかに流れるここは裏原宿のギャラリー「Grey」、私の著書『ラーメンライダーが行く!』の販促イベント会場である。12月の通りをCGかと思うほどの若者達が行き交っている。イメージではたくさんの献花、優雅なBGMの中、著書を平積みにし、美人担当者をしたがえ、愛想笑いを振りまきつつ読者にサインや握手、談笑などするはずが、サインペンのかわりに、うわーっ私の右手にはスープ用のレードル、すぐさま持ち替えて麺用のゆで籠、チャッチャッと湯切り、目の前にはスチロール製のラーメン丼、間を置かずにネギ、焼豚、メンマ、うずら卵、のりをトッピング、あ、隠し味の揚オニオンも入れてと。会場はおいしそうにラーメンをすする人でいっぱいだよー。「ラーメン2枚追加でーす」「いらっしゃいませー」とお手伝いの女性陣にあおられてる始末。なんで、こんなことになったんだー。
「はい、麺あがるよー」。うむむ手を休める訳にはいかないが、ナルトのような記憶の渦をたどると編集者石黒氏の顔が浮かんできた。そうだガスも水道も洗い場もない正真正銘のギャラリーでラーメンとサイン本を売りませんか?と持ちかけられたのだ。「2日で300杯はいけますよ」「とんでもない」と固辞。「いやー本も売れますよ」この一言にコロリ。「やりまひょ」。しめたと石黒氏、しまったかと私。OKしたものの「裏窓」の常連(著書にも登場)食品配送業で私の影響モロにラーメンドライバーとなったX氏の協力なしには全く不可能な話。なので事後承諾(顔色変わってた、あはは) 私も製麺所探しに奔走。なんとか卵入り細麺を当日配送までとりつけ、協賛を快諾してくれた(株)海の精の自然海塩を使った塩ラーメンを試作する日々。風邪などに注意し健康管理万全&体力温存モードでこの日に備えたが……。
ふー、食事どころか汗拭くヒマもない盛況ぶり。「あと3枚、都合6枚でーす」。ところでここは赤が基調なのになして「Grey」だべ? おや疲労と寝不足で思考回路迷走中、あらら、1つのゆで籠に麺が2つも入ってたりして。テーマソングは脳裏に焼き付き、LPガスの残量を心配しつつ、ひたすら作り続けた2日間288杯、うずらと焼豚品切れで終了。スープと麺は残ってたから300杯はいけたな(へー欲がでてるわ)。知り合いに焼豚サービスしすぎたかも。は、ところでそうだ肝心の本の方は?「ラーメン屋で本の販売は無理がありましたね。でもラーメンの数はドンピシャでしょ(笑)」(石黒談)だって!? おいおい何のイベントだったんだよー。
●都内のラーメンを食い尽くして来た男が贈る真実のラーメン評価本『ラーメンライダーが行く!』(エクスナレッジ)はこの連載がきっかけで本になりました。ぜひ読んでね。
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