お題<日本とFA>
FA《Free Agent=日米両野球界で、一定期間(日本=9年、MLB=6年)一軍登録された選手のみが行使できる
権利。権利を行使した選手は一定の手続きを終えた後にFA選手として事務局より告知され、機構に参加している全
ての球団と交渉する権利を有する。FAは直訳すると、「自由契約者」となる。韓国球界にもあるが詳細は不明。》
日本球界にFAが登場したのが1993年のオフ。この年に早くも事件は起こった。当時中日の主砲だった落合博満が
FAに。移籍先として有力視された巨人では同じ一塁手の駒田徳広がFAになるも、球団から再契約の話は一切無
く、当時の駒田は「一生忘れない」と怒りの決別宣言。更には横浜が当時物議を醸した「主力6人解雇通告」を発表。
並々ならぬ姿勢で駒田獲得に参戦し、見事契約に至った。また中日への移籍が有力しされた巨人・槙原を、長嶋
監督が「薔薇の花束」で引き留めに成功したのもこの年だ。
FAが日本の世に出て9年となるが、いまだ誤解されている部分が多い。その典型ともいえるのが金本外野手のケース
だ。本人はFA宣言をする理由として「広島以外の球団が、自分をどう評価しているのかを聞きたい」というもの。FAす
るにあたって、ごく自然ともいえるもの。が、広島球団の見解は違った。「FAするなら再契約しない」結局、両者の間の
“溝”は埋まらず、金本はFA登録をし阪神入りした。注目すべき点はただ一つ。広島が「FAは選手の権利である」という
事実を全く認めていないことにある。極端に言えば、「金本だけじゃない。プロ野球選手に権利なんかない」と誤解され
ても、言い訳できない。福岡ダイエーも確か同じようなことを言っていたと思う。
あと、代理人問題もそうだ。何故、選手が代理人を起用するのかを球団が理解していない。メジャーでの代理人の存在
意義とは何か?「選手の役目はプレーすることである」の一点に尽きる。代理人を起用することで、選手は契約交渉な
どで頭を悩まされることもなく、野球により集中できるわけだ。阪神の選手が代理人を起用しているのも、うなずける話
だ。特に“外野”のうるささと球団フロントの優柔不断さが際立つこの球団では。
あと、私の先輩が話してたことだが、「FAで出て行かれると、せつなくなる」らしい。いうなれば、選手がファンにとっては
あたかも家族の一員のように見え、FAでの移籍は後ろ砂をかけられた気分になる、というわけだ。ファンとしての視点か
ら見れば、別に変な話じゃない。でも選手をいつまでも「子供扱い」するのもどうかと思う。そもそもFAを行使できるまでプ
レーしていられる選手なんて、ほんの一握り。毎年各球団で10人半ばが挫折し、この世界から消えていく運命にある。
Jリーグののように入団1年で移籍リスト入り(つまり、戦力外通告)となるのと比べりゃ、まだましなのだ。それを「可愛そ
う」だというのであれば、お前が養ってやれ!にもかかわらず、FAの時には「裏切り者」扱い。メジャーに行く選手が増えた
のも、決して偶然じゃない。ドジャーズの野茂が(当時在籍していた)メッツを解雇され、カブスのマイナーでプレーしていた
の話だ。知人に「何故マイナーなんかでプレーするの?日本(球界)へ帰ってたら」と言われて、彼はこう返した。
「(マイナーだけれども)年棒が下がるだけじゃないですか。」
この一言で、野茂は事実上日本球界を否定した。シドニー五輪代表で日本生命・杉浦投手(現在は引退)も「メジャー
から声がかかれば、(プロ入りも)考える。」と発言している。ドジャーズ入りした石井一久に至っては、こうだ。
「メジャー入りを諦めたら、日本に何の夢が残ってるんだろう…」
「日本プロ野球界には、純粋に野球を愛する者を潤すだけのものがない」という現実。「XX社の利益のためだけに存在
している」と酷評されても、言い返せない日本プロ野球界。そういう意味では日本がメジャーのファーム化しないために
も、本当の意味で日本国にプロ野球を、そしてプロという意味を、今一度根付かせる必要があるのでないだろうか。
日本にFAが浸透した時、初めて本当に“プロ”というものが認知された、と言ってもいいだろう。