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03/4/17製作)

03/5/15掲載)


 「剣の舞」という大ヒット曲を作ったアルメニア人の作曲家アラム・ハチャトゥリアンは、1903年にグルジアのトビリシに生まれています。従って、今年2003年は生誕100年を迎えることになります。この記念すべき年に彼のフルート協奏曲を演奏できるのも、何かの縁なのでしょう。
 実は、ハチャトゥリアンのフルート協奏曲などというものは、本当は存在してはいません。往年の名フルーティスト、ジャン・ピエール・ランパルは、多くの作曲家にフルートの作品を委嘱していましたが、20世紀を代表する当時のソ連の作曲家にも協奏曲を作って欲しいと考え、ショスタコーヴィチとハチャトゥリアンに話を持ちかけます。ショスタコーヴィチとはその後没交渉となってしまいますが、ハチャトゥリアンは、高齢のため新しい協奏曲を書くのは断ったものの、1940年に作られたヴァイオリン協奏曲のソロパートをフルートで吹いてフルート協奏曲としてはどうかという提案をしました。それを受けて、ランパルがヴァイオリン・パートのフルートで吹くのは不可能な部分(Bb以下の音や重音)や、一部の困難な音型を直して、1968年に「フルート協奏曲」として初演したのです。
 この曲は、20世紀半ばの作品にもかかわらず、いわゆる「現代音楽」の難解さとは全く無縁の、民族的なモチーフが多く用いられ、良く鳴るオーケストレーションが施された親しみやすいものです。

ジャン・ピエール・ランパル
ジャン・マルティノン/フランス国立放送管弦楽団(ERATO/Jan.1970
国内盤・WPCS-11020(ワーナーミュージック・ジャパン)で入手可
編曲者ランパルによる、もちろん世界初の録音です。様々な形でリリースされていますが、これはLPのオリジナルジャケットを用いた国内盤。マスタリングもこちらの方が輸入盤より優れています。

ジェームズ・ゴールウェイ
チョン・ミョンフン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RCA/May.1984
R32C-1028(RCD1-7010) 廃盤
このCDだけは、ランパルの編曲ではなくゴールウェイ独自のトランスクリプションになっています。冒頭のテーマから、2オクターブ高くなっていて、演奏は非常に困難です。現在は全集の形でしか入手できません。

09/8/5追記)
2005年に、タワーレコードよりこのCDが復刻されていました。現時点では容易に入手可能です。
TWCL-2023

パトリック・ガロワ
イオン・マリン/フィルハーモニア管弦楽団(DG/Aug.1991
435 767-2 廃盤
基本的にはランパルと同じアプローチでガロワ自身が編曲したもの。カデンツはハチャトゥリアンをそのままフルート用にしたもので、重音などを交えたすごいものです。現在では入手は困難。(03/5/24追記)

ジェニファー・スティントン
スチュアート・ベッドフォード/フィルハーモニア管弦楽団(COLLINS/REGIS/Nov.1992
輸入盤・RRC 1100で入手可
テクニックが確かで、アクの少ないさわやかな演奏。その分、土俗的な味は薄くなっています。

加藤元章
十束尚宏/東京フィルハーモニー交響楽団(LIVENOTES/Oct.1997
国内盤・WWCC-7315(ナミレコード)で入手可
3曲の協奏曲(尾高、イベール、ハチャトゥリアン)を一晩で吹いたリサイタルのライブ録音。独特の表現が聴かれます。

エマニュエル・パユ
デイヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(EMI/Oct.2002
輸入盤・557487 2
国内盤・TOCE-55587
スーパースターによる待望の新録音ですが、過度の期待は禁物。この曲に不可欠なリズム感と民族情緒が、見事に欠落しています。CCCDではない通常盤はこちら


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