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01/7/20作成)

01/11/6掲載)


Gustav Holst/The Planets
Colin Matthews/Pluto
Mark Elder/
The Hallé Orchestra
The Ladies of the Hallé Choir
HYPERION CDA67270
 前回のトヨタコミュニティコンサート(19981031日)で取り上げたホルストの「惑星」ですが、太陽系をテーマにしたこの組曲が作られたのは、1916年ですから、太陽系の9番目の惑星である冥王星は、まだ発見されていませんでした。発見されたのはホルストが亡くなる4年前の1930年。いくら新しい惑星が見つかったからといって、いまさら大規模なオーケストラ曲を書くなどという気持ちにはなれなかったでしょう。なによりも、「惑星」は「海王星」の最後の女声合唱のフェイドアウトによって、宇宙のかなたの神秘の世界を暗示するという形で完結してしまっていますしね。

 そのような意味で、ある種「余計な仕事」を考えたのは、新しい物好きの指揮者、ケント・ナガノでした。当時音楽監督を務めていたハレ管弦楽団のために、
1946年生まれのイギリスの中堅作曲家、コリン・マシューズに、この「冥王星」の作曲を依頼したのです。マシューズという人は、デリック・クックと一緒にマーラーの交響曲第10番の復元を行った事でよく知られていますが、グスタフ・ホルストの娘のイモージェン・ホルストとともに、ホルストの忘れられた作品を世に知らしめることにも功績がありました。

 マシューズが作った「冥王星」とともに、全8曲からなる組曲「惑星」がマンチェスターで初演されたのは、
2000年5月11日のこと。演奏はもちろん、この曲を依頼したケント・ナガノが指揮する、ハレ管弦楽団でした。今年4月21日には、大友直人指揮の東京交響楽団の演奏で、日本でも初演されています。このCDは、現在のハレ管の音楽監督であるマーク・エルダーの指揮で、今年3月に録音されたもの。もちろん、世界初録音です。

 さて、新しく加わった「冥王星」、いったいどんなものなのでしょう。もちろん、ホルスト自身が残したスケッチなどというものは一切ありませんから、この曲は完全にマシューズの創作になるわけです。そこで彼は、まず、とりあえずホルストの手で完結してしまった「海王星」の最後の部分のフェイドアウトを手直しして、先につなげることが出来るように修正するところから、仕事をはじめました。そして、本体の「冥王星」は、組曲全体の雰囲気を損なう事がないように、現存の曲のコラージュのような手法をとって、まとめ上げています。「海王星」のモードで始まった音楽は、「水星」のヴィルトゥオージティを経て、「火星」の盛り上がりへと続きます。最後には、出番が少なかった女声合唱の一声を入れることも忘れてはいません。

 しかし、しょせんは他人の手になるものですから、ホルストの精神がきちんとメッセージとして伝わっているかどうかという点では、聴く人によって様々な感想が生まれることでしょう。つい最近、「ジュラシック・パーク3」のサントラ盤を聴いたばかりの私には、ハリウッドの映画音楽に限りなく近いものを感じてしまってしょうがなかったのですが。

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