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(01/5/3作成)

(01/6/19掲載)


DVD(英・略:Digital Versatile Disc
 直径12cmの虹色に光る円盤。専用のプレーヤーにかけると、画像や音声を再生することが出来ます。多分「Digital Video Disc」の略語だと思っている人が多いのではないでしょうか。確かに、開発当初は「画像再生用ディスク」ということでそのように命名されたのですが、単に画像だけではなく、もっと広範囲のデータの保存媒体として使われるようにと、同じ「V」でも「Video」ではなく「Versatile(多用途の)」に変わったのだと言われています。もっとも、こういった略語の場合は、別に元の意味がわからなくても十分それだけで通用するものです。現に、「IT」や「URL」が「岩手県種籾協会」や「Unopened Real Love(真剣な不倫)」の略語だなどということを知らなくても、なに不自由なく生きてはいけるのですから。
 DVDが発売されて数年になりますが、その間の躍進振りにはかつてのCD(コンパクト・ディスク)を思わせるものがあります。CDが従来の音声保存媒体であったLP(長時間レコード)を完璧に駆逐してしまったのと同様に、DVDも従来のLD(レーザー・ディスク)を場所ふさぎの役立たず物に貶めてしまったのです。いまやDVDは価格体系もリーズナブルなものになり、成熟したメディアとしてAV(もちろんアダルト・ヴィデオ・・・なわけはなく、オーディオ&ヴィジュアル)業界に定着したかに見えます。

 しかし、DVDの場合、CDとは異なって外国の製品を国内で見ることはできないという、致命的な流通上の欠陥があるのです。これは欠陥というよりは映像のパッケージのあり方の根本に起因するものなのですが、基本的にはソフトの販売が第一義的なCDとは違って、DVDソフトの大半を占める映画作品の場合、劇場で公開する事があくまでもメイン、ソフトとして販売するのは二次的なことなのだという事情があるからなのです。ですから、映画のDVDを発売するのは劇場公開が完了した時点ということが一般的なお約束になるわけです。ところが、アメリカで作られた映画が全世界でいっせいに公開されるというようなことはあまりありませんから、日本ではまだ公開されていない作品がアメリカではDVDになっているという様な事態も起こりうるわけです。現に、このゴールデンウィークに公開されているクレイアニメ「チキンラン」などは、アメリカでは半年以上も前にDVDが発売になっているのですから。
 このように、劇場公開の前にDVDが出回ってしまうと興行収入に大きく影響が出てきてしまうと考えたアメリカの映画会社は、DVDのメーカーに働きかけて、特定の地域以外で購入したソフトは再生が出来ないような姑息な制度を作ってしまいました。それが「リージョン・コード(Regional Restriction Codes)」というもので、世界を下図のように6つの地域(リージョン)に分けて、それぞれの地域内で販売されたソフトは、同じ地域内で販売されたプレーヤーでしか再生できないようにするものです。もちろん、アメリカと日本が異なる地域になっているのは言うまでもありません。なぜか、日本とヨーロッパと南アフリカが同じ地域となっていますが、もともとテレビの方式自体が全く異なっているので(NTSCPAL)わざわざ別のリージョンにする必要もないのでしょう。

 まあ、映画の場合、いずれは日本でも同じ物が発売されるのですから、少し待てば良いことですし、何よりも、輸入盤にはまず日本語の字幕が付きませんから、そんなに目くじらを立てることはないのでしょう。ところが、ここに、私たち音楽ファンにとって見逃せない事態が発生したのです。
 「ファンタジア」という、ディズニーの有名な音楽アニメがありますが、今まで劇場で公開されたりビデオ化されているものは、全て、最初に作られたものの実写による導入部分にカットが入ったものなのです。ところが、そのカットを修復したフルバージョンが「60周年記念」ということで、アメリカでのみDVDで発売されたというのです。このような貴重なものを、現在の制度のもとでは合法的に見ることができないというのは、非常に情けないとは思いませんか?

 しかし、世の中には「リージョン・フリー」という、リージョン・コードに関係なく再生できるプレーヤーもありますので、その気になればいくらでもこの「悪法」をかいくぐることはできるわけです。ところが、映画会社のほうでは、この「リージョン・フリー」のプレーヤーでも再生できないような新たなコード・システムを採用し始めたとか。どこまでいってもいたちごっこは続きます。
 ちなみに、輸入盤といっても、オペラのように普通のお店で売っているものには、リージョン・コードは設定されていませんから、安心してお買い上げください。ただし、日本語の字幕が入っていないものもありますので、その点はご了承願います。

付記
 この稿をまとめるに当たって、サウンド&ヴィジュアルライターの前島秀国氏からの情報を全面的に参考にさせていただきました。氏の該博さ無くしては、このコンテンツは生まれ得なかったことを銘記して、謝辞に代えさせていただきます。

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