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(01/4/25作成)

(01/5/19掲載)


カバー(英:cover version
 水の中に棲んでいる哺乳類(それはカバ)ではなく、楽譜や楽器を入れて持ち運ぶ袋(それはカバン)でもなく、もちろん焼き鳥の食材(それはレバー)でもありません。もともとの意味は、例えば本のカバーのように、何のデザインもされていない表紙の外側を覆ってより外観を美しく見せるというもの。音楽関係で使われるときは、オリジナルの曲を装飾してより美しく仕上げるという意味になるのではないのでしょうか(という説については、実はあまり自信はありません。ご存知の方はご教授ください。)。
 それが転じて、現在では、元の曲を別のアレンジにしたり、場合によってはメロディーまでも大幅に変えて演奏してしまうことを指し示す言葉になっています。したがって、本来の「より美しく」という意味合いは薄れ、単に「別な形で」というニュアンスが強くなっています。ちなみに、オリジナルと同じアーティストが行う場合を「セルフカバー」と言います。さらに、オリジナルと寸分たがわない形で演奏する場合は、「コピー」という言葉が使われます。
 お気づきのように、これはもっぱらポップス系で使われる用語。クラシックの場合は、まず使われることがありません。というか、きちんと楽譜(不確定性のものでも)を介在して演奏されることが前提となって成り立っているクラシック音楽においては、演奏者(アーティスト)が曲に手を加える自由は許されてはいないのです。言ってみれば、クラシックとは「コピー」の上に成り立っている音楽とは言えないでしょうか。しかし、中には大胆に自分の解釈を全面に押し出して、「カバー」に近い演奏を繰り広げる、○○ワノフや○○ノンクールといったつわものもいますから、一概には言い切れませんが。

FOR LIFE FLCF-3845
 最近のカバーの名作といえば、「♪花咲く 娘たちは〜」というフレーズで始まる、井上陽水の「花の首飾り」ではないでしょうか。某食料品のCMとして大々的にON AIRになっていますから、耳にされた方は多いはず。もっとも、私が最初にこの曲を聴いたときには、疑いもなく陽水の新曲だと思ったものです。私の年代では、30年以上前のグループサウンズの曲など知る由もありませんから、それも無理のないこと。このように、オリジナルを超えてそのアーティスト自身の世界を表現するというのが、ある意味、カバーの醍醐味といえましょう。

 気になったので、こちらのオリジナルの方もしっかり調べてみました。演奏していたのは「ザ・タイガース」という、沢田研二とか岸部一徳といった俳優が若い頃にやっていたバンド。1968年3月15日にシングル盤がリリースされて、200万枚近くの売り上げがあったという、当時としては大ヒット曲だったのです(知らなかった〜)。リードヴォーカルは、沢田ではなく、加橋かつみという人が担当しています。曲を書いたのが「ドラゴンクエスト」などのゲーム音楽でおなじみのすぎやまこういち。この頃はテレビ局でディレクターをやっていたということです。その「花の首飾り」が収録された彼らのセカンドアルバムがこれ。
ポリドール POCH-1347
「世界はボクらを待っている」という、同名の映画のサウンドトラック盤ですが、映画自体はおそらく今で言うところのビデオクリップの寄せ集めのようなものだったのでしょうから、当時の彼らのヒット曲が網羅されています。(いやいや、そうではない。これは宇宙からやってきたかわいいお姫様を、タイガースのメンバーが救い出すという感動的なお話で、中でも、この映画のために作られた「銀河のロマンス」は、涙無くしては聴けなかった…などと、リアルタイムの体験を語れるおぢさまに羨望のまなざしを送る私は、次の世代に「モーむす」の体験などを語り継ぐのです。)

 ところで、この曲は、もしかしたらヘンデルの「水上の音楽」のカバーなのでしょうか?

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