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パフィー「これが私の生きる道」 のアナリーゼ

ビートルズからの引用を中心に

96/11/14掲載)


ジャケット写真 『ペキン・ベルリン・ダブリン・リベリア〜』という井上陽水のシュールな歌詞の勢いでミリオン・セラーとなったデビュー・シングル、「アジアの純真」の後をうけたPUFFYのセカンド・シングル「これが私の生きる道」は、やはり100万枚にせまる大ヒットとなっています。
 「アジア〜」は、今年ヒットした曲の中では最もすぐれた作品(だと私は信じています)ですから、この曲を最初聴いた時は前作のインパクトには到底及ばない凡作という印象でした。ところが、間奏のギター・ソロがビートルズの
"DAY TRIPPER"のリフの引用だと気づいた途端これはとんでもない曲だと思えてきたのです。本気になって調べてみるとあるわあるわ、いたるところビートルズの引用だらけです。前作は陽水の言葉遊び、そして今回はビートルズのパロディーと、プロデューサーの奥田民生(元ユニコーン)のセンスには完全に脱帽です。
 ブルックナーやストラヴィンスキーの後にこんなことをやると、ウケねらいのあざとさがミエミエですね。でも、「そんなのマネとはいえないじゃん。」という娘の嘲笑にもメゲず、ひたすらモトネタ探しに没頭した成果ですから、ここはひとつ災難だと思ってご傾聴下さい。

アナリーゼ・チャート(タイトルをクリックすると、コメントがリンクします)

註釈

  *1
A、A′のリズム・パターンは"TICKET TO RIDE"そのもの。原曲のリンゴ・スターのドラムは、3、4拍目のスネアに独特のタメがあって、絶妙なグルーブ感が出ています。
リズムパターン
メロディーは"FROM ME TO YOU"。これは雰囲気が似ているという程度なのですが、後の間奏とも関連しています(*8参照)。最初の2小節のコード進行はEBmですが、これは"A HARD DAY'S NIGHT"の冒頭GDmと全く同じです。
  *2
Aの最後の小節、DB7というコード進行は"ALL MY LOVING"に出てきます。この、属7の前にVIIbを入れるという独特の半終止は、おそらくこの曲で最初に一般的になったのではないでしょうか。
  *3
A′6小節目のギターのフレーズは、"SHE LOVES YOU"の冒頭、コーラスからAメロへのつなぎのフレーズと、雰囲気が大変似ています。(これはあまり自信はありません。)
  *4
この間奏が"DAY TRIPPER"だというのは、すぐにわかりますね。ここでは最後のDナチュラルをD#にしてポップな感じにしています。
譜例
  *5
B、B′のリズム、うすく入っているオルガンは、"MR.MOONLIGHT"のアレンジに良く似ています。
  *6
B、B′のコーラス(ウ〜・ラ・ラ・ラ・ラ)は、"NOWHERE MAN"のコーラスそのものです。
  *7
これは、かなり自信をもって断言できますが、Bの最後の小節のギターのハーモニクスは、まちがいなく"NOWHERE MAN"のジョージ・ハリソンのソロの引用です。
  *8.9
間奏のハーモニカ・ソロは"FROM ME TO YOU"のイントロと印象がすごく似ています。また、後半には"PLEASE PLEASE ME"のAメロが、まるでジョージ・ハリソンのような音程の悪さで登場します。
  *10
"TWIST AND SHOUT"の属7の和音を下から重ねていくコーラスが、そのまんま引用されています。
  *11
ここにも"SHE LOVES YOU"の「イェ〜・イェ〜」というコーラスが引用されています。
  *12
エンディング、E6のコーラスは、"SHE LOVES YOU"のエンディングG6と全く同じです。そういえば、前作「アジアの純真」のエンディングは"SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND"のアルバムのエンディングのパロディーだったんですよね。

ジュラシック・パフィー  その他にも、このシングルにはさまざまな仕掛けがほどこされていてうれしくなってしまいます。まず歌入りの本体はモノラル録音だということ。ビートルズの初期のレコードは全てモノラルでリリースされたのを忠実に再現してるわけです。さらにカラオケでは、左右チャンネルに楽器をきっちり振り分けるという中期ビートルズ的ステレオ音場になっています。カップリングはユニコーンのカバーですが、これにはわざわざLPレコードのスクラッチ・ノイズを入れてレトロ感を強調しています。同じことはTLCのようなヒップホップ系のアーティストやTAKE6(タケロクと読んだ人がいた!)もやってますよね。というわけで、ビートルズがなんと10曲も引用されているのが分かりましたが、実はザ・フーあたりからの引用もあると言われています。奥が深いですよ。
   

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