Your French is terrible!バレンタイン版。少しだけ話が変わっています。

Your French is terrible! ― St. Valentine’s Day ―

受験シーズン真っ只中、優李は母と姉に 「バレンタインは、絶対に手作りチョコよ!」 と言われて苦労して作りますが・・・出来は散々たる物。
しかし姉と母の励ましの言葉にそれを渡す事を決心します。
そして2月14日、バレンタイン当日。その日は大学受験(勿論二人とも同じ大学の学部を受験です)の日。 優李は受験の帰りに勇にチョコを渡そうとしますが出来ません。
結局渡せぬまま家に帰りますが、やはり思い直して電話をかけます。
「渡したい物があるから会えないか?」と。
勇が大急ぎで待ち合わせの店にへやってくると、カウンター席のそれも一番奥の隅に優李の姿を見つけます。
そして勇が優李の隣へ座ると彼女は黙って勇に包み紙に包まれた箱を差し出します。驚いて箱を見つめる勇。優李は勇にぶっきらぼうに言います。
「チョコだ、わたしが作った。」
(本当にここが一番いいところなのですが・・・飛ばして(^_^;)
とにかく感激のあまり勇は感謝の言葉を口にした所から話は始まります。



「何で怒るんだよ!」
「当たり前だ!たかがチョコレート一つでそこまで・・・」
彼女はそこまで言うと恥ずかしげに俯いて言った。
「きっとがっかりするぞ。わたしは買った方がいいと言ったのだ。だが、ママンと有紗がこちらの方がいいというから仕方なく・・・」
それを聞いて彼は嬉しそうに笑った。
「何言ってるんだよ!こっち方が嬉しいに決まってる。開けていい?」
彼女は返事をしなかった。だが彼は、カウンター席のそれも一番奥の隅という席を彼女がわざわざ選んだ意図をちゃんと察して、リボンと解くと包みを開けて箱のふたを取った。
中には箱の大きさには少々不釣合いな形も大きさも違う小さなチョコレートが、それも3粒だけ、包装の中に埋もれるようにしてちょこんと収まっていた。
彼は暫くの間黙ってそれを見つめた。
「言っておくが、全部同じ味だ。」
彼女の少し悲しげに言った言葉に彼は真っ黒い優しげなまなざしをもっと優しくすると彼女の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。
それから彼は、彼女に尋ねた。
「食べていい?」
「い、今は食べるな!・・・寮に帰ったら。」
恥ずかしそうに俯いた彼女の言葉に彼は頷いた。
「それもそうだ。みんなに見せびらかして自慢して・・・」
「駄目だ!一人でこっそりと食べろ。美味しいものではない、別に食べなくとも・・・」
言いかけた彼女の言葉を遮って彼は言った。
「まさか!どんな事があっても食べる!絶対!おれ・・・嬉しい。もう!すごく!嬉しい。なんていったらいいか・・・Je suis heureuse,Oscar,tellement heureuse. Ma chere Oscar,Si tu savais a quel・・・」
「よせ!」
彼女が叫んだので、彼は仕方なく黙って残念そうに彼女を見た。そんな彼を少し睨んで彼女は言った。
「おかしいとは思わないのか!そのフランス語は!」
「文法的に?発音が?」
「いや、それはない。珍しく正しい。」
「そうか!よかった・・・」
「ではない!少しも良くない!」
彼女は叫んで、周囲の注目を浴びて気まずそうな顔をしたがすぐに彼を睨みつけ小声で言った。
「・・・おまえの所為だぞ。」
「だから何が?おれにはさっぱり・・・」
彼女が声を潜めたので彼も思わず声を潜めて答えた。
「よく恥ずかしげもなく!おまえという奴は・・・」
「なんだ、それか!心配ないって。大体この店の中で何人が分かると思う?」
彼はコーヒーショップの窓側のカウンター席から後を振り返り、それから彼女に優しく笑いかけた。しかし彼女は、彼の言葉に反論して答えた。
「一人くらいいるかもしれないだろう?それより、問題なのは・・・」
「なんだよ?まだ何かあるのか?」
「だから!何故それだけ流暢に、発音も、文法もまともなのだ?いつもは・・・“このコーヒーショップには来たことがあるのですか?”フランス語で言ってみろ!」
「え?えーと・・・ヴヴネスバンス・・・セカフェ・・・じゃなくて・・・・ヴヴナスバンスセカフェ・・・でもない?」
彼女は彼を冷ややかに見つめた。
「だからおれは!フランス語は苦手なんだよ〜」
「では、さっき言ったあの言葉はあれはなんだ?」
「フランス語。」
「・・・あれをもう一度言ってみろ。我慢して聞いてやる。」
「Je suis heureuse,Oscar,tellement heureuse. Ma chere Oscar,Si tu savais a quel point je t'amie. Je t'amie. Je n'aime que toi. Je veux vous donner une etreinte serree immediatement maintenant, et au baiser actuel de 1 million dans le doigt rose et la levre rouge, et le corps. Mon sentiment devrait savoir il est. Je t'amie. Ma chere Oscar」

おれは幸せだ。最高に幸せだよ、オスカル。愛しいオスカル、おれがどんなにおまえを愛しているのか!おまえは分かってくれるだろうか?愛している。おまえだけを愛しているよ。今すぐに腕の中におまえを入れて抱きしめてその赤い唇にばら色の指1本1本にそれどころか身体中に百万のキスを贈りたいおれの気持ちがおまえに分かってもらえるだろうか?愛しているよ、おれのオスカル。

勇は言ってから優李を見た。
優李はまたしても赤くなりながら、だがそれを隠そうとして不機嫌そうな顔を作ると彼に尋ねた。
「何故それだけちゃんとしたフランス語なのだ!」
「他にも言えるけど・・・言っていい?」
勇は嬉しそうに尋ねたので、優李はもっと赤くなって、それでもキッと睨みつけて 「駄目だ!」 というと 「それより理由を話せ!」 と命令した。
「フランス語は、昔一生懸命練習した。」
「昔からずっと習っているのに!一向に上達しないのはよく知っている。それなのに何故ああいう文句だけすらすらと出てくるのだ?」
「えーと、だからそれだけ練習した。それはもうしっかりと。」
「それだけ?何故それだけ練習したのだ?」
優李の問いに勇は苦笑して、それから優しく微笑むと、「伝えたかったから。」と一言だけ言った。
彼女はそれを聞いて少し考え込むとすぐに彼から目を逸らした。
「・・・悪かった、変な事を聞いて。」
「いや、別にいいけど。」
勇は答えて、それから彼女の様子を見つめた。今度は勇が考え込んで・・・彼は慌てて叫んだ。
「ちょっと待て!おまえ何か勘違いしてないか?」
「わたしは別に・・・そんな事は気にしていない。」
目を逸らしたまま優李は答えた。
「オスカル!おれは、おまえ以外の誰にも言ったことはない!」
「別にいい。おまえが昔誰を好きだろうとわたしには・・・」
「だからおれは!おまえ以外の誰も好きになったことなんてない!」
勇が叫んだのを聞いて優李は勇を見た。彼は真剣なまなざしで彼女を見返した。
「それでも他の誰かに言う為に一生懸命練習したのだろう?」
彼女はそういうと黙り込んだ。
勇は彼女の様子を困惑げに見つめた。それから苦笑すると、彼女の顔をのぞきこむようにして今度は優しく微笑みながら言った。
「おれ、おまえにしか言ってない。他の誰にもだよ、オスカル。」
「では何故だ?何故昔、練習したのだ。」
勇は優李に見つめられて少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。
「おまえに言う為。」
だが優李は彼に冷ややかな目を向けた。
「初めて会ったのは1年半前だぞ。」
勇は笑った。
「いや違うよ。会ったのは12年前だ、おれが6歳の時。」
優李は怪訝そうに彼を見つめて・・・それから彼の言わんとする事をようやく理解した。
「オスカルの絵か?だけどおまえ、あれは・・・・絵だぞ?」
彼女は呆れたように彼を見て言ったので、彼は慌てて答えた。
「仕方ないだろう!絵しかなかったんだから。どこかにいると思って何度も探しに行ったけど・・・」
「何度も探しに行った?」
勇は視線を逸らすと目を伏せて「・・・絶対いると思って、探せば見つかると思ったんだよ!でも会えなくて、それで死んだ親父が・・・フランス人だから日本語は通じない。まずフランス語を勉強しないと伝えられないからと言われて・・・」
彼は口篭った。
「それでフランス語を習い始めたのか?つまりそれは絵に・・・言う為に?」
「絵に言いたかったんじゃない。」
勇は不満げに言った。
「あ・・・そ、そうか。い、いや・・・・そうか。そ、そうだな。」
真っ赤になって俯く彼女を愛しげに見つめ、それから勇は顔を近づけると少しだけ声のトーンを落とした。
「オスカル、おまえだけだよ。他の誰にも言ってない。Je t'amie. Je pense a toi,nuit et jour.Viens dans・・・」
「も、もういい!」
言いかけた言葉を優李は慌てて遮って叫んだ。勇は少し不服そうに彼女を見た。
「り、理由は分かった。だが、わ、わたしは・・・日本語の方が使い慣れているぞ。わ、わざわざフランス語を使う必要はない!」
「でも・・・さっきのを日本語で言われたら?」
勇の問いに優李は暫く考え込んで彼を見た。
「・・・殴るな、多分。」
彼は頷いた。
「だろう?おれもさ、日本語で言うのは躊躇するんだよな。恥ずかしいというより、言っちゃうと寒い〜みたいな?」
「その通りだ、普通は引くぞ。」
「だろう?だけどフランス語は違うと思わないか?いくらでも言っていい気がしないか?」
「それは言葉の問題ではなく、フランス語を母国語とする国民性がそうであってだから・・・・つまり、そうなのか?」
彼女は考え込んだ。
「そうだろう?ほんといい言葉だよな、フランス語って。もう一回言っていい?」
「だ、駄目だ!」
「どうして?」
「人前だぞ!」
「誰もいなければいいのか?」
勇が尋ねた言葉に優李は彼の顔を暫く見つめた。それから俯くと
「Le mot est juste en raison de moi, si est, quand je suis baiser embrasse, dedans juste vous permettrez probablement cela de la meme maniere avec beaucoup de, personne ou je suis cher. mon amour Andre. Mais est juste a l'heure de deux exercices, vous comprenez Andre? 」

その言葉がわたしの為だけにあるのなら、わたしを抱いて口づけするのと同様におまえだけにはいくらでもそれを許そう、わたしの愛しい人。だけどそれは二人きりの時だけだぞ、分かっているか?アンドレ。

早口のフランス語で囁くように言って、顔を上げて不機嫌そうに彼を見た。
「わたしが何を言ったのか分からないだろう?いいかアンドレ、中途半端なフランス語を使うくらいならそれは使わない方が・・・」
優李はそこまでしかいえなかった。カウンター席に当然だが隣り合って座っていた彼女の肩をいきなり抱き寄せて彼女の頬にキスをすると勇は嬉しくて仕方ないといった様子で言った。
「sereeとembrasse だけはわかったよ。勿論mon amour Andreも!おれ・・・嬉しい。おれもだよ、人がいなければもっとちゃんとしたキスを・・・」
「だ、黙れ。そ、それ以上言うな。」
優李は真っ赤になって俯いた。勇は肩を抱いた腕を緩めると、そんな彼女の様子を見て幸せそうに微笑むと彼女の耳元で囁いた。
「それじゃあ・・・Je t'amie. Ma chere Oscar Viens dans・・・」
「黙れ!な、何が分かっただ!ひ、人前で・・・よくもおまえは・・・ぜ、全然分かってないじゃないか!お・・おまえのフランス語は・・・フランス語はなあ、なってない!なってないぞ!この・・・」

「バカヤロー!」

優李はあたり構わず大声で叫んだ。

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