2005年3月13日 16:00開映
   『オペラ座の怪人
於 日劇 1

  
子音が立ってる。子音がちゃんと立ってるよ…(*>_<*)。

私の所属する合唱団では外国語の曲をたくさん歌います。
ドイツ語だったりラテン語だったりフランス語だったりイタリア語だったり、
今度の演奏会では英語の歌も歌うのですが、
その時しょっちゅう先生に指摘…というか注意されるのが子音の扱い方。
単語の語尾の「t」だとか「d」だとか「n」だとかを
ちゃんと聞こえるように発音しろ、と怒られるわけです。
語尾をもにょもにょもにょ…と納めてしまいがちな日本人には
実はとても難しいワザなわけですわ。

でもこの中で歌ってる皆さまは、
どんなに囁くように歌っていても
「♪ナ〜イ……tっ」とちゃんと最後まで言い切ってるの。
ああ、先生がいつも言うのはこういうことなのね…(*>_<*)と
再確認しました。
(そういえばその昔、ロンドンで『ミス・サイゴン』の舞台を観たときも
死にかけてるのにちゃんと子音を立てていて感激した記憶が…)

ストーリー…は今さらですね。
記憶の彼方にぼんやり見える四季バージョンを思い出しながら
観ていたのですが、
そうでしたね、けっこう怪人は「怪人」なのでした(^ ^;;。

四季Ver.を観たときは、
タモリが嫌がるミュージカルらしさ(何もないところから突然歌い出す)が
満載な舞台にかなりツボって肩を震わせていた私ですが、
今回もまたいろいろなところで、
絶賛されてる皆さまスイマセン、さらにツボっておりました(>_<)。

だって、映画なんですもん(爆)。
「映画」って、舞台に比べてリアルじゃないですか。
世界を四角いスクリーンの中に切り取って、
できるだけ実際の世界に近づけていこうっていう手法。
今回だってスワロフスキーのシャンデリアを使ったりしつつ
可能な限りお金も時間も費やして本物の19世紀後半の雰囲気、
オペラ座の雰囲気を出そうとしていましたよね。
で、それはとても成功してると思うんです。
19世紀はこんな世界だったんだ、と思ってわくわくしました。

でもだからこそこっそりおかしいの。
オペラ座の屋上でどこから聞こえてるのか分からない伴奏に乗り、
5分近くも手に手を取って愛を歌い続ける
ラウル(パトリック・ウィルソン)と
クリスティーヌ(エミー・ロッサム)――
いや、本当に素敵なんだけど、スイマセン、こっそり笑いました(爆)。
舞台の上で観たらもうぜんぜんナチュラルにうっとりしてるはずなのに。
すごいですね。
舞台装置は記号なんだ、と思いました。
リアルすぎない世界の再現が、突然歌い出しても、
しかも愛をながながと歌っても、
人を現実に戻させない役割をしてるんですね(*>_<*)。

ついでに言うと、
そのラウルとクリスティーヌがバカップルのように愛を語り合うのを
これまたどこから現れたのかこっそり観ている
ファントム(ジェラルド・バトラー)。
二人がオペラ座の中に消えた後、絶望に歌い出すのですが、
その時その屋上にある天使か何かの像の上に飛び乗って咆吼する。
ここで、カメラがパリの夜空高いところまで引いたのです。
――小さい! 小さいよ、ファントム!!(爆)
あれはきっとロイド=ウェーバー氏がやってみたくてやったのでしょうが、
ちょっと…どうかな(^ ^;;。
広いパリの中でこんなところで一人吠えていても…ってね、
淋しくなっちゃいました。難しいね〜。

でもすごく楽しんだんですよ(*^ ^*)。
なんたって、ラウル!
むやみやたらとカッコいいラウル!!
あの髪の長さがいかにもコスプレ系だった上に、
白いブラウスを着て白馬乗って助けに来ちゃうし、
仮面舞踏会では後ろに髪をリボンで結わえて、軍服ですか!!
しかも、片方の肩は落として!!!
「王子様」を地で行ってましたね!!!
果てには彼のアクロバティックな水中遊泳まであり
(ていうかあんなに頑張って助けに来たのに
あっというまにお縄にかかってしまって可哀想(^ ^;;)、
いやあ、世の娘たちよ、彼に惚れなさい、と言わんばかりでしたね。
そりゃあクリスティーヌだって彼がいいさ。

そのクリスティーヌは私、
結局最初から最後までずっとラウルから心を移してないと思えたのですが。
音楽の天使に感謝したり惹かれたりしている部分や
ファントムにほだされている部分はあったろうけど、
でもず〜〜〜っとラウル一筋だったように思えました。
(実は四季版を観たときにも、同じこと思ったような気が)
そうそう、最初のカルロッタ代役舞台の時のお衣装や髪型が
まるで鏡の間のシシィ(『エリザベート』)のようでしたね。
映画が終わってロビーに出てきたとき同じことを話してる女性二人がいて、
思わず「私も思いました!」と声をかけたくなりました(笑)。
よく考えると国こそ違え、同時代が舞台になってますね。

そんなわけで結局振り向いてもらえなかった可哀想なファントム。
舞台では彼の可哀想な過去について
シーンとして表してはいなかったようですが、
あれだけこっぴどい目に遭っていれば
そりゃあオペラ座に匿われたくなるのもしょうがない
(cf.『ファントム』宝塚宙組)。
でもここまで辛い目に遭ってきたうえに
好きな人から「歪んでるのはあなたの顔じゃない、心の方よ!」なんて
ひどい言われようをして…(T_T;。可哀想に。
私としてはあのオールバックが
いちばんいけなかったのではないかと思うのですが(爆)。

その他、カルロッタの歌声…みんな耳栓までしてましたが
素晴らしい歌声じゃなかった? どうなの? とか、
それを言ったらクリスティーヌの声の方が息漏れがちょっと、とか、
メグの歩き方がバレリーナの足になっていたのが素敵だった、とか、
ていうかカルロッタ以外はみんなアテレコせず自分で歌ってるのは
すごいね、みんな上手いね〜〜(*^ ^*)、とか、
ていうかクリスティーヌとても16歳に見えませぬ〜、とか、
なにより、ファントムの仮面、
あんなにシワをつけなくたっていいのに、仮面なんだから、とか、
ええ、細かな感想はいろいろとまあ。

でもやっぱりいい音楽ですよね。
帰りに楽譜を買ってきました。
歌おうっと、ちゃんと子音立てて(*^ ^*)。

fin