――そういえば
「パサジェルカ」という言葉はどういう意味だったんだろう。
人の名前かな〜とか勝手に思ってたのだけど、
お芝居にそんな人は出てこなかったし、あれ?
…と思って今調べてみたら、
ポーランド語で「女船客」という意味だそうな。
納得。そういうお話なのです。
ストーリーは、1961年8月12日から始まります。
ベルリンの壁が築かれる前夜、
豪華客船『ハンブルク号』はドイツから出航した。
ブラジルに外交官として赴任する
ワルター(笠原浩夫)の妻・リーザ(林勇輔)は、
船の中である一人の女性(及川健)を見かけ、激しく動揺する。
その女性は、彼女の秘めてきた過去――ナチス親衛隊として
アウシュビッツ収容所で看守を務めていた頃の記憶を甦らせたのだ。
マルタ(及川健)というその女囚は狂乱の中でも毅然と振る舞い、
看守であるリーザにさまざまな感情を抱かせた。
同情、友情、憐憫、嫉妬。
その心の闇の中へ、船はすべり始めてゆく――。
第二次大戦もの、しかもアウシュビッツもの、
しかもナチス側にいた人の告白ということで、とても重い作品でした。
収容所に看守として、それこそ希望を持って入っていった人の、
現実を知っていく過程。
その現実に恐れおののきながらも、取りこまれていく過程。
善悪二元論では片づけられない人間の心の揺らぎが、
余すところなく表現されていました。
何より素晴らしかったのは、リーザ役の林さんでしょう(*T-T*)。
以前からお芝居の上手い方だとは思っていたのですが、
本当に…入りこみました。
まずね、最初にびっくりしたのが、ダンスが上手かったこと!
幕開き、豪華客船の出航パーティーシーンで踊っていたのですが、
姿勢から一人違いました(*>_<*)。
もちろん女役として踊っているのだけど、
あまりにも綺麗で優美で、目が惹きつけられた!
思わず誰と踊ってたかさえ忘れたほど、
上手で笠原さんが何か喋っていても聞こえてこなかったほど、
林さんだけを観ていました!
そういう話は聞いたことないと言われたけど、
バレエとかやってたのかしら。
もちろんその後のお芝居の表情から仕種から、
あまりにも上手くて(*T-T*)。
リーザの独白でストーリーが進んでいくのだけど、
その視線の泳ぎ、唇のふるえ、スカートをにぎる心の動揺、
ひとつひとつにリアリティがありました。
まさにハマリ役。
そのリーザと奇妙な友情(というべきか)で結ばれる
女囚のマルタを演じた及川くん。
髪をベリーショートにしてたり、その細さも相まって
いたいたしい囚人、でも毅然とした女性でした(*T-T*)。
ラスト、白いドレス、手袋もスーツケースもストッキングも白だったのには
やっぱり意味があるのかしら。
なんとなくマリア様――マルタの婚約者・タデウシュ(山本芳樹)が
彫っていたメダリアンなのかなあという気もして、
またその笑顔にこの作品の希望が見えた気もしたのですが。
そうそう、そのタデウシュ。
一幕を見終えたとき、実は芳樹さんだとは思ってませんでした。
「また新しい人が出てきたのね〜〜上手いね〜〜(*>_<*)」と思って
なんていうお名前なのかな、とパンフレットを開いたら、
あらまあびっくり、山本芳樹さんではありませんか!
お髭を生やしているからかなあ、
いつも線の細いイメージがあったのに、
今回はとても骨太な、いい男でございました(*T-T*)。
射殺されてしまう前の叫びだけは…ゴメンね、
ちょっとだけツボってしまいましたが(^ ^;;。
もう一人のイイ男、リーザの旦那様ですね、ワルターの笠原さん。
ストーリー的にリーザとマルタのお話なので
(これも面白いなあと思ったの。
宝塚みたいに女性ばかりの劇団では「男」が主役になり、
歌舞伎や今回のLIFEみたいに男性ばかりの劇団では「女」が主役になる。
やっぱりよりフィクション性が高くなって、
生々しくなく観ることができるから、とかなのかしら(*^ ^*))、
あんまり出番的には多くないけど、
けっこう独白で喋ったり、しかも重要な台詞を言ってたり、
クライマックスの美味しいところも持っていったりして。
ラスト、「君の本性を見たよ!」なんて言われた日には
このあとどうなっちゃうのかしらと思ったけど、
うん、希望が持てる終わり方で、ホントよかった(*^ ^*)。
せっかく(?)のナチスの軍服なのに
スターブーツじゃないのだけが残念でしたが(笑)、
でも心に余韻の残るお芝居でした。
ベルリンの壁が壊されたとき、当時高校生だった私は、
「ああ、ブランデンブルク門が私を呼んでいる…。
現代に生きる人としてベルリンの壁の跡を触ってこなくちゃ」と
思ったことを思い出しました。
結局まだ行かれてません(^ ^;;。行きたいなあ。
fin
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