2003年4月6日 13:00開演
アドベンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ
『SWAN LAKE

於 オーチャードホール

   
話題作の名に漏れず、
私の周りでも多くの皆様が観に行っていたこのバレエ作品。
パロディでない男性版白鳥の湖ということで
私もすごく気にはなっていたのですが、
私を再追加公演のチケット取りに動かしたのは、
会社の先輩の、この一言。
「う〜ん、なんていうか、…ゲイの軍鶏だった」
――!!!
一気に私の中でこの公演を観たい気持ちが爆発しました(笑)。
果たして今日、観に行ってきたのですが。

――なんていうか、本当にゲイの軍鶏だった……!!(爆)

ストーリーの基本は、ちゃんと「白鳥の湖」だったんです。
使われてる音楽もすべてチャイコフスキーの、
とくにアレンジがされてるわけでもない、そのもの
(ああ、音楽が録音だったのはちょっと残念だったけど)。

まあもちろん、白鳥が魔法使いの呪いから解かれて人間になったところで
王子と結婚できるわけではないので(^ ^;;、
そのあたりで、王子視点にしてみたり、
いろいろと設定や振付に変化が出てきてるわけですが。

子どもの頃から女王(マーガリート・ポーター)である母の愛情に飢え、
孤独に白鳥を偏愛し、白鳥のぬいぐるみを抱きかかえ、
でも白鳥の夢を観てうなされちゃう
某国(でも、イギリスの旗を持ってる一般人がいた)の
少年王子(サイモン・カレイスコス)。
まるでルートヴィヒ2世のようです。
大きくなったら白鳥城を作っちゃうんじゃ…と私に不安を抱かせながら
育っていきますが、
青年(アンドリュー・コルベット)になってからも
マザコンぶりは変わらないし、
執事(リチャード・クルト、悪魔ロットバルトの役割だったそうです)の
口八丁手八丁に乗って
ガールフレンド(フィオナ=マリー・チヴァース)を
作ってみても上手くいかないし、
そんなガールフレンドは許さない! と母上には嫌われるし、
もう嫌だ! とばかりに酒を飲みに出かければ
パパラッチに追いかけられるし、
さんざんな気分で白鳥のいる湖に飛び込もうとするのね。

すると突然現れた、白鳥の群れ。
中でも一羽の「雄々しく神秘的な白鳥」(byパンフ)に
彼は心を奪われ、すっかりのぼせあがっちゃいます。
白鳥(ジーザス・バスター)にも愛された幻想に心捕らわれた彼は、
自殺もやめて幸せいっぱい。

そんなある日行われた舞踏会で、
王子は一人の妙に艶めかしい男(ジーザス・バスター、二役)と出会います。
母上を含むすべての女性を魅了していく彼の姿を見ると、
なんとあの白鳥に瓜二つ!
そんな男が、愛して止まない母親と踊っている…。
王子はもうどちらに嫉妬してるんだか分からない、
(ていうかどちらかというと母親に嫉妬してる!!)
錯乱して銃を取り出し、女王を撃とうとして、
間違ってガールフレンドを撃ち殺してしまいます。

精神病だと認定される王子(こんなとこもルーっぽい)。
一人寝かされたベッドに、また白鳥たちが現れます。
もちろん、心奪われたあの白鳥も。
白鳥の世界の掟を破って王子を愛する白鳥に、
他の白鳥たちは制裁を加えますが、
愛の力によって白鳥は王子と共に、
闇の彼方遠く、自由な魂安らげる場所へ、
二人きりで泳いで渡って行ったのでした――。

いやもう、本当に感動もしたの。したんですよ。
例えばクライマックス、
白鳥がほかの白鳥たちと戦って(まさしく「戦って」!)破れ、
白鳥の群が勝ち鬨をあげるシーンとか、
音楽の、あのテーマが長調になって一番盛り上がる場面ともあいまって、
涙ぐんだりもした。したの。
…でもその直後に、ベッドに倒れている王子を女王が見つけたとき、
薄い幕の向こうに、
まるで黄泉の世界へ連れていくトート閣下とシシィのように
白鳥が王子をお姫様だっこしている姿を見たときには、
「最後に来てこれか〜!!」と噴き出すのを堪えるため
口許を抑えざるを得ませんでした。スミマセン。

そこにいくまでには、いろいろな難関があったのですが、
中でも私が一番笑いたくて死にそうだったのは、
いわゆる4羽の白鳥のシーン。
それまで白鳥と王子のパ・ド・ドゥ(と言っていいのか?)なんて
なんか激しかったり「シュッ!」とか言ってる! とか思ったりしてたけど、
でも素敵だな〜、それにすごい技術だな〜、と思ってみてたのね。
そしたら、音がなくなった舞台に、
白鳥の皆さんが腿上げのような走り方で出ていらっしゃって、
それだけでも体育会系で笑いそうだったんだけど、
その数4羽。
…も、もしかして、これは? と思った直後に、
「♪ズッチャッズッチャッズッチャッズッチャッ」と例の前奏が!!
しかも、とても激しい振付で踊り狂う!
私はあまりにもツボってしまって顔を覆い、
息を止め続けておりました(^ ^;;。
おかげであのシーン、半分以上まともに観ていません…。

白鳥と王子の踊りもすごかったですね。
ああ、白鳥、綺麗だなあ、すごいジャンプだなあ、
なんて思いながら観ていると、
突然白鳥「が」王子「を」リフトするんだもの!!
王子受かい!(専門用語ゴメンナサイ)と思わず突っ込んでしまいました。
ずっと逆だと思ってたのにな〜(笑)。

白鳥の群に王子が襲われるシーンなども、
はいつくばる王子を見て「そりゃあ怖いよなあ〜、私でも逃げるね」
なんて思っちゃったし。
本当に、白鳥って凶暴なんですね。
白い軍鶏の群でした。怖かった(笑)。
だってみんな、
「シュッ!」「シュッ!」って息を吐き出しながら踊るのよ?

それから忘れちゃいけない、
ベッドに横たわる王子のもとに現れる白鳥たち。
…ベッドの下から這い出てきたり、
果てには枕の下からにょきっと手が…!!
ホラーだ、ホラーだよ!!!(笑)

あと、バーのシーンのアフロの男の人とか、
アントワネットちっくな頭にスカーフを巻いて出てきた女の人とか、
細かいシュールなところにも笑いましたが、
でも、ガールフレンドと一緒に観劇しているシーンで、
周りの人が「くすっ」っと笑ってるところでは
あんまり笑えなかった…。
(あの蝶の衣装が怖かったのもあるけど(^ ^;;。
私には絶対着れない、とか思いながら観てたから。
もし私にやれと言われたら、泣いて辞退するよ…)
自分の感性の曲がりっぷりを再確認してしまいました(T_T;。

…見終わって、本当に疲れてました。
踊ってたんじゃないのに、と思うくらい心拍数上がりっぱなし(爆)。
もちろん、ラストはスタンディングして大きく拍手もしたし、
舞台に向かって両手を振ったりもしたけど(笑)、
ホント、なんだか魂吸い取られたような気分で帰って参りました。
今期一番の作品かもしれません☆  面白かった!
本当に、いろいろな意味で常識を覆された作品でした。

あ、私の中で一つ覆った小さな常識。
今まで「日本の時代劇は満月、洋ものは三日月」という考えでいたのですが、
今回の夜の公演に出ていた月は大きな満月でしたわ。

fin