2002年2月9日 14:00開演
スタジオライフ『月の子』
於 アートスフィア

 
高校時代好きだった漫画のひとつ『月の子』(著・清水玲子)が
舞台化されると聞いて一番気になっていたのは、
漫画の中でニューヨークの街中を泳いでいた魚たちをどう表現するのか、
ということでした。

ストーリーを軽く説明すると――。
月に住む人魚三兄弟(笑)のティルト(山崎康一)、セツ(舟見和利)、
ベンジャミン(姜暢雄)。
三兄弟のうち誰か一人が、時が来たら大人となって女性化し、
地球で人魚の相手を見つけて産卵し、
まるでサケのように(笑)月に戻ってきて
子どもを育てるように運命づけられている。
彼らの母サラ(曽世海児)とその妹ミラルダ(林勇輔)が死んだことで、
三兄弟は地球へと旅立つ決意を固めるのだが…!?

これじゃプロローグしか入ってないんだけど(笑)。
実はこのあとのアプローチが、漫画と舞台では違っていたのね。

漫画ではベンジャミン中心のお話。
売れないダンサーのアート(岩崎大)が起こした交通事故、
相手のタキシードを着た少年(及川健)は記憶をなくしたらしく、
彼がジミーと名前を付けて養うことになってしまった。
…ジミーがつまりはベンジャミンなんだけど、
ジミーとアートの恋物語として漫画では話が進んでいくの。

だけど舞台では、ティルトの存在がとても大きくなっていたのです。
卵細胞を持たない(つまり女性化しない)ことを自ら知っているティルトは、
自分の願いをセツに託し、
ベンジャミンでなくセツに卵を産ませたい、と必死で想っている。
だけど、体の弱いセツはそんなティルトの努力も虚しく死んでしまった。
…ティルトは、海の底にいる魔女の元に行き、
地球の命と引き替えにセツを生き返らせ、卵を産ませることを要求する。
その条件を呑んだ魔女は、
ティルトに青年実業家のギル・オウエン(笠原浩夫)という体を与え、
地球を滅ぼしにかかる――。

もちろん、漫画でも舞台でも両方の筋は入っていたのですが。
人魚姫の物語や、当時起こったチェルノブイリ原発事故などとも絡ませた、
少女SF漫画としてはかなりの秀作と思っていたのですが、
それを演出家・倉田淳がどう料理するのかな、と思っていたわけです。
なんたって漫画は単行本で13巻だしね。文庫でも8巻。
(『トーマの心臓』は文庫2巻を3時間半で演じたのよ…)

でもやはりダイジェスト版になってしまったのは否めないかな、
と思ってしまいました(^ ^;;
ティルトを中心に持ってきたのはいいと思う。話を自ら動かす人だしね。
でも、登場人物の心の動くポイントが唐突に感じられることが多くて…。
伏線も張り切れてなかったり
(チョコレートを食べてるだけじゃ、
ラストの「チョコケーキを買って帰らなくちゃ」には繋がらないかな〜)、
あと少し丁寧に描いたり演じたりすることで変わっただろうなあ、
と思う箇所がところどころありました。
…ライフの脚本に対してこういうことを思ったのは初めてかも(^ ^;;。
私が『月の子』に対して思い入れあるからか?

でも演出は面白かった!

冒頭の「魚」――まさか本当に魚が出てくるとは!!!
大きな熱帯魚のハリボテが吊られて上手から現れたときには、
「『SHOCK』か!? これは『SHOCK』か!?」と肩を震わせました(笑)。
その後数回、上手から下手へ、また下手から上手へ、
ニューヨークの夜景と月をバックに魚が泳ぐのですが、
そのたびに私が肩を震わせていたので、
隣の席のMさんにはご迷惑をおかけしました(^ ^;;  スミマセン。

しかも、空を飛ぶのは魚だけじゃなかった!
冒頭、月面に行った宇宙飛行士(奥田努)が重力の違いを出すために
吊られながらぴょんぴょんしてたときとか、
空からすうっと現れたティルトとセツとか、
そのたびに私は「お前は堂本光一か!」と心の中でツッコミを(笑)。
楽しかったです。

ホントに、
全体的にヤオヤ舞台になっていたので見やすかったし、
ショナ(曽世海児)とベンジャミンのキスシーンもバッチリ見ちゃったし、
及川くんのジミーは「これしかない!」というくらい
背丈とか(笑)動きとかジミーだったし、
岩崎くんのアートもいい感じだったし
(ちょっとだけ、ホントにダンサーか? とは思ったけど(笑))、
藤原(啓児)さんのグラン・マもいい味出してたし、
笠原さんには悪役が似合うなあ…と思ったし、
それにしてもサラとミラルダの人魚姿には参った(^ ^;;…と思ったし(笑)、
いろいろ楽しかった。

最初のうちはサラとミラルダの
美しくなさ(笑・ファンの方ゴメンナサイ)に音を上げ、
宝塚でやってくれないかな〜、バウとかでどうだろう〜、
配役は誰がいいかな〜、なんて考えていたのですが(^ ^;;、
だんだん作品世界に引き込まれてしまいました(*^ ^*)。
でもホントにバウでやってくれないかな〜。
ジミーに山科愛ちゃん希望(笑)。えみくらちゃんでもいいかも。
…アートにリカちゃんか? 濃すぎ(笑)。

次回は『百合の伝説』だそうです。
昔々、映画観に行ったよ…楽しみ…ふふふ…(笑)。

fin