高校時代好きだった漫画のひとつ『月の子』(著・清水玲子)が
舞台化されると聞いて一番気になっていたのは、
漫画の中でニューヨークの街中を泳いでいた魚たちをどう表現するのか、
ということでした。
ストーリーを軽く説明すると――。
月に住む人魚三兄弟(笑)のティルト(山崎康一)、セツ(舟見和利)、
ベンジャミン(姜暢雄)。
三兄弟のうち誰か一人が、時が来たら大人となって女性化し、
地球で人魚の相手を見つけて産卵し、
まるでサケのように(笑)月に戻ってきて
子どもを育てるように運命づけられている。
彼らの母サラ(曽世海児)とその妹ミラルダ(林勇輔)が死んだことで、
三兄弟は地球へと旅立つ決意を固めるのだが…!?
これじゃプロローグしか入ってないんだけど(笑)。
実はこのあとのアプローチが、漫画と舞台では違っていたのね。
漫画ではベンジャミン中心のお話。
売れないダンサーのアート(岩崎大)が起こした交通事故、
相手のタキシードを着た少年(及川健)は記憶をなくしたらしく、
彼がジミーと名前を付けて養うことになってしまった。
…ジミーがつまりはベンジャミンなんだけど、
ジミーとアートの恋物語として漫画では話が進んでいくの。
だけど舞台では、ティルトの存在がとても大きくなっていたのです。
卵細胞を持たない(つまり女性化しない)ことを自ら知っているティルトは、
自分の願いをセツに託し、
ベンジャミンでなくセツに卵を産ませたい、と必死で想っている。
だけど、体の弱いセツはそんなティルトの努力も虚しく死んでしまった。
…ティルトは、海の底にいる魔女の元に行き、
地球の命と引き替えにセツを生き返らせ、卵を産ませることを要求する。
その条件を呑んだ魔女は、
ティルトに青年実業家のギル・オウエン(笠原浩夫)という体を与え、
地球を滅ぼしにかかる――。
もちろん、漫画でも舞台でも両方の筋は入っていたのですが。
人魚姫の物語や、当時起こったチェルノブイリ原発事故などとも絡ませた、
少女SF漫画としてはかなりの秀作と思っていたのですが、
それを演出家・倉田淳がどう料理するのかな、と思っていたわけです。
なんたって漫画は単行本で13巻だしね。文庫でも8巻。
(『トーマの心臓』は文庫2巻を3時間半で演じたのよ…)
でもやはりダイジェスト版になってしまったのは否めないかな、
と思ってしまいました(^ ^;;
ティルトを中心に持ってきたのはいいと思う。話を自ら動かす人だしね。
でも、登場人物の心の動くポイントが唐突に感じられることが多くて…。
伏線も張り切れてなかったり
(チョコレートを食べてるだけじゃ、
ラストの「チョコケーキを買って帰らなくちゃ」には繋がらないかな〜)、
あと少し丁寧に描いたり演じたりすることで変わっただろうなあ、
と思う箇所がところどころありました。
…ライフの脚本に対してこういうことを思ったのは初めてかも(^ ^;;。
私が『月の子』に対して思い入れあるからか?
でも演出は面白かった!
冒頭の「魚」――まさか本当に魚が出てくるとは!!!
大きな熱帯魚のハリボテが吊られて上手から現れたときには、
「『SHOCK』か!? これは『SHOCK』か!?」と肩を震わせました(笑)。
その後数回、上手から下手へ、また下手から上手へ、
ニューヨークの夜景と月をバックに魚が泳ぐのですが、
そのたびに私が肩を震わせていたので、
隣の席のMさんにはご迷惑をおかけしました(^ ^;; スミマセン。
しかも、空を飛ぶのは魚だけじゃなかった!
冒頭、月面に行った宇宙飛行士(奥田努)が重力の違いを出すために
吊られながらぴょんぴょんしてたときとか、
空からすうっと現れたティルトとセツとか、
そのたびに私は「お前は堂本光一か!」と心の中でツッコミを(笑)。
楽しかったです。
ホントに、
全体的にヤオヤ舞台になっていたので見やすかったし、
ショナ(曽世海児)とベンジャミンのキスシーンもバッチリ見ちゃったし、
及川くんのジミーは「これしかない!」というくらい
背丈とか(笑)動きとかジミーだったし、
岩崎くんのアートもいい感じだったし
(ちょっとだけ、ホントにダンサーか? とは思ったけど(笑))、
藤原(啓児)さんのグラン・マもいい味出してたし、
笠原さんには悪役が似合うなあ…と思ったし、
それにしてもサラとミラルダの人魚姿には参った(^ ^;;…と思ったし(笑)、
いろいろ楽しかった。
最初のうちはサラとミラルダの
美しくなさ(笑・ファンの方ゴメンナサイ)に音を上げ、
宝塚でやってくれないかな〜、バウとかでどうだろう〜、
配役は誰がいいかな〜、なんて考えていたのですが(^ ^;;、
だんだん作品世界に引き込まれてしまいました(*^ ^*)。
でもホントにバウでやってくれないかな〜。
ジミーに山科愛ちゃん希望(笑)。えみくらちゃんでもいいかも。
…アートにリカちゃんか? 濃すぎ(笑)。
次回は『百合の伝説』だそうです。
昔々、映画観に行ったよ…楽しみ…ふふふ…(笑)。
fin
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