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読書記録2000年4月


『砂の城』
遠藤周作(主婦の友社)/小説/★★

初めて読んだ遠藤周作の作品。様々な体験を通して青年期に描いていた夢や希望、「美しいもの、善いもの」が砂の城のように崩れていく、というストーリーなのだが…。

親友の事件はまだしも、展開にあまりにも不自然な偶然が重なり説得力が無い。他にも書きようがあるだろうに。もっと深い小説と思っていただけに、残念。


『木霊』
北杜夫(新潮社)/小説/★★

『幽霊』の主人公のその後。

幼い頃母親をああいう形で失った主人公が、幼い子供がいる人妻と不倫の恋に落ちるとは…。別れ方も大人で、『幽霊』の幼年期、青春期の純粋さが強く印象に残っていた私にはなんだか不思議な感じがした。でもそれを理由にドイツへ留学、てとこが純粋と言えば純粋なのかな。

ドイツで、昔読んだ小説、トーマス・マン著『トニオ・クレーゲル』を片手に旅し、父の軌跡を訪ね歩き、自分も物書きとして目覚めていく過程はほぼ実話だろうか?著者はどれほどトーマス・マンの影響を受けているのだろう。どんな文学者か興味が出た。『幽霊』と同様、場景の描かれ方が綺麗だった。


『幽霊』
北杜夫(新潮社)/小説/★★★★

自叙伝的な小説。

全四章の一章、幼年期が傑作。近頃ほとんど思い出すこともなかった幼い頃の「暗」の面をかなり鮮明に思い起こさせてくれた。明るく楽しい思い出も大人になると薄れるものなのに、22歳で書いた小説だそうだが、その年齢でこの「暗」の描写は凄い。青春期の純粋すぎるものの考え方は、あまり理解出来ない部分が多かった。幼年期の心理描写、自然の描写の美しさに感動。


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