とある日常のヒトコマ

小悪魔
<悟浄×悟空>


ふと思い出したので聞いてみた。
「なぁ。三ちゃんに告られた?」
「……まだだけど」
緩くこちらを振り向いてしばしの間の後悟空はそう答えた。
「つーか、何だよイキナリ」
「イヤ、最近お前らの雰囲気が変わった気がしたからさ。ついに三蔵が告ったのかなーと」
「告られてはいねぇけど、この間ヤった。だからじゃね?」
「ふーん」
成る程ねぇ。まぁ、あの三蔵がそう簡単に告るハズもないか。てか、告るよりヤる方が先たぁな。ま、こんな店だから身体のが手に入れやすいんだケド。
「てかさ、集中しろよ悟浄」
「ヘイヘイ。仰せのままに」
暢気に話なんぞしてたら悟空に怒られた。まぁな。今俺ら普通にセックス中だしな。ソファーに膝をついて背凭れにしがみついてる悟空を後ろから犯してる状態という。完勃ちしてるチンポを挿れてるの俺より、突っ込まれてるのに動きを止められてるコイツのが辛いだろう。
緩く腰の動きを再開させると、すぐに合わせるように悟空も尻を押し付けてきた。
「つか、三蔵ってお前のコト好きなんじゃねぇの?」
気に入ってるとかじゃなく恋愛感情的な意味で。俺にはそう見えてんだけど、普通にヤったとか言ってるトコみると、コイツそれに気付いてねぇのか?
「好きっしょ。アレは多分マジだな」
あら、気付いてたのね。つか、気付いててヤるってことは。
「お前も?」
「へ?三蔵のコトは好きだけど?」
「じゃなくて。恋愛感情かって聞いてんだよ」
この天然め。これがマジボケだから力抜けるわ。
「キレイだなーとは思うけど、今のところそれだけかなぁ」
「それでマジ惚れしてるヤツとヤるなよ……」
三ちゃんかわいそー。好きなヤツとヤれたら期待するだろーに。
「ケドさー、告られたなら誘われても断れるけど、何も言われないで流れでそうなっちゃったら仕方ねーじゃん。こんな店だしさ」
「あー、そりゃなぁ……」
確かに先回りしては断れねぇか。コイツ一応店員だしな。
「そーいや、お前は何でココでバイトしてんの?」
「へ?何だよ突然」
「だってよ、客ならこーゆー店が気に入ったら通うし、イヤなら来ねぇじゃん?けどバイトだとそうもいかなくね?ヤな客ともこーゆーコトしねぇとだろ?」
こーゆーコトを示すように奥まで突き上げれば、悟空の背がキレイに仰け反った。コイツは俺のコト、嫌いじゃねーだろうけど特別好きってワケじゃない。けど、誘えば拒まない。これも仕事の一部なんだろう。なんて思ってたら、悟空が潤んだ瞳で俺を見た。
「俺の仕事はキッチンだけだぜ。セックスの相手はしなくても捲兄ちゃんには怒られないよ」
「え」
「確かに時給スゲー良いけど、それはこういう店だから見たり聞いたり黙ってなきゃいけなかったりするせいだし」
「けどお前拒否ったこと無くね?」
「悟浄がたまたま見てないだけ」
「そーか?俺断られたことねぇよな。拒否る基準あんの?」
「好きじゃないヤツは拒否る。つか、ちゃんとヤらないなら抜けよ」
「あ、ワリ」
苛立った声に思わず間の抜けた謝罪をしてしまう。取り敢えず悟空の腰を掴んで真面目にイくために動きを激しくする。しかしすぐに悟空の言葉が脳まで到達して動きを完全に止めて悟空の顔を覗き込んだ。
「なんか今の、俺のコト好きって聞こえたんだけど?」
「……ぁ?」
緩く溶けた顔で俺を見た悟空は、潤んだ瞳で俺を睨み付けた。
「も……好きだよ。好きだから早くイかせろよ!」
そんな顔でンなコト言われて無反応でいられるほど枯れてない。しかもねだるようにケツ振って、ナカがヒクヒクしてるしよ。身体を起こして悟空の腰を掴み直し、今度こそ真面目に腰を動かし始めると直ぐに嬌声があがり始める。
つか、お前最中に好きとかそんな簡単に言ってんなよ。恋愛感情でだって勘違いされんぞ。コイツのコトだから単純に気に入ってるってだけだろうに。こーゆー無自覚なヤツ程タチが悪い。まさに小悪魔ってカンジ?


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