水島諸島のニベ

平成16年9月17日〜18日

 

 今年も気がつけばすでに9月。例年、夏場は仕事が忙しく、なかなか思うように釣行できないのだが、今年は特にひどかった。近年、盛夏から秋にかけてはコロダイ、タマミといった黒潮の寵児を求めて太平洋へというのがパターンなのだが、今年は常に南海上に台風が居座っているような状況で、数少ないチャンスをことごとく潰されてしまった。今回はコロダイ狙いのラストチャンスだと気合いが入っていたのだが、またもや海況は悪そう。さんざん迷ったが、ここは安全策をとり、なおかつ2ヶ月ぶりの釣行ということもあり、いちばんアブレが少ないだろう瀬戸内のニベを狙ってみることにした。この時期はニベ釣りの最盛期であり、群れさえ回れば爆釣の可能性も十分。ただ唯一の不安は、私自身ニベ狙いの釣りはほとんど経験が無く、ポイントも釣り方のコツも確固たるものを持ち合わせていないということ。ということで、困ったときのスーパーアドバイザー、昨年瀬戸内でニベをたくさん釣ってきたことのある伝説の釣り師氏に教示を仰ぐ。渡船のシステムやエサのことなど基本的な情報を入手できたところで、西を目指す。行く先は水島諸島だ。
 夕方5時の渡船でポイントへ。島の北西側にせり出した三角州のような砂浜に降り立つ。長い方が40メートルくらい、底辺が10メートルくらいの二等辺三角形といった感じの場所だ。三角の先っぽ側の対岸に浮かぶ小島との水道が本命ポイントのようだ。
 瀬戸内は潮の干満が激しい。今日は大潮の後の中潮であり、満潮時にはかなり潮が上がってきそうだ。船長からもそのことを注意された。砂浜のゴミ
の状態を見てみると、こんもり丘のようになっている砂浜のいちばん高い場所意外は波が洗った形跡がある。本当にここまで潮がくるのか?正直、半信半疑だが、念のため道具はゴミが上がっている場所より上に置いておく。
 夕闇がせまりつつあるので急いで仕掛けをセット。5本の竿にマムシとユムシで投入開始。潮は干底間近であるが、対岸の小島との水道へと吸い込むように激しく流れている。左方向への流れだ。先端部から左に流すように釣り座を取れれば探り易いのだが、三角州状の浜のいちばん尖った部分周りには取り込みに影響しそうな磯が露出しており、さらに浜の左側は磯に挟まれるような感じでわんど状になっていて、左右のレンジがほとんど取れない。少しでも流れると根掛かりしそうだ。よって釣り座を浜の右側に取り、右方向に投げた仕掛けを左方向の水道へと流す作戦に出る。しかし、流れは想像以上に激しく、先端の磯に巻かれてのラインブレークが多発。ひとつのトラブルがふたつのトラブルを生むという展開で、なかなか打ち返しの頻度が上がらない。三脚の置き方をいろいろ試しつつ、仕掛けをうまく流す方法を模索しながらの釣りとなった。8時頃、40pほどのニベがヒットし、さあ、これからと期待を膨らませるが、アタリこそ散発であるものの20pほどのシログチと35cmほどのセイゴばかりで本命のニベはなかなか回ってこない。ただ、このポイントは、潮が引きに入り右へと払い出した時の方が明らかに探り易いはず。潮が変われば状況も変わるはずと信じてその時を待つ。
 10時を過ぎたあたりから急激に潮位が上がり始めた。そのペースは驚異的で、一回投げ返すたびに三脚の位置を1メートル後退させるといったところ。30分で数メートルも砂浜が小さくなっていく。11時頃、潮の流れが止まる。しかし、竿先には変化無し。依然として潮位は上がり続け、道具を置いてあるところまであと2メートルあるかないかのところまできた。そろそろ食ってくれないとさすがに・・・と焦りを感じ始めた頃、潮が右へと流れ出し、水道部から払い出すみごとなヨレが生じた。そして、その変化を合図にしたように、真夜中の宴が幕を上げる。日付が変わった頃から、ニベの大爆発が始まった。とにかく5本の竿のどれかにアタリが出ている状態。時にはドラグを鳴らすだけでは間に合わず、竿尻を持ち上げる強烈なアタリを見せるものもいて笑いが止まらない。水深が無いので魚の引きもダイレクトに楽しめる。正直、ニベがこんなに引きの強い魚だとは思わなかった。投げ返すうちに魚の溜まり場が絞れていき、さらにペースが上がる。潮はさらに高くなり、じりじり後退させた三脚はもはや荷物のすぐ横という状態。これ以上後退させるには、荷物全部を動かさないといけないのだが、これだけ釣れている状況ではその時間さえ惜しい。やがて三脚の足元は水没し、足のくるぶしあたりまで水に浸かっての釣りとなったが、そんなこともおかまいなし。なにか、潮流と一体となったような感じで、不思議なシチュエーションだ。
 3時頃、潮が引き、水道部からのヨレが弱くなるとともにアタリは徐々に遠のいたが、その後明るくなるまでの実質5時間でニベの46cm〜35cmを20匹、ハネ53cm1匹という、これまでに経験したことの無い密度の濃い釣りを体験することができた。



釣果 ニベ46.2p〜35cm 20匹、ハネ53cm〜30cm10匹、シログチ多数、チヌ

              

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