三陸のナメタガレイ

平成15年6月28日〜29日

 今年になってろくに竿も振っていない。担当する仕事が増え、責任も重くなった。とにかく連休を取るのが困難な状況が続き、気が付けばほとんどカレイの顔を見ることも無く春シーズンを終了。遠征計画も次々とキャンセルをせざるをえないことが続き、キャンセルした飛行機の払い戻し手数料もウン万円。ストレスを通り越して、もう投げ釣り師として終わってるんじゃないかと焦る毎日が続いた。
 そんななか、6月の最終の土曜から月曜は潮も良し、シーズン的にも申し分なし、しかも仕事も1週だけ谷間になりそうということで半年前から遠征を計画。しっかり飛行機も押さえていた。目指すはアイナメの50pオーバー。釣れそうでなかなか釣れてくれない憎いヤツである。しかしである。またもや月曜が会社の用事とバッティング。もうどうにでもなれである。失意のうちに航空券をキャンセルし、矛先を金曜出発の隠岐へと変更しようとしていた矢先、クラブの関東支部の面々が三陸へ向かうという情報。これは渡りに船と木下氏に連絡をしたところ参加OKとのことだったので、お言葉に甘えさせてもらうことにする。
 金曜の夜に東京出発ということで、TサーフのK会長とともに大阪を昼過ぎに出発。木下氏、車谷副会長と順次合流して、一路三陸へと向かう。今回は木下氏が情報をキャッチしてきた新規の渡船で鯔ヶ崎近くの磯へと渡るとのこと。竿がほとんど入っていない可能性大とのことで期待十分、不安少々。ロングドライブの末、出港地となる重茂には午前4時に到着。大阪を出てから16時間。半端じゃなく遠い(みなさん、運転ありがとうございました)未知の海へと繰り出す船はスピードもあってなかなか快適。船頭の磯づけの腕も荒波に揉まれているとあってグッドだ。私と車谷氏は鯔ヶ崎灯台を拝む離れ磯へ下ろしてもらう。さっそく車谷氏は低い足場から沖の小磯との水道へとキャストを開始。私は時折駆け上がってくるウネリにビビったこともあり、足場の高い壁の上から磯際中心に狙っていくことにする。しばらくアタリがなく、不安がよぎり始めた時「アアーッ」という車谷氏の声。50p級のアイナメが磯際で針外れしたらしい。
 思い出した頃に小アイナメという三陸らしからぬ展開にシビレはじめた頃、ようやく私の竿にも本命のアタリ。緩めたドラグがシーッと軽快に滑る。小気味良い首振りを楽しみながら抜き上げたのはアイナメの46p。狙いの50pには遠く及ばないまでも、これでも自己新記録。続いて同型を追加。ようやくエンジンがかかってきた。
 陸側の小さな水道に捨て竿を投入し、釣座に戻った瞬間に異変が起こる。ドラグがエイのアタリのようにギャーキャー引っ張り出され、それでも間に合わずに磯に立てかけてあった竿がダンスしまくっている。大慌てでアワセをくれると、とてつもない引きが襲ってきた。「デカイ、これはデカイ」思わず叫ぶ。しかし、振り出した雨で着用しているフードのためか車谷氏は気づいてくれない。底を這い首を振る、数年前に隠岐で上げた70cm級マダイに匹敵する引きだ。丁寧かつ弱腰にならないようリールを巻く。しかし、3度目の突っ込みで悲劇が訪れた。フッと戻る竿先。アッ、バレた。回収してみると信じられないことに、ビッグサーフ15号がポキリと折れている。これまで数々の大物との出会いを演出してくれた全幅の信頼を置いているこの針が、この局面で、まさか。ショックでしばし呆然。
 意地なって大物がヒットしたポイントに集中砲火を浴びせるが、バラシの影響か反応が失せた。こんな日はこれで終わりそうな気がする。車谷氏も朝のバラシ以降アタリが途絶えて元気が無い。薄い電波をかいくぐり、K会長、木下氏コンビは50pオーバーのアイナメをキャッチしたとの情報が入ってくる。どうやらこちらの2人はツキに見放されてしまったか。
 1時間ほど経っただろうか。ようやくのアタリ。しかし、先ほどの強烈なアタリとは比べ物にならないほど小さなアタリだ。これには車谷氏も気付いていて様子を見ている。やりとりをしながら「さっきのに比べれば屁でもないですわ」とリールを巻く。てっきり40pジャストぐらいのアイナメだと思っていたが、水面下の魚体が想像と違う。白くて平たいアイナメ??魚がクルッと反転して赤黒い背中が見えて状況が掴めた「ナメタや」覗き込んでいた車谷氏からタモを用意するので待つようにとの指示。足場が高いので魚の大きさが正確に分からないが、40pぐらいか。やっぱりナメタは別格。この大きさでもタモなんやなあなどと考えながら待っていた。しかし、タモに収まった魚を見て口があんぐり。以外にデカイ。47cmの磯ナメタ。その他のカレイの自己記録を大幅更新するとともに、私にとっては初のナメタガレイ。ここまできた甲斐があったといえる納得の1匹だ。一方、このアタリ、引きでこの大きさということは、さっきバラした魚はどれほど大きかったのかと思うとさらに悔しさが増してきた。
 結局この日はこれにて打ち止め。納竿間際に車谷氏も50pアイナメをゲットし、お互い朝イチの借りを少し返したところで雨が強まり、午後2時ではあるが早仕舞とすることにした。
 さて、このナメタくん。宿に戻ってから刺身でいただいたがエンガワは絶品の美味さ。この時期のナメタは季節はずれということで、値段も下がるらしいが、どうしてどうしての味。旬の頃にはどれほど美味いのだろうか。想像もつかないほどだった。

 2日目も雨。ウネリが一段と高くなり。鯔ヶ崎周辺の磯は渡礁不可能。なんとか渡れる場所を探してもらい木下氏と渡るが、小アイナメさえ少ない状況。本来ならポイントになりそうな場所がウネリのためやれないのも痛い。三陸に通いなれた木下氏によると、底の状態も大アイナメには不適とのこと。あきらめ気分で時間つぶしモードの釣りに突入。これでは釣れるはずが無い。木下氏はウネリが強烈に駆け抜ける磯と磯の水道を丹念に探っているが35cm級のアイナメばかりとのこと。
 一方、この日気を吐いたのが別磯に渡った車谷氏。55cmを軽く超えるかというアイナメをバラしたのは残念ながら、50pオーバーを多数釣っておられた。K会長も昨日に続いての50pオーバー。明暗がはっきり出てしまうのも新規開拓の楽しみでもあり苦しみでもある。計り知れない可能性をみせてくれた三陸の豊かな海に会えたこと、久しぶりに仲間たちと大物に挑戦できた充実感に感謝しつつも、50pアイナメを、そして得体のしれないモンスターをキャッチできなかった悔しさを感じながら、再戦を誓いつつ帰路についた。

2日間の釣果 ナメタガレイ47.0p、アイナメ46.0cm、45.2pなど10匹ほど、ムラゾイ2匹

              

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