相模湾のシイラ
平成13年8月25日〜27日 by一本釣り師
8月24日決戦前夜
今年も夏がやってきた。蝉が鳴き始めるとシイラの強引が懐かしくなる。以前、東京支社に勤務していたころ、7月、8月になると、台風でも来ないかぎり毎週のように船上でルアーを引いていた。とにかくこの釣りはやみつきになるほど面白いのである。メーターオーバーのシイラと格闘は言うに知れず、夏の海を魚の群れを探して走るその雰囲気だけでも最高である。
今年も「銀座楽釣会」のメンバー4人が集まることになった。この会は私が東京に赴任していた頃、よくシイラ釣りに行っていた仲間で結成しているもので、恒例となりつつある夏合宿も今年が2回目。現在、メンバー中3人は東京を離れており、全員が集まれるのも年に一度が精一杯である。それだけに待ちわびた週末だ。新横浜駅でメンバーのひとり横山氏と合流。今晩の宿となる田苗氏の会社の社宅へと急ぐ。ここで菅原氏も含めた4人が勢揃い。ビールを飲みながらの釣り談義が始まる。なにせ1年ぶりであるから話は尽きない。菅原氏は北海道に住んでいて最近75cmのイトウを釣り上げられた。写真の美しい魚体に一同感心。田苗氏は鳥取に住んでいて、最近はオフショアでのシイラ、青物を中心に釣りをエンジョイしている様子。横山氏は今回のため?車を新調し準備万端。気が付けば3時になっていた。出船は6時なので5時には出発だ。各自大漁を夢に見ながら床についた。
8月25日一日目
心躍る一日目。逗子の海岸の風景が懐かしい。港に着くと、我らがマザーシップ・まさみ丸の姿があった。そして鶴三船長の笑顔。いよいよだなあと感じる。霧でやや見通しが悪いものの、雨の心配はなさそうである。海上は若干のウネリが残っているが、これぐらいなら凪のうち。いい釣りができそうである。午前6時定刻通りに出船。土曜にもかかわらず乗船したのは12名ほど。左舷のベストポジションを確保し海原を凝視する。この釣りは魚の群れを自分で探すことも楽しみのひとつなのだ。出船して20分ほどで船が速度を緩めた。トリヤマである。そして期待のファーストキャスト。しかし、ミノーには反応がない。ルアーをビバパレードに変えて得意の超早引き。すると一発で乗ってきたが手ごたえが弱い。上げてみるとメジ(マグロの幼魚)の幼稚園サイズ。秋にはこれが大きくなっていいファイトを見せてくれるのだが・・・。ダメな群れにはさっさと見切りをつけるのもこの釣りの特徴。船は沖を目指して走っていく。
1時間ほどで再び船がスピードを緩める。大きなトリヤマだ。途中何度かトリヤマをやってみたが、
今日はシイラが付いているケースが多い。普段ならカツオ、メジ狙いでジグをチョイスするのだが、ここは迷わずミノーを選ぶ。K-TENミノーのサバカラー。私とシイラの出会いを演出してくれる、全幅の信頼を持てるルアーだ。このナブラはシイラと読んだ。各自が思い思いにキャスト。そして船上は一気にフィーバーする。やる気のあるシイラが縦横無尽に走り回る。しかも下で70pという大型揃いの群れである。たちまちほぼ全員にヒット。私にも雄のシイラがヒット。2度3度とジャンプを繰り返す。型もメータークラスである。慎重にやりとりをしタモに収まったのは全長100pジャスト。6年ぶりのメーターサイズである。写真を撮ってもらおうと周りをみると、仲間たちもヒット中もしくはメーターオーバーの魚影に向けて必死でキャストの最中。これでは声をかけにくい。一匹釣ったこともあってみんなの邪魔にならないように船の後ろ側に退き、時間つぶしでキャスト・・・のつもりがまたもやガバッと来た。今度は雌なのでジャンプはしないがこれもなかなかの型のようだ。船の真下にきてからの踏ん張りはメータークラスの証。ここで無理に引っ張るとフックが伸びてしまうことが多い。ゆっくりとやり取りを楽しんでランディングしたのは全長105cm。いきなりメーターが2本。ロケットスタートである。残りのメンバーも80〜100pを何本か取り込んだようだ。なかでも横山氏は100p級のシイラを上げたが「ジャンプもしなかったし、なんとなく上がってきた」と不満顔。贅沢な不満であるが、確かに今日は「釣られたことに気が付いていないシイラ」が多かった。やっぱりシイラの魅力はファーストランでみせるジャンプと疾走。気持ちは良く分かる・・・。その後も80pアベレージぐらいの群れにぽつぽつと当たり、各自10匹ほど仕留めることができた。これだけ楽しめれば十分。みんな笑顔である。好調すぎて明日以降が怖い・・・。
8月26日二日目
昨日に続いて今日も凪。しかし空が怪しい。今にも降りだしそうな雲行きだ。そし
てついにパラパラときた。急いで船室に避難。シイラ釣りはカンカン照りの元でやるのが魅力なのに。これでは戦意喪失だ。不思議なものでこんなときにはなかなか群れにも当たらない。時折やる気半分のペンペンが見えるだけ。ちょっとやばい感じだ。しかし、8時ごろから急速に天気が回復。それと同時に魚が浮きはじめた。9時ごろ大きなトリヤマに遭遇。近づくと流れ藻の塊がある。「でかいのいるぞ。やる気あんぞ」と鶴三船長の声がとぶ。期待を込めたキャストにいきなりバイト。しかし竿先がふっと軽くなる。急いで回収するとPEラインが途中で切れている。細かいキズでもあったのか。周りはメータークラスが次々にヒットして戦場と化している。船尾の方では誰かが掛けた150pはあろうかというシイラがジャンプしている。メインのジギングロッドが使用不能になり、もう一度ラインシステムを組むか、予備のシーバスロッドでやるか迷ったが、こんなチャンスはそうは無い、少しでも時間をロスしたくないと考えて、シーバスロッドを手に取る。どこへキャストしようかと海面を見ていると、船尾でヒット中の巨大なシイラの後ろに、もう一匹大きいのが付いてきているのが見えた。反射的にそちらへキャスト。トゥイッチを入れながらリトリーブするとがばっときた。そして2度、3度とジャンプ。でかい。メーターは確実にクリアしている。しかし手にしているのはシーバスロッド。強烈な走りにこらえることすらできない。スプールが今まで聞いたことがないほど激しい悲鳴を上げる。指で止めようとしてスプールを触ってびっくり。ラインが解けるのではないかと思うぐらい熱を持っている。仕方なく魚の走る方向へ回る。ほとんどラインを回収できないまま、船を一周してしまった。5メートル巻くときっちり5メートル戻す。いつまで続くんだこのファイトは。後ろで掛けていたシイラはようやくランディング体勢のようだ。巨大な魚体がタモに収まり船上へ・・・・あっ、タモが抜けた!あまりの重さに網が破れたようだ。こちらにかかっているのもそれと大差ないサイズ。しかもタックルは60cmぐらいのシイラで丁度いいライトタックル。汗が滝のように吹きだす。暑い。息が切れてきた。誰か水を持ってきてくれないかな。いっそここで糸を切ったら楽になるかな。ついつい弱気になってしまう。さすがに魚も少し弱ってきたようだ。沖へ走るのを止めた。しかし、今度は真下へ潜り込み動かなくなった。メータークラスになると必ずこういうこう着状態が訪れる。そしてゆっくりと円を描くような動きをみせるのだが、ラインが出ていったままなので、船の反対側へ行ってしまう。船底にラインが擦れないよう、海に半分身を乗り出し精一杯ロッドの先端を海中に突っ込み反対側へ回る。まるで運動会のように船の上を走り回る。そろそろ勝負をかけないといけないのは分かっているがラインはPE3号。無理はできない。というか無理をするだけのスタミナもない。頭がクラクラしてきた。こうなったら気合だけである。どのくらいたったのだろうか。ようやく黄色の警戒色を出したシイラの姿が見えた。しかし、もう少しと思うとまた突っ込み糸を出していく。「頼む、おとなしくしてくれ」しかし敵も必死である。何度か同様のやり取りのあと、ようやく魚が浮いた。タモが入る。終わった。全長130cmの雄のシイラ。尾の付け根まででも100pを越えていて正真正銘のメーターオーバーである。あわてて写真を撮りリリース。そして腰をおろしたままペットボトル2本を一気飲み。しばらく動けなかった。あとで聞くと30分近くやっていたらしい。
このあとも納竿間際にいい群れに当たり、船中ほとんどの人がメータークラスを上げた。私もメーターオーバーをヒットさせたが、急いで組んだラインシステムが甘かったのか、ここ5年ほど抜けたことの無いオルブライトノットが抜けてバラシ。それでも今日の釣果には大満足。合宿二日目も好調のままに幕を閉じた。
8月27日三日目
ビッグファイトは体にダメージを残した。ヒザに激痛が走り、アイシングをするハメにな
ってしまったのだ。揺れる船上で踏ん張りつづけファイトをしたのだから仕方が無い。体はガタガタである。天気は昨日よりさらに怪しい。出船直後に大粒のスコールが襲ってきた。こういう日は魚も浮いてこない。漂流物も固っておらず手の打ちようが無い状態。天気は徐々に回復してきたが、海面が若干波立っていて、潮目もはっきり分からない状態。たまに遭遇する流木にも何も付いていない。鶴三船長も昨日、納竿間際に遭遇した流れ藻を必死で探すが、かけらも見つからない。たまに当たる群れも、まるでやる気無し。何らかの理由で活性が下がっているようだ。諦めていたところ、切り株のような漂流物を発見。一投目。チェイス無し。ここにもいないのか・・。二投目。漂流物の手前でルアーの近くに大きな背びれが浮いたかと思うと、次の瞬間にオスのシイラが横っ飛びでバイトした。大きな雄のシイラだ。しかし、奴は釣られたことに気が付いていないのか、ジャンプもしなければ走ることもしない。ただ踏ん張って時折じりじりと申し訳程度に糸を引き出すだけ。昨日と違い、手にはトリバリー仕様のジギングロッド、形勢は圧倒的に有利だ。それでも無理をせずゆっくりとやりとり。船を1周したあたりでランディング体勢に入るが、ここでやっと釣られたことに気がついたか、一気に20メートルぐらい走る。結局は昨日と同じように船を3周ほどするはめになった。ようやく寄ってきたと安心したところでアクシデント。腹側のフックが口に、尻尾側のフックが頭に掛かっていたのが、頭のフックが外れたのだ。長時間やりとりをしたシイラは、ランディングの時にはそう暴れるものではないのだが、こいつは強烈なファイトをしなかったせいか首を振って抵抗する。やっとのことでタモ入れに成功したが、直後にもうひとつのフックも外れた。まさに紙一重のランディングである。全長133.5p、11`。ルアーフックを点検すると、最後まで掛かっていたトレブルフックの2本が折れて1本が伸びていた。
この頃からナブラが出始め、次から次へとトリヤマを攻めるがなかなかヒ
ットに至らない。大物を仕留めたこともあって後方待機を決め込んでいたが、この状況に少々痺れてきた。トリヤマに到着直後、舳先が一人分空いている。我慢できず「お邪魔」と声をかけて割り込みジグをキャスト。一発で乗ってきた。このぶるぶるという感触はうれしいあの魚か。予想通り、浮いてきたのは本ガツオの良型。いいオカズができた。再び後方に回って様子をうかがっているとナブラが横にぶれて、私の前方にやって来た。チャンス。ナブラの頭を押さえる形でルアーが入水した。と同時にドラグが唸りをたてる。一瞬鳥が引っかかったのかとも思ったが、すべて飛び立ったあともラインは海中に突き刺さっている。そして次の瞬間今まで体験したことの無いような突っ込み。マジでリールが壊れるのではないかという恐怖を感じるほどにスプールが滑る。瞬く間に糸が引き出され、残りがわずかになった。たまらず船長にアシストをお願いする。こんなことは初めてだ。何が掛かったのだろう。幸い、魚がこっちへ向かってきたようで、だいぶ糸がストックできた。船尾の方に回りこんだ魚に合わせて後ろへ走ったその時、何かが跳ねた・・・・「サ・メ・か」。そう、2メートルはあろうかというサメがヒットしてしまったのである。それにしてもすごい馬力だ。でもサメと分かった以上あまり時間もかけられない。ドラグ締め付けてラインブレイク覚悟の勝負に出る。ところがこれだけ締めてもラインが出て行くのだ。ギャラリーが集まってきた。こうなったら寄せるしかないだろう。竿のパワーにものをいわせ力任せのポンピング。徐々に抵抗が弱まってきた。そしてついに寄せきった。暴れるサメとの記念撮影。ギャラリーから拍手が沸く。危ないのでランディングせずに糸を切ったが、間違いなく私がこれまでに掛けたなかで最大の生命体であった。
これで3日間の合宿も終了。全員がメータークラスとのファイトを楽しんみ、満足顔。久しぶりに腹の底からファイトし、笑い、はしゃいだ楽しい釣行となった。来年も夏合宿を行うことを約束し、それぞれに帰路についた。
3日間の釣果
シイラ メーター級4匹(全長133.5、130、105、100p)、その他約20匹
サメ2メートル級
本ガツオ2匹、
各自120p〜50cmのシイラ30匹ほど。外道としてマツダイ、オキサワラ、オキアジ、カンパチ、メジが混じった
銀座楽釣会・夏合宿フォトギャラリー
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| 左から菅原氏、田苗氏、私、横山氏 | サメとのファイトの合間にハイポーズ |