大里海岸のコロダイ
平成13年8月11日〜12日 by一本釣り師
私は大会が好きだ。随分前から推理を巡らし、ああでもない、こうでもないと作戦を練る。そして当日。わくわくしながらの第一投。うまくいけば、してやったりと安堵の時を迎えることができる。そして結果が出なければ自分の未熟さを反省し、次こそはと決意を新たにすることになる。今は携帯電話という便利なものがあるので、リアルタイムで他のポイントの情報が入ってくる。誰が釣った、誰が苦戦しているというやりとりをしながらの釣りは、まるで隣り合わせで釣りをしているような臨場感を演出し、競技としての大会をさらに楽しいものにしてくれる。のんびりとひとりで釣ることを否定するわけではないが、競うことで釣りに対する真剣さが違ってくるし、なにより仲間たちとわいわいと釣るのは非常に楽しいものだ。
ところが、この春に職場が変わり、大会への参加を諦めざるをえないことが多くなった。単独釣行も増えた。やっとのことで参加することができた全日本キスも、仕事の都合で明石でのエントリーになり、エサトリ地獄になすすべなく敗れ去った。秋までリベンジの機会はないものと思っていたところ、レインボーカップ・夏の夜釣り大会が開催されるとの通知があった。レインボーカップは私の所属クラブ、レインボーキャスターズのクラブ例会で、年に数回開かれる。春は大物釣り、秋はキスの数釣りというのが例年のパターン。しかし当クラブは大所帯のうえ、大物釣り、キス釣り、キャスティングと各分野にエキスパートが多く、上位に食い込むのは至難の業である。今回は対象エリアを四国にまで拡大し、夜釣りで大物を狙うとのこと。ここのところ疎遠になっていたクラブの仲間たちにも会えそうである。たいへん楽しみだ。
8月11日、一路徳島県の大里海岸へと向かう。私ははじめての釣行となるが、今年はコロダイも随分出ているようなので期待が高まる。昼食のためのワンストップも含めて神戸から4時間30分あまりで到着。先行部隊のばんちさんが出迎えてくれる。まだ日が高いためか釣り人の姿はまばらである。ばんちさんの釣り座の左側は根掛かりがきつく、そちらへ投げ込んで既に25pクラスのガシラを2匹上げたとのこと。その右側には大阪から来たサーフの方が陣取っている。ベタ凪なので波の盛り上がりで底の状況を推理するのは不可能であるが、潮目が左沖から差し込んでおり、大阪のサーフの方の釣り座の右側で海岸線と平行に向きを変えさらに右の方へ走ってる。私は潮目が向きを変えているあたりに荷物を降ろした。同行のT田は私の右で荷をほどいている。準備をしていると、後発隊のM会長、K副会長、O野さん、N嶋さんが到着。K副会長はばんちさんの左側のシモリがあると思われる場所で、他の3人はT田のさらに右側に準備をはじめる。
仕掛けを投入し、日が暮れるのを待っていると早くも左隣のキャスターが竿を曲げている。「大きなエイかな?」と思って見ていると、突然竿先がゴンゴンゴンと絞り込まれた。「これは本命では!」ばんちさんもその様子に気づいたらしくこちらに歩いてくる。上がったのはコロダイの60cm級。「こんなん本当に釣れると思ってなかったからうれしいわ」と相当に感激されている様子だ。コロダイの場合、日暮れ前に釣れる時は好釣果を期待していいと聞いたことがあるので、こちらとしてもうれしい一匹。二人で祝福させていただいたあと、急いで釣り座に戻り、本格的に打ち返しを開始する。しかし、エサトリがすさまじい。回収する仕掛けはきれいに掃除されて上がってくる。投入と同時にエサは無くなっていると考えたほうがよさそうだ。こういうときは打ち返しの回数を稼ぐことが釣果への第一歩になることが多いので、暑さに辟易しながらも必死に回収と投入を繰り返す。また、エサの付いたハリを魚に遭遇させる確率を上げるため、投入のたびに魚の回遊路とおぼしきカケアガリを探してみる。しかし、先日釣行した七里御浜では40mラインにはっきりと分かるカケアガリがあったのだが、ここではここだというものが見つからない。50mより沖は平坦な砂。50mラインから手前は所々砂紋らしきゴトゴトという感じがあって、20mラインにカケアガリらしい引っ掛かりがある。手前のカケアガリを試してみるが糸が波に叩かれるので、ライントラブルを避ける意味もあり50mラインのゴトゴトするあたりを集中的狙ってみる。
10時過ぎが満潮なので、その前後にチャンスがあるのではないかと期待したが、上がってくるのはアナゴばかり。大小取り混ぜて10匹近く釣ったところでエサをイカにチェンジしてみる。すると今度はアナゴがサイズアップ。1m近いようなものも掛かりはじめた。時折ドラグをジーッと鳴らすので紛らわしい。他のメンバーはアナゴすら反応が薄いようだ。ここで少し迷いが生じる。さっきから仕掛けを集中的に止めているゴトゴトはアナゴの巣なのではないか。ひょっとしてコロダイの回遊路から大きくそれているのではないか。しかし、たとえアナゴでも魚がいるわけだから、きっとコロダイも回ってくるはずと思い直し、辛抱強く作戦を続行する。エサもマムシとエビに戻す。
日付が変わった頃、エサの付け替えをしていると、ドラグがジーッと鳴った。慌てて竿先を見るが変化無し。「なんだ、またアナゴか・・」アタったとおぼしき竿の元に行き大アワセを入れる。竿にグーンと重みが乗るがただ重たいだけ。「ほらやっぱりアナゴや。でも今まででいちばん大きいかな」などと考えながら巻いていると、突然沖の方へ泳いでいこうとする感触が伝わってきた。「えっ!」あわててドラグを緩めるとジリリーッと走る。半信半疑で寄せてくると、今度は波打ち際で横走りだ。「間違いない、コロだ」慎重に波に乗せてズリ上げると、ライトの光の中に丸い魚体が横たわっている。一年ぶりに出会ったコロダイは実寸で48cmほど。今日の大会は2匹長寸であるが、これまであまり釣れていないようなので、もう一匹釣ればひょっとするかもしれない・・・。魚の群れがまだ残っていることを祈りながら打ち返しのピッチを上げる。このころから引き潮に入り、底の状態が取りやすくなってきた。50m付近のゴトゴトする場所のさらに少し手前に強めのゴトゴトが集中するエリアを発見。どうやらそこがカケアガリのようだ。当然そのラインを集中攻撃する。しばらくして再びためらいがちにドラグが鳴り、コロダイの37pを追加。これで2匹揃って長寸は81p。こうなると他のメンバーの状況が気になる。まずはK副会長に電話。今しがた60cmのコロダイをゲットしたとのこと。次にばんちさんに電話すると52pぐらいのコロダイを釣ったとのこと。ばんちさんは25p級のガシラを持っているはずなので2匹で77cmぐらい。かろうじて私の方が上回っているが、ここにきて地合なのかコロダイがばたばたと上がっている。とても安閑としていられる状況ではない。当然K副会長に2匹目がくれば大逆転となる。セーフティーリードをとるためには50cmクラスを追加したい。しかし竿先には反応無し。そうこうしているとK副会長から電話が入る。37pのコロダイを上げたらしい。ということは副会長の2匹長寸は97pぐらい。しっかり逆転されてしまった。
これまでか・・という気持ちの反面、今日はなんとなくまだいけそうな気がする。そう思っているとドラグ音とともに竿が三脚の上で跳ねた。よしきたっと思いアワせるが軽い。なんだ、なんだ。正体は40cmく゜らいのアナゴ。だからPEラインは嫌なんじゃー。少しがっかり。しかし、皮肉なものだ。アタリも無く期待せずに回収のためにしゃくった竿がぐぐーんと曲がる。「こいつ居食いでいやがった!」以前、古座の渡船屋で「コロダイは時々エサを食ったあと、その場でじっとしていることがあると」聞いたことがあるが、まさにそれだ。慎重にやりとりをしてズリ上げると43pほどある。これで2匹長寸は90pに到達。しかし少し足りないか・・と思っているとK副会長から電話。47cmのコロダイを追加したとのこと。これで107cm。大きく差をつけられてしまった。 3時を過ぎ、潮は干底近くまで引いた。時間的にはチャンスだが、潮がこれじゃあダメかもなあと考えていると、突然けたたましいドラグ音とともに竿尻がふわーっと浮いた。今日いちばんの大アタリだ。あわてて駆け寄り竿を手にとる。2回目のアタリは無いが、PEラインを通じてかすかな生体反応が感じられる。迷わず大アワセ。竿先が大きく絞り込まれる。ドラグを緩めるとすごい勢いで糸が出ていく。これは大物と直感。細心の注意を払ってやりとりする。その間にも頭によぎるのは大会の優勝争いのこと「もしこれが60cmあればいける。大逆転や。最後のチャンスや」なんともいえない緊張感が体を駆け抜ける。糸を巻いては出し、巻いては出し・・・何度繰り返しただろうか。ようやくランディングだ。竿を放り出して魚のところへ。メジャーをあてる。53cmぐらい。思ったより小さい。これで2匹長寸は101cmぐらい。うー
ん少し足りないか。その後も夜明けまで必死に打ち返したが、これが楽しい夏の夜の宴の打ち止めとなった。
審査会場、ばんちさんは結局コロダイの追加はならなかったが、14号ハリスを2度に渡ってブチ切られたそうだ。当然優勝を狙って一発にかけてシモリ際に回ってくるコロダイ、タマミのモンスターサイズに標準を合わせていたのだろう。狙ってそのサイズを食わせることができるのだからすごいことだ。紙一重の差で惜しくも3位。優勝争いは私とK副会長に絞られたが、6pの差でK副会長の勝ち。あと一歩で優勝は逃したが、競い合いながら真剣に釣るという楽しさを久しぶりに体験でき、このクラブに身を置かしてもらっていることにあらためて感謝、感激。幹事のみなさん、お疲れ様でした。
釣果 コロダイ 55.7、50.3、46.7、37.6p(拓寸、文中のサイズは実寸です)、アナゴ多数、イサギ、チャリコ
竿 スピンパワー425BX、プロサーフ425BX
道糸 PE4号
ハリス フロロカーボン10号
ハリ ビッグサーフ15号
エサ マムシ、エビ、イカ、ユムシ