鳥取・賀露港のカレイ

by 一本釣り師


 3月になってから職場が変わり、今までのように釣りのプランをたてることは不可能になった。新しい仕事に不慣れなことも重なって釣りに行けない日々が続く。ようやく出撃体制を整えた20日も、同行者が見つからず結局断念。天気も良く、悔しい一日を過ごした。一方、仕事で生活が大きく変わったのは私だけではなかった。レインボーキャスターズに入会以来、たいへんお世話になったK副会長の東京転勤が決まったのだ。18日のクラブの大会も仕事のため欠席せざるをえず、挨拶をすることができなかった。このまま不義理をしてしまうのかなあと思っていた矢先、K副会長の送別会も兼ねて釣行するとの話が飛び込んできた。よかった。これでこれまでのお礼が言えるぞ。そして待ちに待った24日。久しぶりに仲間とわいわい竿を振れる喜びを感じながら鳥取へ向かったのだった。「一日楽しく釣りができればそれだけでいい」最近大物を必死になって追いかける釣りが多かったので、こんなに純粋な気持ちで釣りに挑めるのは久しぶりだ。
 港に着くと先発隊の4人もすでに到着していた。M会長をはじめとしてレインボーキャスターズが9人勢揃いである。普段の釣行でこれだけ人数が集まるのも珍しい。すっかり日も昇った午前8時、ようやく渡船が離岸した。まず私、伝説の釣り師、私の20年来の釣友高田の3人が一文字へ上がる。ばんちさん、うじメールさんは他の波止へ。会長をはじめとした4人は、このベタ凪は見逃せないと房島へ上がる。それぞれがおのおのの作戦で花見ガレイに挑む。
 長い波止のどこで竿を出そうかと迷っていると、すぐあとの渡船で上がってきたTsuchyさんと鉢合わせになった。一緒に竿を振る仲間が増えてうれしいが、まだ竿だし前。あいさつもそこそこに波止の真ん中あたりで荷をほどく。この場所は昨年の12月にも竿を出した場所。午後2時まで粘りながら場所移動したために、その後にやってきた時合を逃した、私にとっては因縁のあるポイントだ。今日はここに決めた以上何があっても粘るつもりだ。早速竿をセットするが、潮は引きに入っており激しく流れている。チャンスは昼からだと読んだ。エサを温存しつつじっくりと攻めることにする。横に陣取った伝説師も同じ考えのようで、早々に眠りの世界に入っている。
 天気もいいし、ぽかぽか陽気だ。海にいるんだというという幸せを感じていると妙になごんだ気持ちになってきた。しかし、そんな時間は長くは続かなかった。「釣りをして楽しむ平和な休日」の静寂を破ったのはばんちさんだった。早くも35センチのイシガレイをゲットしたとの電話が入る。なごみ系の釣りはいきなりバトルモードへ突入。やはり来たからには釣って帰らねば!打ち返しと誘いの間隔を詰めて積極策に打って出る。するとほどなく、竿にいい感じの重みが乗った。「ひょっとして」と期待したが、少し様子が違う。抑揚が無く横滑りをするような引きだ。「たぶんあいつだろう」浮いてきたのは予想通りサメである。でも落胆するのはまだ早い。私が日本海でカレイを釣った時は必ずサメも釣れている。ここはひとまず、幸運の使者が来てくれたものと言い聞かせて打ち返しを続ける。その後、すぐにばんちさんがイシガレイを連発、うじメールさんもカレイゲットとの連絡。さらに房島でもカレイ爆釣モードに突入し、40cmオーバー2匹をゲットしたとの情報も入ってきた。やれやれ一文字だけが蚊帳の外のようだ。ポイントの選択を誤ったか。不安がよぎる。
 昼を過ぎ、そろそろ潮が変わるのではないかと海面に注目するが、変化の兆しはない。「今日は釣れる時と反対の潮向きや。逆に流れない限り
絶対釣れへんで」伝説師もあきらめ顔だ。そこへさらに衝撃の情報。うじメールさんが40cmオーバーのマコガレイを2匹ゲットしたとのこと。マコの40cmとなると価値は倍付けだ。しかも2匹も・・。なぜここだけ釣れないんだろう。針に刺すエサがどんどん大きくなっていく。もはやマムシの3匹がけ。よく伝説師にからかわれるのであるが、これは私が焦ったときの癖なのである。
 2時ごろ、我々の期待をあざ笑うかのように潮の流れがいっそう激しさを増した。もはや流れているというよりは飛んでいるという感じだ。これでは釣りにならない。伝説師はとうとうフテ寝をはじめた。ここでうじメールさんに電話を入れて、マコガレイを釣った時の状況を詳しく取材する。実はすこし前から気になっていたことがあったのだ。激しい潮流が、波止の先端に積まれているテトラにぶつかり、潮のヨレを生じている。このヨレは目の前の50メートルラインを横に走っている。ただ、このポイントは思い切り投げないとカレイは出ないと聞いていたので、ヨレの先へ放り込んでいたのだ。ヨレは気になるけど確信を持てずにいた。しかし、うじメールさんのカレイはともに近くで釣れたものだという。超近投はアイナメ狙いで朝からやっているが反応が無い。可能性があるとしたらヨレの走る中投ラインか。じゃあやってみよう。仕掛けを潮上に投入し、ヨレに沿って流して待つことにする。エサも誘い効果を考えてマムシの房掛けに青イソメをミックス。さあ、どうだ。
 少し離れたところで釣っていた高田が様子を見にやって来た。彼も朝からイイダコ3匹と苦戦中だ。「今日はもうあかんかもなあ」という会話をとしている時だった。いちばん右のプロサーフの竿先が2回ほど叩かれるように引っ張られたあとぐーっと入った。「おーっ、おーっ」と思わず声が出る。あわてて竿を手に取り、少し糸を送ってやる。10まで数えて高田の「いけーっ」の声とともに大合わせ。「来たっ」しかしまだ分からない。「サメかもしれへんで」と言いながらも慎重にリーリング。すると今度は下に向かって強烈に締め込む感触が伝わってきた。間違いない。これはカレイだ。足場が高いので10メートルぐらい手前で早くも魚体が浮いてきた。いい型のマコガレイだ。タモは伝説師のところにある。高田が走って取りに行ってくれる。寝ていた伝説師も起きてきた。海面を漂うカレイを見て「これぐらい抜き上げんかい」といった表情をしている。波止が高いので魚が小さく見えるのだ。私も「40かつかつかなあ」と言いながらタモへカレイを誘導する。最後は伝説師の見事なタモ入れでフィニッシュ。「よっしゃー」久しぶりの雄たけびだ。しかし、波止に横たわったカレイを見てふたりは唖然としている。こちらは釣れたことだけでルンルン気分なのだが、なぜか伝説師が殺気立っている。「はよメジャーで計らんかい」その声に促されるようにメジャーをあてると。なんと47cmもある。おーっ、でかいやんこれ。今年になってからあれだけ東北を攻めて釣れなかったサイズがまさか鳥取で釣れるなんて、いかにも皮肉である。自身としては去年6月に寄磯で釣った2匹に続くサイズで、日帰り圏内ではもちろん最大だ。期待をしていなかった分うれしい1匹である。
 港に戻っての記念撮影はまさにカレイ、カレイ、カレイといった様相。念願のザブトンを釣ったうじメールさんの満面の笑み。今回の釣行を最後に東京に行かれるK副会長もザブトンをゲットしてにこにこ。近来まれにみる大釣りとなった。


釣果 マコガレイ47cm、20〜25cm3匹
エサ マムシ、青イソメ





                    戻る


ばんちの投げ釣り放浪記に、うじメール氏放浪記がアップされています。