切目海岸のコロダイ
平成12年8月26日〜27日 by一本釣り師
夏から秋にかけて、南紀へ向かうキャスターが増えている。コロダイやタマミ(ハマフエフキ)といった南方系の磯魚を狙うためだ。磯場を住みかとするこれらの魚だが、夜になると浅い砂地に回遊してくることがある。それをひたすら待ち続ける「忍」の釣りである。
大きいものでは80aを超え、その引きを一度味わうとやめられなくなるという。もっとも引きが凄すぎて、糸が切れるのはもちろんのこと、竿が折れる、リールが壊れるなど、なかなか獲るのは難しいらしい。
「タマ・コロ」釣りは、仲間内でもちょっとしたブームだ。クラブ内でもほぼ毎週、誰かがトライを続けている。昨年まで、夏場は休息にあてていた私も「今年中にコロダイを釣る」ことを目標にフル回転。8月以降、毎週のように南へ向かった。しかし慣れない夜釣りでもあり苦戦続き。入れ食い状態のウツボとの格闘や、テントまで水没する南紀特有の大雨など、ツキにも見放されたか、修行のような辛い釣りが続く。
8月26日、今度こそはと気合いを入れ直し、印南町の切目海岸へ釣行した。同行者は前週も大雨の古座で共に修行に励んだ、K副会長とばんち氏、そして私同様初のコロダイゲットをめざす、うじメール氏。夜には“伝説の釣り師”こと西岡氏も合流予定という豪華?メンバーである。前日同じポイントに入った人の情報では、頻繁にアタリはあったがハリに乗らなかったとのこと。また、明け方に50a級のコロダイをあげた人もいるらしい。相当に期待できそうだ。
海岸中央寄りに私、右手にうじメール氏、ばんち氏、いちばん右寄りにK副会長が陣取る。ミチイト8号、ハリス12号にハリはビッグサーフ18号という“太仕掛け”で、エサはマムシ、ユムシ、そしてブラックタイガーを用意している。夕暮れとともに釣りを開始。しかしエサトリの猛襲で、どのエサも5分ともたない。昨夜は夜半前にアタリが集中したとのことで期待してみたものの、リールのドラグは沈黙したままだ。
午後10時ごろ、西岡氏登場。私の左側に少し離れて竿を出す。午後11時ごろその西岡氏から電話。竿出し直後に強烈なアタリがあり、一瞬で12号のハリスを飛ばされたそうだ。魚が磯を巻くように走ったらしい。「後ろ向いてる時にきた。これで今日は終りや。2時までやってあかんかったら、エソでも拾いに行くわ」と、はやくも嘆き節である。しかし魚の気配あり! 萎えかけた気力をふり絞り、不眠不休で打ち返しを続ける。
ケミホタルに目を凝らしていると、バックの星空を次々に流星が流れる。その度に「コロダイを釣らしてくれ」と願いをかける。果たして願い事はかなうのか? などと考えていると、はやくも午前3時。そろそろ勝負時だ。潮もほぼ満潮に近い。
これまでの情報を整理してみる。昨晩、今朝とアタリが出た時に共通しているのは、投点がすべて20〜40メートルで、手前のかけあがり付近ということ。エサはこれといって強調できるものはないが、ハリに乗った時のエサはブラックタイガーだったようだ。よし、作戦決定。すべての竿を超近投に切り換え、エサも温存していたブラックタイガーを惜しみ無く大放出!
作戦変更のために、順番に竿を回収・投入していると、今投げ込んだばかりの竿にアタリが出た。ドラグが小気味良くジィーッと滑る。「ほんまかいな?」と思いながらも、あわてて手にとり、送り込むと再度糸がジィーッと走った。
「今だ!」「頼む、乗ってくれ」渾身の力で大あわせをくれると、ググンと竿先が曲がり、首を振る感触が伝わってきた。「よし、来たっ」ついにやった。幾度か強く締め込むが、超のつくような大型ではなさそう。それでもなかなかのファイトである。岸近くまで巻いてくると、今度は大きく左に横走りした。この感じ、「たまりまへん」。強引に波打ち際へずりあげると白っぽい魚体だった。なんとなく、くねくねとした動きだ。まさかアナゴか? 急いでライトをあてると、そこに横たわっていたのは、小振りながら夢にまで見たコロダイだった。待ちに待った初物ゲットに「よっしゃぁー!」と久し振りの雄叫びが出た。興奮で手が震えている。ここまで苦労しただけに本当にうれしい一匹だった。
5人で夜明けまでがんばったが結局本命はこの一匹だけ。明るくなってからオジサンを追加して納竿となった。
| コロダイ | 45.6cm |
| オジサン | 40cm |
| ガシラ | 3匹 |
| 竿 | スピンパワー425BX |
| リール | パワーエアロ6000 |
| 道糸 | ナイロン8号 |
| ハリス | フロロカーボン12号 |
| 針 | ビッグサーフ18号 |
| エサ | ブラックタイガー、マムシ、ユムシ |