「私のインド紀行」…思いのままに
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思いのままに書いていいから、「私のインド紀行」みたいな感じでいいから、と編集長の津林さんに言われ、無責任ながら引き受けてしまいました。では、主観のまま、思いつくままに書かせていただきます。どうか、これがきっかけで購読者が減りませんように…。
§インド旅行の目的§
今回のインド旅行の目的は、世界情勢や自身の思想・活動に関するバンダナ・シバ博士へのインタビューや、同博士率いるNGO「ナブダーニャ」の活動視察です。滞在期間はわずか1週間。その間に、デリーにあるナブダーニャの事務所や組織が運営するショップ、デラドゥーンという町にあるナブダーニャの農場「ビジャ・ビディヤピース」、ヒマラヤに近いムスーリの町、それから南東に飛んでカルカッタの市街に行ってきました。尚、カルカッタ滞在中はほとんどトイレとベッドの中で過ごしたので、カルカッタ報告は割愛させていただきます(教訓:途上国ではなるべくアイスクリームを食べないようにしましょう)。
§インドはキョーレツな国§
インドに到着後、目の前の光景はあまりにも現実味がなくただ眺めているだけ、というような錯覚に襲われました。あまりにも日本と違いすぎる。朝の道路は牛(のら牛、飼われた牛、荷車につながれた牛)、人(朝食やチャイを売る屋台の人、屋台にたむろする人、オートバイに乗る人、リキシャを引く人・乗る人、その中に混じってたくましく登校する子供)、乗り物、排気ガス、砂埃、と事態は混沌を極めていて、それぞれがせわしなく、でも決して忙しそうにするでもなく、激しく自己主張しながら行き交っているではありませんか。
信号の存在感はかなり薄く、オートと呼ばれる自動三輪車のタクシーや普通のタクシーは、ちょっとでも邪魔が入ればクラクションをワンワンならします。人が通りを横切ろうとしても、車がスピードを落とす訳がありません。夜には白馬にまたがる制服を着たおじさんが、当然のように人ごみを掻き分けて進んでいました。なんだこれは!でも周囲の人は誰も不思議がっていないようです。何て危険なことをするんだ、と怒り出す人もいません。その光景はどうもフツーらしいのです。
通りを歩いていると、私たち外国人には、近くの人、そしてかなり遠くにいる人までもが、突き刺さるような視線を投げかけてきます(もっと近寄ると、視線を集めていたのは私自身というよりもむしろ手に持っていたデジカメだったような気もするのですが…)。カジュアルな普段着を着ていても自分の服だけが妙に色鮮やかで自然から逸脱したもののようで、圧倒的に貧しい人たちの中で、何かを冒涜しているような、ちょっとした罪悪感に襲われます。しばらくして目がようやく慣れてくると、自分は今インドにいるんだ、というたまらなくうれしい思いがこみ上げてきました。
§インドは何でもありの国§
今回、ガイド役として同行してくれたインド渡航歴5回以上のT子さんのおかげで、一人旅ではわからなかっただろうインドの味わい方ができました。泊まったホテルはもちろん1人200〜350ルピー(500〜900円程度)の安ホテルで、ナブダーニャの農場内の施設で支払った1人500〜750ルピー(1300〜1900円程度、3度の食事とチャイ、歌と踊り、孔雀見学付き)というのが最も高くつきました。でも、「お湯のシャワーが出なきゃいや」という私の要望のため、T子さんの水準からするとこれでも少しランクの高いホテルになってしまったようです(!!)。
列車は、うかつにも食事付きで座り心地のいい一等席を予約してしまいました。T子さんによると二等席なら列車の中にいろんな物売りの人が入ってきたり、満員の寝台車なら一つのベッドに何人も重なって寝ていたり、寝ている人の上に座る人がいたりと、日本の常識では信じられない光景を目の当たりにすることができるそうです。
T子さんは「インドは何でもありの国」と言います。翻すと、あるがままの自分を認めてくれる国。いろんな穀物やスパイスがあるように、いろんな人間がいてよしとされる。まさに、その一言にはインドの魅力がぎゅっと凝縮されているような気がします。
§「ビジャ・ビディヤピース」へ向かう§
ナブダーニャの農場「ビジャ・ビディヤピース」は、デリーから東北に300kmほど離れたデラドゥーンの町にあります。列車で5時間かかります。
駅に着いたとたん、どこのホームに行けばいいのかわからず、立ち往生。そばに立っている人に尋ねたら、周りの人も次々に参加してくれて親切に教えてくれようとします。誰も制服を着てないのですが駅の要所要所にじっと立っている人がいて困った人の手助けをしてくれるので、誰が駅員で誰がそうでないのか区別がつきません。駅に限らず、インドでは、人に道を尋ねたら近くにいる人がどんどん集まってきて親切に教えてくれようとするという場面が何度かありました。たとえ中年のおじさんであっても一生懸命旅行者の役に立とうとしてくれる姿勢には、少しかわいいものがありました。ま、たまに間違った情報を教えられることもあるのですが…。
さて、無事列車に乗り込み、食事やデザートを摂り、森やさとうきび畑を過ぎ、スラムや線路脇でカレーを食べる人々などを眺めていると、時間はあっという間に過ぎていきました。もっとも、腰を落ち着ける前に、私たちの予約席に座っていた人たちに移動してもらい、いっぱいになっている荷物棚にムリヤリかばんを押し込むなどの作業が必要だったのですが…!! 後になればすっかりそれも忘れて、快適な列車の旅になります。それにしても、どうして人里離れた森の中を通る線路の脇で人々はカレーを食べていたのだろう。やっぱりインドは不思議です。 (つづく・谷口葉子)
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