<<特集>> イラク情勢―繰り返されてきた占領下での拷問・虐殺 再び

 イラク情勢は混乱の度を深めている。4月の米兵の死者はイラク戦争開始後、最高となった。ファルージャでは700名以上のイラク人虐殺に対する反米感情の高まりの中で、米軍は、ファルージャの治安を一部イラク人部隊に任せて、イラク人レジスタンスの武装解除もすすまないままファルージャ包囲を緩めざるを得なかった。ナジャフでは、米運の攻撃で多くの犠牲者を出しつつも、サドル師を支持する武装勢力は徹底抗戦の構えで対峙を続けている。レジスタンスの高まりの中で、6月末の政権移譲の格好をつけるために国連を担ぐしかない米国は、ブラヒミ国連事務総長特別顧問の暫定政府構想の発表を歓迎するポーズをとりつつ、一方で、絶対に米軍の指揮権を国連に渡すことはありえず、暫定政府の権限の制限を画策するなど矛盾した対応を迫られている。そんな中、イラク人拘束者に対する殺害・虐待・拷問の実態が明らかになり、米軍情報担当者やCIAの組織的関与が疑われている。大量破壊兵器の発見なき後の大義名分である「イラクの解放」もいまやボロボロである。

◇22日 サマワのオランダ軍宿営地に砲弾◇

◇米政府方針 バース党員の復職容認◇
 
まず教員1万4000人を復職させる方針。実質的にイラクを運営していた旧政権下の専門家などを完全に排除しては、イラクの再建は困難だということ。

◇国連と米国間で暫定政府構想の調整固まる◇
 
24日付ワシントン・ポスト紙は米政府高官の話として、政権移譲後の暫定政府の構成が大統領以下29人になることが国連と米国の間で調整が固まった、と伝えた。形式的な権限しかもたない大統領と2人の副大統領を置き、首相が25人の閣僚を率いる。ブラヒミ国連事務総長特別顧問がバグダッドに戻り、最終的な人選に向け調整を行う予定。ブラヒミ氏は米ABCテレビのインタビューで、「(暫定政府閣僚は)多様な民族や宗教勢力を代表するテクノクラートで主に構成されるのが望ましい。政党の指導者は、暫定政府とは距離を置くべきだ」と述べた。米国防総省やチェイニー米副大統領らと近いチャラビ氏をはじめ大半の統治評議会メンバーが排除される見通し。一方、米国が暫定政府の権限を大幅に制限する意向であることがグロスマン国務次官の22日の上院外交委員会公聴会証言で明らかになった。同氏は、軍隊の指揮権が米に属することはもちろん、暫定政府には法律の制定権もないと述べた。同氏は、暫定政府の権限は外交と石油の輸出入の管理に限られ、外交政策についても、米国大使との協議が必要になるとの見方を示した。

◇米の新国連決議案 暫定政府の権限制限意図か?◇ 
 
26日付ワシントン・ポスト紙は、米政府が新たに提出する国連安保理決議案の骨子について、@米軍指揮下での多国籍軍の駐留を正当化するため法的地位を明確にするA人権擁護や主権日程に関する項目を除き統治評議会が3月に制定した基本法を廃止するBイラクの大量破壊兵器開発問題についてはUNMOVICを解体し、米政府の調査団に最終報告の策定権限を与える―などであることを伝えた。基本法廃止はシスタニ師らシーア派に配慮したものだが、全体的に、暫定政府の権限を大幅に制限する内容になっているとのこと。

◇英元大使ら52人 英首相に公開書簡 イラク・パレスチナ政策「見直しを」◇
 
パレスチナ問題について、「ロードマップ」を示しながら何もせずに米国が動くのを待ち続けた、とブレア首相を批判した。

◇イラク統治評議会が新国旗を承認◇

◇ブラヒミ氏 安保理で暫定政府構想説明◇
 ブラヒミ国連事務総長特別顧問は27日、安保理で現状報告を行い、暫定政府構想の概要を説明、「5月末までに暫定政府の人選を終えるのは可能」との見通しを示した。安保理はこの提案を歓迎する声明を出した。暫定的な提案として@イラク統治評議会に代わり、選挙管理に当たる実務者型の暫定政府を作るA暫定政府を率いる首相や正副大統領は選挙への出馬を認めず、政治性を排除するB7月に1000〜1500人規模で国民会議を開き、暫定政府に助言する諮問評議会を選ぶC暫定政府は短期かつ限定的な権限をもつに過ぎない―などの考えを示した。しかし、誰が大統領を任命するのか、閣僚名簿を誰が作成するのか曖昧な部分が残る。

◇統治評議会 独立選挙委設置を了承◇

◇米軍 ファルージャから段階撤退に合意◇
  米軍のファルージャ現地司令官は29日、イラク人主体の治安組織が30日からファルージャ市内に入り、治安維持に当たるとの方針を明らかにした。ファルージャを包囲している米海兵隊員約2000人が段階的に撤退することで地元代表者らと合意に達したことを明らかにした。地元代表のアフマド・ハルダン氏は米軍との主な合意について@ファルージャ南部からは36時間以内に撤退A北部は5月2日から撤退を開始し、イラク保安部隊(ICDC)とイラク人警察が米軍の代わりに展開するB旧フセイン政権下の軍将官が市内の治安責任者となり、ICDCと警察を指揮する―の3点だと説明した。この合意に基づいて米海兵隊は30日、市郊外への撤退を開始。約1100人の「ファルージャ防衛軍」(FRA)が市南部の米海兵隊のいた陣地に入った。FRAは、旧フセイン政権下の元兵士、警察官、地元部族らで構成され、米軍の指揮下で旧政権の軍幹部経験者であるムハンマド・ラティフ氏が率いている。今回米軍は、武装勢力側の重火器類の引渡しが行われないままの後方への撤退となった。また、合意に武装勢力側は参加しておらず、実際に戦闘が収まるかどうかは不確定。

◇米CNNなど世論調査 イラク人の52%が米軍への攻撃「肯定」◇

  米CNN、USAトゥデー、ギャラップ社の共同世論調査によると、米占領軍に対する攻撃について、イラク人の52%が「正当化できる」と回答。57%が米英軍の即時撤退を要求。46%がイラク戦争は「国に損害をもたらした」と回答。また、71%が米軍を「占領者」とし、「解放者」としたのは19%のみ。調査は3月22日から4月9日までにイラク全土で成人3444人に対して面接形式で行われた。

◇29日 サマワの陸自宿営地近くへ迫撃弾2発自衛隊 夜明けまで退避◇

◇米兵 バグダッドの監獄でイラク人捕虜を虐待◇
  米軍兵士がバグダッド近郊のアブグレイブ刑務所に拘置しているイラク人を虐待する写真が4月28日、米CBSテレビで放映された。同じ写真が30日、英BBCやアルジャジーラ、アルアラビアでも流れた。収容者から情報を収集する目的で、国防情報局(DIA)やCIAが組織的に関与した疑いがもたれている。

◇4月の戦闘によるイラク人死者1361人 米兵死者138人で月間最多◇
 
AP通信は独自の集計で、4月に戦闘に巻き込まれて死亡したイラク人は1361人、死亡した米兵は138人になったと伝えた。ファルージャでは地元病院関係者は731人のイラク人が死亡したとしており、AP通信集計にこの数字は含まれる。

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