ブッシュ政権のイスラムに対する敵意と侮蔑
◎「テロ対策を緊急課題と見ていなかった」―前大統領顧問証言
ブッシュ政権は9・11テロの事前情報を入手しながら、果たしてその対応策が正しかったのか、独立調査委員会は公聴会を開き、クリントン・ブッシュ両政権の外交・国防閣僚らが出席し、審査が行われています。3月24日、クラーク前大統領顧問が証言し、「『テロ対策は緊急課題』とブッシュ政権へ訴え続けたが、聞き入れられなかった」と、具体例を挙げてライス補佐官らを痛烈に批判、「テロは重要な課題だと認識していたが、緊急な課題ではないと見なしていた」と証言しました。
これを受けて30日、ブッシュ大統領はライス補佐官が調査委員会に出席、証言することに同意した、と新聞は伝えています。この公聴会後、ブッシュ大統領の支持率は10ポイントも急落しました。ブッシュ政権は事態の深刻化を恐れ、収拾に乗り出したのでしょうが、真相に迫れば迫るほど、ブッシュは大統領選で不利になるはずです。
だが、クリントン前大統領の民主党政権も弱点を抱えているので、真相が全て明らかにされるとは、私は思えません。そこで、私の情報収集には限界がありますが、推測も交えて私の考えを明らかにしたいと思います。
80年代初め、米メジャー(大手石油企業)・ユノカルは、アフガニスタン西部に巨大なガス田を発見します。当時のクリントン政権はパイプラインを敷設して、天然ガスをインド洋に面しているカラチまで運ぶ計画を立て、アフガニスタンを支配していたタリバン政権と交渉を始めます。タリバンは手ごわい交渉相手ですから、クリントン政権はパキスタン・英・仏などを仲介に立て、タリバン政権と秘密交渉を始めます。タリバン政権の代表はワシントンまで行き、米国務省で定期的な交渉をしていました。
秘密交渉なので、議事録は未だに一切公開されていません。それで推測に頼るほかないのですが、2001年、米国の大統領はクリントンからブッシュに交代しますが、これで米国の交渉姿勢が一変します。クリントンの民主党政権はアルカイダにパイプライン敷設料を支払って解決しようとしていましたが、後任のブッシュ政権は態度を一変させます。「オサマ・ビンラディンの身柄を引き渡せ。でなければ、戦争だ」と。これに激怒したアルカイダの首領オサマ・ビンラディンが指令したのが、9・11テロでした。
◎キリスト教原理主義者を支持基盤とするブッシュ政権
アルカイダのスタート・ラインは、82年の湾岸戦争でした。この戦争のために、米軍空軍基地がサウジアラビアに作られます。これに激怒したビンラディンはトラックに爆弾を積んで、米軍基地に突入させます。その理由は、米軍基地がイスラムの聖地メッカの目の前に作られ、異教徒によって聖地が汚されたから、でした。
米軍基地がメッカの目の前に作られれば、米軍機は何時もメッカの頭上を飛ぶことになります。これは、イスイラム教徒にとって耐えがたい屈辱です。メッカはマホメッド終焉の地で、ここに彼の遺骸が葬られ、毎年数十万人の巡礼者が世界中から訪れています。そこを始終、米軍機に空から覗かれるのです。イスラム教徒の不快感は察するに余りあります。
その後、ビンラディンはアフガニスタンへ渡り、ケニア・スーダン駐在の米大使館爆破、オマーンで米駆逐艦への攻撃等々、様々な反米テロ攻撃を続けます。その延長上にあったのが、米国の心臓部を狙った9・11テロでした。
この一連の事件を見て私の思うことは、米国の歴代の政権、特にキリスト教原理主義者を支持基盤とするブッシュ政権に、イスラムに対する敬意が欠如しているだけでなく、侮蔑心と敵意さえ持っているのではないか、ということです。米国は、アラブ・イスラムの人達が住んでいる地域に石油を依存しています。そのアラブ・イスラムに対して、ブッシュ政権は聖地を汚しておきながら、軍事力で恐喝します。
しかも、9・11テロ情報を事前に得ておきながら彼らを侮り、対策を講じなかったことが、公聴会で明らかになりました。
この議論を聞いて私が思うことは、ブッシュ政権がテロ情報を事前に入手していながら対策を講じなかったということは、「腑抜けのアラブ・イスラムの奴らに、そんな大それたことができるか」との思い込みがあったからです。中東地域の石油にお世話になっていながら、その米国が彼らに侮蔑心を持って接していたことが、9・11テロを招いたのです。この反省がなくイラクを侵略した米国は、今再び復讐を受けています。この馬鹿は、何時になったら直るのでしょうか。
(渡辺)
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