■ひとくちメモ■
--2004/04/16号--


 

◆日本の民度の低さがまた証明された―日本人人質事件で見えてきたこと
  ファルージャでの米軍の虐殺が進行する中で、武装勢力による外国人誘拐人質事件が頻発している。4月14日付の日経新聞によると、人質の数は17ヵ国 56人にのぼるという。傾向としては、軍隊を派遣している国かどうか、人質になっている人が占領軍に加担しているか否かが、早期解放されるか否かの分かれ目になっているようである。日本人も8日に3名が、14日に2名が誘拐されたが、3名は15日に、2名は17日に無事解放された。
 この間政府は、武装グループの要求に応じて自衛隊を撤退することの是非はともかく、武装勢力を挑発するような発言を行い、とても人質の生命への配慮を行っているとは思えないことがしばしばあった。一方、NGOや市民運動の側の対応は早く、政府への署名活動はもとより、これまで独自に作り上げた現地の人脈を活用し、また現地マスメディアへ直接訴えかけるなどして人質解放のために有効な働きを行った。今回の事件で見えてきたことは、多くのイラク人が自衛隊を占領軍の一部と考えていること、自衛隊の撤退を望んでいること、NGOや市民運動が政府に勝るとも劣らない情報収集能力・危機対応能力をもっていること、である。また、人質になった人達のNGOとしての活動が現地の人に評価されていたということが、解放において決定的に重要であった、ということである。
 日本人5人はいずれも、「イラク・イスラム聖職者協会」幹部のアブドルサラム・クバイシ師によって身柄を保護された。同師は、他の外国人人質事件でも仲介役を務め、存在感を増した。イスラム教宗教者が影響力を発揮する一方、イラク統治評議会の存在感のなさが浮き彫りになった。
 人質が解放された後、政府・与党の間から「自己責任論」が急浮上し、右翼マスコミでもこれに組する論調が展開された。これに乗じて外務省は17日、救出経費の一部について自己負担を求める方針を決めた。これらの現象は外国から見ると異様に見えるようで、多くの国のマスコミがこの問題を取り上げ、外圧によって「自己責任論」はやや下火になった。日本の民度の低さがまた証明された感がある。今回の事件で、NGOを通じたイラク民衆との直接の人道・復興支援の重要性、あるいは命の危険を犯してでも現場から真実を伝えようとするフリージャーナリストらの活動の重要性を否定してはならない。

<統計・数字から>

◇時価総額130兆円増 日経平均2003年度末 4年ぶり上昇 大手銀含み益3兆3000億円
◇2003年度の業種別日経平均 36業種すべて上昇 不動産1位 金融機関も上位
◇2003年度 介入総額32兆8000億円 3月中旬からは尻すぼみ
◇海外現法 経常益63%増 2002年度 最高の3兆7000億円 製造業の海外生産比率17.1%で過去最高
◇景況感4期連続改善 日銀短観 製造業97年6月以来の水準 非製造業プラスに大企業「良い」 中小「悪い」
◇景気一致指数 10ヵ月連続50%超 2月 景気拡大期25ヵ月に
◇外貨準備 最高の8265億ドル 3月末 ドル買い介入継続で
◇株式売買 外国人の買い過去最高 03年度 株価上昇を主導
◇日銀 景気判断を上方修正 「内需に底堅さ」7年ぶり強い表現
◇銀行貸し出し 5年連続減 2003年度末
◇経常黒字 過去最高確実に 昨年度累計 2月は8ヵ月連続増
◇景気回復でもマネー動かず 通過供給量10年ぶり低い伸び 企業 負債返済を優先
◇銀行貸出 75ヵ月連続の減 小泉政権3年で61兆円
◇企業物価が上昇 3月0.2% 3年8ヵ月ぶり 国際商品市況上昇映す
◇中国貿易額 日本と並ぶ WTO統計 昨年 4位に浮上
◇中国 高まる存在感 「直接投資に魅力」1位 国連調査 インド2 位
◆厚生年金の解散 最多32 基金数 ピークの7割に 2003年度 運用難で財政悪化 代行返上も加速
◆トヨタ 工場に派遣社員 製造現場まず500人 増産に即座に対応
◆倒産 公的融資が抑制 昨年度16%減の1万5790件 不況型の比率高まる 破産件数は過去最高
◆近畿の倒産12.8%減3753件 昨年度 負債0.6%増
◆技術系社員の45%「3年前よりやる気なし」 リクルート調査 人間関係も待遇も悪くて
○国民の豊かさ 日本14位 OECD30ヵ国 生産性本部が比較 教育・政府債務など響く
○公共事業の地域格差拡大 東京10年ぶり増 交付税依存 37都道府県10.5%減 2004年度の地方単独分 ○死刑執行 中国トップ 昨年726人 イラン108人 米65人が続く 28ヵ国調査
○自治体 「三位一体」不満多数 有効回答の8割超える 民主がアンケート
○DV保護命令申立件数 大阪断トツ422件 2位千葉の倍
○科学離れ 若い世代加速 30歳未満「関心ない」過半52.7% 内閣府調査

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