<<特集>> パレスチナ情勢
     
      --イスラエルの占領・国家テロ・人種差別主義を許し続ける米国--

◇シャロンの強引な「一方的措置」

 シャロン・イスラエル首相は、パレスチナ自治政府を交渉相手として話し合いによって問題を解決するのではなく、「一方的措置」を強引に押し進めようとしている。「一方的措置」とは、ガザ地区の入植地を一方的に撤去し、「ロードマップ」に沿ったイスラエル側の努力だと国際社会に対して宣伝しつつ、実はヨルダン川西岸に建設中の隔離壁の建設を継続し、現在の占領地の40%(全パレスチナの12%)の壁の中にパレスチナ人を押し込もうというものである。
 この方針のもと、ガザの抵抗勢力の壊滅をめざして、シャロン政権は3月22日、ハマスの精神的指導者アハメド・ヤシン師の暗殺を実行した。さらに、すべてのハマス幹部が暗殺対象だと公言している。イスラエルの国家テロに対して、米国はイスラエルを支持し続け、日本やEU諸国はイスラエルを非難しつつも毅然たる態度とは程遠い。マクレラン米大統領報道官は22日、「イスラエルには自衛権がある」「ハマスはテロ組織だ。パレスチナ自治政府はテロ組織を壊滅させるために行動する必要がある」と述べた。一方、ヤシン師の葬儀には20万人のパレスチナ人が集まり、ハマスのガザ地区責任者にランティシ氏が就任し、対イスラエル抵抗闘争が激化するのは必至。
 ヤシン師殺害に対する国際社会の動きは以下の通り。「ロードマップ」を提唱した米国、EU、国連、ロシアの4者協議が22日、カイロで緊急に開かれたが、声明はないままに終わった。国連人権委員会は24日、イスラエル占領地問題を討議する特別会合を開催、イスラエル非難決議を賛成31、反対2、棄権18で採択した。アラブ諸国の他、中国、ロシアと多くの途上国が賛成、米国とオーストラリアが反対、日本や欧州諸国は棄権した。安保理は25日、アルジェリアが提出したイスラエル非難決議を採決し、15ヵ国のうち仏、ロ、中など11理事国が賛成、英、独、ルーマニアの3ヵ国が棄権したが、米国が拒否権を行使したため否決された。

◇分裂するアラブ諸国の無力ぶり

 今回も分裂するアラブ諸国の無力ぶりが露呈した。29、30日に予定していたアラブ首脳会議が無期延期となった。26日から開かれていた外相会議で、「民主化構想」やパレスチナ問題で紛糾したため。米国の圧力で、親米のエジプトやヨルダンが「民主化構想」を主要議題として提案したのに対し、シリアが反発。シリアはヤシン師殺害などパレスチナ問題を最優先議題にすべきだと主張。また、安保理で対イスラエル非難決議に米国が拒否権を行使したことをめぐり、対米非難を決議に盛り込むかどうかでも折り合いがつかなかった。
 米国務省は26日、パレスチナ情勢建て直しのためにブッシュ米大統領が4月にエジプト、イスラエル、ヨルダンの中東3ヵ国の首脳を米国に招き、個別に会談すると発表。しかし「反テロ戦」の名のもとにアフガンやイラクに対してシャロンと同じことをしているブッシュは、イスラエルの分離壁建設や活動家暗殺に対して何も言えるはずがない。シャロンは29日、4月14日のブッシュとの会談で「一方的措置」に支持を取り付け、訪米後、閣議で採決する方針を国会で表明した。シャロンは収賄事件関与の容疑で起訴される可能性もあり、連立与党の宗教政党などがガザからの入植地撤去に反対しているなど、シャロン政権自体も安泰とはいえず、情勢は流動的である。

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