<<特集>> イラク情勢―サドル師支持派の蜂起で米英の侵略者の姿が鮮明に
占領軍や日本政府は、イラク人によるレジスタンスを、意図的にフセイン政権残党とアルカイダなど外国人勢力によるものという構図を描いてきた。しかしここにきて、サドル師支持派を中心とするシーア派が占領軍に対して蜂起。スンニ派の武装抵抗も活発化している。多数派のシスタニ師のシーア派も今のところ行動の平静を保っているが、占領軍による統治に対して明確に反対の意思表示をしている。4月4日からの5日間で占領軍の鎮圧で400人以上のイラク人が殺害された。戦争の口実であった大量破壊兵器も発見されず、民主主義をもたらす「解放軍」というごまかしも打ち砕かれ、侵略者としての抑圧的な姿が鮮明になってきた。
◇シーア、スンニ両派法学者 「反占領」で統一組織
バグダッドのイスラム教シーア、スンニ両派指導者は19日、両派法学者を束ねる新組織「イラク統一ムスリム・ウラマー教会」を発足したとの声明を発表。また、占領に反対する政治組織を糾合する「イラク国民憲法会議」結成の準備委員会の設立も明らかにした。声明はシーア派聖地カジミヤ地区のジャワール・ハーリシ師と有力スンニ派法学組織「イラク・ムスリム・ウラマー協会」のアブドッサラーム・クバイシ師の連名で、@占領下での政治プロセス拒否A占領終結のため両派の統一行動B新国家ではイスラム法は「主要な法源」とする-などと訴えている。
◇イラク開戦から1年 世界各地で反戦の取り組み
イラク開戦1年を迎えた20日、世界各地で占領統治に抗議するデモが行われた。米国では約250ヵ所で集会がもたれ、ニューヨークで約4万人が参加。ローマでは約25万人。ロンドンでは数万人。スペインではマドリードで約2万人、バルセロナで約15万人など、約50ヵ所で計20万人以上が集会に参加。日本でも東京ではワールドピースナウが日比谷野外音楽堂で3万人、共産党系が芝公園で3万人、日比谷小音楽堂では陸・海・空・港湾労組20団体による集会がそれぞれもたれた。大阪でも扇町公園と大阪城公園でそれぞれ1万人規模の集会がもたれた。この日、全国数百ヵ所で数十万人が行動。
◇陸自 第1次派遣完了 総勢560人に
イラクに派遣される陸上自衛隊の本隊第3陣の約120人が21日、政府専用機で新千歳空港を出発。これで陸自第1次派遣部隊の派遣が完了した。
◇シスタニ師
国連特別顧問に書簡「イラク基本法拒否を」
イラクのシーア派最高権威シスタニ師が、ブラヒミ国連事務総長特別顧問に対し、「イラク基本法」を拒否するよう要請する書簡を出していたことがわかった。書簡はまた、米国が検討を始めたとされる新安保理決議に同法の内容が反映されることへの懸念を表明。国連側が応じない場合、ブラヒミ氏が率いる選挙専門家チームとの面会を受け入れないとしている。
◇CPA 保健省に行政権移譲
スペイン ブレマーCPA代表は28日、CPA管轄下の25省のうち、初めて保健省に行政権を移譲したことを明らかにした。6月30日に向け、段階的に行政権を移譲していくもよう。ただし米国は、補佐役の「顧問」を残留させ、影響力を保つ意向である。
◇米調査団長
イラク大量破壊兵器「開発意図も検証」
辞任したデビッド・ケイ氏の後任で、イラクの大量破壊兵器の捜索を行っているチャールズ・ドルファー米調査団長は30日、「完成した兵器そのものから開発計画、開発意図に至るまで詳細に見ているところだ」と述べた。武力行使を正当化する口実捜しにやっき。
◇開戦以来の米兵死者600人
AFP通信によると昨年3月の開戦以来、死亡した米兵の数は3日までに600人になった。うち408人が戦闘で、192人が事故などによって死亡。
◇パウエル米国務長官 「安保理演説に誤り」認める
パウエル米国務長官はイラク戦争直前に国連安保理でおこなった演説について誤りを認めた。昨年2月5日に行われた国連演説で、大量破壊兵器の証拠の一つとしてパウエル長官が提示したのが、トレーラー型の生物兵器製造施設。ケイ前調査団長は1月、このトレーラーについて「生物関連兵器ではないというのが情報当局の共通認識だ」と米議会で証言していた。
◇シーア派のサドル師支持派 占領軍と各地で衝突
CPAは28日、シーア派のサドル師支持派の週刊紙アル・ハウザを60日間発行禁止処分にした。さらに、サドル師側近をイスラム教指導者ホエイ師の殺害に関与したとして逮捕。これに対しバグダッドで2日、シーア派の信者1万人以上がCPA前に集まり、米軍の占領に抗議する金曜礼拝を行った。4日以降は、デモ隊やシーア派民兵組織と占領軍の衝突が各地で発生している。4日、バグダッド東部のサドルシティーでシーア派民兵と米軍が衝突、米兵7人が死亡、20人以上が負傷、イラク人側も2人が死亡、7人が負傷した。シーア派聖地ナジャフでは、シーア派のデモ隊とスペイン軍が衝突、銃撃戦となり、双方合わせて22人が死亡、約200人が負傷した。アマラでは、シーア派民兵と英軍が衝突、イラク人4人が死亡した。南部ナシリヤでも、デモ隊とイタリア軍が衝突した。5日には、シーア派民兵組織がバスラ県知事庁舎に突入し、占拠。英軍と銃撃戦となった。占領軍と交戦しているのは主にシーア派の宗教指導者ムクタダ・サドル師の指揮下にある民兵組織マフディ軍とみられる。ブレマーCPA代表はサドル師を「無法者」と断じて、強硬な姿勢で臨む方針を示した。
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