「仏の顔も三度」の民主党
今年7月に参院選があります。これは我が国で初めての、自民・民主両党による二大政党制の下での選挙となります。そこでの最大の争点は、「国権の発動としての武力行使を禁じた」憲法9条の取り扱いです。自民党は「自衛隊の海外派兵を可能にする」ものに、これに対して民主党は「国連待機軍の創設」です。
双方共に「平和国家、日本」にバイバイして、戦前の日本、「戦争できる普通の国、日本」に戻そうというのです。「憲法9条堅持」を主張する少数派から見れば、自民・民主いずれも大同小異に過ぎず、これが二大政党政治の現実です。二大政党政治とは、国家に寄生して公的資金の奪い合いを競うシステムです。他方で、現行の資本主義経済システムから切り捨てられ、この争奪戦に参加を拒まれる少数派が二大政党制の下で存在していることは、言うまでもありません。
自民党が主張する「9条改正」は、現実に今回のイラク派兵が示すように、「自衛隊を米軍の下請」にすることであり、国民に分かりやすいのですが、他方で日本人の中には「国連幻想」が強いので、民主党の「国連待機軍」構想は曲者です。国連とは国際機関であり、日本という国家の意思と異なることをすることは、いくらでもありえます。そんな場合、日本は国連との間で板挟みに遭います。民主党の「国連待機軍」構想は、こうした国民の中にある危うい国連幻想に依存したもので、私は賛成しません。
今回のイラク戦争に際しても、ブッシュ政権は国連安保理の合意がなかったにもかかわらず、攻撃に踏み切りましたが、日本は賛成したではありませんか。本紙で指摘しましたが、日米安全保障条約には「国連憲章の尊重」との文言が何度も出てきます。言うなれば、日米同盟の有効性は「国連憲章の遵守」によって担保されています。それなら、日本は日米安全保障条約を根拠に、米国のイラク戦争支援要請を拒否すべきです。にもかかわらず、民主党の中でこれを主張した議員は皆無でした。その民主党が、今度は「国連待機軍構想」です。私は彼らに「仏の顔も三度」と、言いたくなります。
少数派は「護憲」を正面に掲げて
民主党は国連待機軍構想をぶち上げる前に、日米同盟に代わる日本の外交路線を打ち出すべきです。しかし、この政党は、米国ににらまれると政権が取れないと思い込んでいるので、言い出せません。それは、日本の周辺を取り巻く東アジア地域とどのような関係を結ぶのか、ということです。日米同盟とは東西冷戦時代の遺物であり、冷戦終結とともに見直すべきでした。それを10年以上たっても見直していません。これは怠慢のそしりを免れません。
経済の台頭著しい中国、この後を追うインド、この二つの大国を先頭にして、アジアの経済地図は激変しようとしています。これと日本がどのように向き合うのか、いつまでも「日米同盟重視」をオウムのように繰り返すだけでは、日本は東アジアの孤児になってしまいます。米国は遠からず中東から追い出されます。中東から追い出された米国とは、翼をもぎ取られた鳥に過ぎません。いつまでも、こんな気位ばかり高くて貧乏な国と、日本が腐れ縁を続けている理由はありません。こんな国とはせっせと早く手を切って、日本の経済的軸足を北米から東アジアへ移すべきです。
日本銀行は5000億$という巨額の米国債を抱えていますが、ドルは下落していくので、持っていると大損します。米国の顔色を伺って日本は尻込みしていますが、大損を出す前に、これを中国債に換えるべきです。何時までも日米同盟に日本が固執していれば、この国は「アジアの孤児」になってしまい、東アジアのどこの国からも相手にされなくなります。
民主党の本心は、「米国頼み」を変えたいと思ってはいるが、それを露骨に言うと米国からにらまれるので曖昧にしておこう、ということでしょう。したがって、7月の参院選にあたって、二大政党制から見放され、資本主義経済体制から切り捨てられていく人たちが掲げるべきスローガンは、「平和国家日本の堅持、憲法9条改悪反対」ではないでしょうか。 (渡邉)
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