<<特集>> イラク情勢--米調査団長「大量破壊兵器備蓄の証拠なし」明言
大量破壊兵器を捜索していた米調査団長が「大量破壊兵器(WMD)の備蓄の証拠なし」と明確に証言した。米英はもっともらしくWMD情報の分析が正しかったかどうか調査委を設置するというが、米のオニール前財務長官は既に、WMDは口実でイラク攻撃はブッシュ政権の既定方針だったことを証言している。日本でも、わずか1日半滞在の先遣隊報告のでたらめさが明らかになって国会は混乱したが、与党単独でイラクへの自衛隊派遣を衆院で可決。9日には、参院でも承認。イラクでは1月に入って、ますます米軍やイラク人警察官に対するゲリラ攻撃が活発になっている。イラク暫定政府の直接選挙の実施可能性を調べる国連調査団が派遣されることになったが、その調査結果を踏まえて国連がどう出るかとシーア派の動向が今後の焦点になるものと思われる。
◇湾岸諸国 イラク債権削減合意
サウジアラビアなど湾岸諸国は、20-22日のベーカー米大統領特使の歴訪を受け、同諸国全体で約470億ドルにのぼる対イラク債権の大幅削減に原則同意した。ただし、サウジなどは、イラク新政府の樹立を条件としている。
◇米連邦地裁 反テロ愛国法に一部違憲の判決
23日、米国の反テロ愛国法について、ロサンゼルスの連邦地裁が初の一部違憲との判決を下した。同地裁のコリンズ裁判官は、「平和的で非暴力の活動への援助もできなくなる。米国憲法修正第1条を侵すものだ」と述べた。
◇イラク 国連「選挙専門家」を派遣へ
◇英米独立調査委 英政府の大量破壊兵器情報操作疑惑を否定
イラク大量破壊兵器をめぐる英政府による情報操作疑惑と、それに関連したケリー元国防省顧問の自殺事件を調べていた独立司法調査委(ハットン調査委)が28日、報告書を公表した。同報告書は、イラクの大量破壊兵器に関する英政府報告書に情報の誇張があったとするBBCの報道には「根拠がない」と結論付けた。また、英政府が「イラクが45分以内に大量破壊兵器を実戦配備できる」との情報が誤りであると知りながら報告書に挿入したとするBBCのギリガン記者の報道についても、「根拠がない」と結論付けた。さらに、「BBCの編集体制には欠陥がある」と厳しく批判した。これにより、ブレア首相は昨年5月のBBCの疑惑報道以来受けていた責任追及を逃れることになった。同報告書でBBCの報道が批判されたのを受け、BBCのギャビン・デービス経営委員長、報道部門責任者のグレッグ・ダイク会長、ギリガン記者の3者が辞任した。しかし、英紙の世論調査では56%が「報告は不公平」と答えている。
◇イラク大量破壊兵器調査団長
議会で証言 「イラク備蓄、証拠なし」
イラクで大量破壊兵器の捜索に当たっている米調査団の団長のデビッド・ケイ氏が辞任。同氏は28日、米上院軍事委員会の公聴会で証言し、イラクが生物・大量破壊兵器を保有していたと判断したCIAなど米情報機関の分析は誤りだったと断言した。「イラクは湾岸戦争の後、生物・化学兵器の大規模生産を再開せず、大量の備蓄はなかった。核兵器の再開発は非常に初期の段階に過ぎなかった」、また、旧フセイン政権とアルカイダなどの協力についても「証拠は見当たらない」と発言。分析を誤った理由の根本的な検証が必要と指摘し、外部による調査機関の設置を求めた。
◇NATO
イラク派遣検討 米大統領に表明 暫定政権 の要請前提
NATOのデホープスヘッフェル事務総長は30日、イラク暫定政権から要請されれば、前向きに治安維持に協力する意向をブッシュ米大統領に対し表明した。
◇イラク北部アルビル
クルド人政党狙い 同時自爆事件
イラク北部のクルド人自治区アルビル州の州都アルビルで2月1日、市内にあるクルド人政党「クルド民主党」と「クルド愛国同盟」の事務所で自爆事件が起きた。死者は101人にのぼり、占領統治後最悪の事件となった。
◇米
05会計年度でイラク関連に最大500億ドル補正見通し
米行政管理予算局のボルテン局長は2日、イラク復興関連の追加経費を賄うために05会計年度に補正予算を編成することになるとの見通しを明らかにした。最大500億ドルの増額補正になる恐れがあると指摘した。
◇イラク大量破壊兵器(WMD)
英も調査委設置へ
WMDに関する前の米調査団長デビッド・ケイ氏の米公聴会での証言を受けて、英首相府報道官は2日、イラク戦争の口実となったWMDが見つからないことについて、「戦争前に情報機関が入手した情報の精度などを調べる方策を近く公表する」と述べた。調査委の報告期限を7月と明確に区切った。
◇米
独立調査委設置 最終報告は来年3月まで
デビッド・ケイ氏の公聴会での証言を受けて、ブッシュ米大統領は6日、イラク大量破壊兵器の情報分析に問題がなかったかを検証するため、独立調査委を設置し、7人を委員に指名した。北朝鮮やイランの大量破壊兵器も調査対象とし、最終報告書の提出は米大統領選後の来年3月までに最終報告書をまとめる。
◇自衛隊派遣
国会が承認
イラクへの自衛隊派遣をめぐる国会での論議は政府の相次ぐ答弁撤回・訂正で紛糾したが、31日未明、与党単独で衆院を通過した。小泉首相は29日の本会議で、イラク南部サマワの市評議会が機能停止となっている問題について「評議会が存在すると述べたが、撤回する」と述べ、27日の衆院本会議での答弁を撤回した。先遣隊報告に基づく政府の調査報告書は「評議会は住民の意向を反映した構成のため、実質的に機能している」と、評議会の存在を治安が安定している根拠にしており、サマワの治安安定の根拠そのものが揺らぐもの。また、石破防衛庁長官は衆院イラク復興支援特別委員会で29日、先遣隊が会ったのは評議会議長ではなく議長代理であったことを認め、誤りを訂正した。また、報告書の「原案」を防衛庁と外務省が現地調査前にまとめていたことを示す内部文書が暴露されたのに対して、石破防衛庁長官
は「本物かどうか確認できない」といって確認を避けた。これらの対応をめぐって30日も同委員会は紛糾し、採決を与党側が押し切ったため、野党側は反発、31日未明の本会議でも野党は欠席し、与党単独の採決となった。2月9日には参院でも可決し、自衛隊のイラク派遣は国会で承認された。
◇陸自本隊第1陣
イラクへ出発
石破防衛庁長官は26日、陸上自衛隊本隊と、その車両や装備を運ぶ海上自衛隊に派遣命令を出した。陸自本隊の第1陣となる施設部隊約90人が2月3日に出発した。海自の輸送艦・護衛艦は2月20日ごろに出発する予定。
◇政府
「国連待機制度」に参加へ検討開始
政府は2月2日、国連平和維持軍に提供できる要員などをあらかじめ登録しておく「国連待機制度」への参加に向け、関係省庁間の調整を始めた。今年末の防衛計画大綱の見直しでPKOなどを自衛隊の主任務に位置付けるのに合わせて、PKO参加を自衛隊の恒常的な活動とする狙い。
◇政府
有事関連法案の全体像提示
政府は2日、有事関連法案の全体像をまとめ、国民保護法制担当部長会に提示。新たに、外国船の臨検を実施する「外国軍用品海上輸送規制法案」(仮称)を提出することを明記した。これで、政府が2月下旬にも一括提出する予定の有事関連法案は@国民保護法案A米軍支援法案B自衛隊法改正案C交通通信総合調整法案D捕虜の取り扱い法案E非人道行為処罰法案F海上輸送規制法案―の7本立てとなる。
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