<<特集>>　イラク情勢--戦後安保政策の大転換 米占領軍支援に自衛隊派兵

　航空自衛隊に次いで陸上自衛隊も16日、米英の占領軍を支援するためイラクに向かって派遣された。他国を侵略・占領している米英軍を支援するための自衛隊派兵である。憲法に明確に違反し、安保政策の根本的な転換であるにもかかわらず、ほとんど議論の起こらないところに、今日の日本国民の劣化状況が表われている。イラク現地では、南部でも職を求めるデモが頻発。イラク警察や外国軍と衝突し始めている。またシーア派を中心に、政権移譲にあたって直接選挙を求めるデモが活発化しており、今後の焦点になりそうである。

◇イラク統治評議会 5地域連邦制案で固まる キルクーク帰属で対立
　イラク統治評議会の協議で全土を5地域に分ける案がほぼ固まっていることがわかった。油田都市キルクークの帰属をめぐり対立点も残っている。連邦制の内容について、�@バグダッド周辺�Aスレイマニヤやアルビルなどクルド地域�B北部モスルやティクリート、ラマディ、サマラなどスンニ派地域�Cナジャフ、カルバラ、バビロンなど中部のイスラム教聖地地域�Dバスラ、ナシリヤ、アマラなど南部のシーア派地域―の5地域に分ける案で原則合意したという。

◇米 イラク復興事業50億ドル入札開始 戦争反対国排除
　米政府は総額50億ドルのイラク復興の大型事業について、公開入札を開始。米企業のほか62ヵ国の外国企業も参加できるが、独・仏・露など戦争に反対した国の企業は排除。批判が出る中で、ブッシュ大統領は13日、カナダの参入を認め、ラムズフェルド国防長官は「3、4ヵ国」の参入を容認する方向で検討していることを明らかにした。

◇イラク 大量破壊兵器見つからず 米軍捜索チームが撤収
　8日付ニューヨーク・タイムズは、イラクで大量破壊兵器を捜していたCIAのデビッド・ケイ特別顧問率いる調査団1400人のうち約400人が、何も発見できずにイラクから極秘に撤収していたと伝えた。主に兵器貯蔵庫やミサイル発射装置の捜索を担当。

◇オニール前財務長官証言 「政権発足直後にイラク攻撃検討」
　オニール前財務長官は、米CBSテレビのインタビューで、大量破壊兵器の問題などは単なる口実で、イラク攻撃は政権発足当初からの予定された行動であったことを暴露した。

◇政府 イラク支援第1弾を決定
　政府は16日の閣議で、総額40億円規模の復興支援策第1弾を正式に決めた。治安対策として約31億円を拠出し、イラク全土の27都市の警察にパトカー620台を提供。うち20台をサマワのあるムサンナ州に配備する。また、国連人間居住計画を通じて約9億3000万円を拠出し、小・中学校や住宅、コミュニティー施設の再建・修復もする。陸自派遣に伴う現地の世論対策の観が強い。

◇陸自先遣隊イラクへ出発 戦闘状態の他国へ派遣
　　陸自の先遣隊約30人が16日、イラクに向けて出発した。イラクへの軍隊の派遣は、日本が米英を含め38番目。陸・海・空合わせて最大約1050人を派遣する計画。その場合、38ヵ国中8番目の規模。

◇イラク南部 求職デモ頻発 占領軍・イラク警察と衝突
　イラク南部のアマラで10日、職を求めるイラク人デモ隊に英軍とイラク警察が発砲、イラク人6人が死亡し、少なくとも11人が負傷した。また、南部のクークでも12日、失業者1000人が職を求めてデモや投石による抗議行動を行い、ウクライナ軍と衝突した。ウクライナ軍報道官は「軍が威嚇射撃を行った」と述べたが、負傷者の有無は明らかにしなかった。

◇シーア派 直接選挙求め各地で数万人のデモ
　シーア派の最高指導者シスターニ師が主権移譲に向けた直接選挙を求め、焦点化している。バスラでは15日、シーア派を中心に直接選挙を求めて数万人がデモ。バグダッドでも19日、数万人のデモがあった。ブレマーCPA代表は16日、一時帰国し、この問題についてブッシュ大統領らと会談した。会談後、「主権を返還する6月30日までの間に選挙が実施できるとは思えない。国連事務総長も同じ考えだ」と述べた。

◇イラク戦争開戦以来 米兵死者数500人突破 イラク市民は1万人近い死者

◇暫定評議会基本法委員会 基本法の骨子発表
　統治評議会基本法委員会のハニ・エドレス委員が基本法の草案の骨子を明らかにした。間接的な選挙で選ばれる暫定議会（250人）で首相を選出し、3〜5人の暫定議会議長が元首的役割を果たすとの内容で同委員会は合意したという。

◇米英占領軍・イラク統治評議会・国連の3者協議 開かれる
　国連本部で19日、上記3者による協議が開かれた。米英とイラク統治評議会は国連に対し、6月30日までに予定される暫定政府の樹立を直接選挙で行うことができるかどうかを見極める調査団を派遣するよう要請した。また、米英と統治評議会は国連に、国連職員の復帰も要請した。