イラクの反米闘争は米軍をペルシャ湾へ突き落とさなければ終わらない
フセイン逮捕後も抵抗は増すばかり

 サダム・フセイン元大統領逮捕によって再選に有利になった米大統領ジョージ・ブッシュは、やたらにはしゃいでいますが、イラク国内の情勢は反米テロによって混沌を極めており、米占領軍にとって情勢は日を追うごとに不利になっています。
昨年3月、米国がイラク侵略を始めた時、この戦争はフセイン政権を打倒したら終わりのはずでした。しかし、フセイン政権を打倒したものの、イラクの人々の米軍に対する抵抗は増すばかりです。昨年11月の米軍犠牲者は過去最大となりました。昨年12月14日、フセイン大統領は米軍によって逮捕されましたが、その後も、米軍の犠牲者は増え続けています。「米軍が独裁政権を打倒すれば、イラク国民に歓迎される」とのブッシュの目算は、完全に狂ってしまいました。米軍によって抑圧から解放されたはずのイラク国民の矛先は彼らに向かっており、その追及は止まるところを知りません。
 それでは、イラク民衆の反米闘争は何時になったら収束するのでしょうか。彼らの闘いはどのような条件の下で、終わるのでしょうか。フセイン逮捕はブッシュの再選に有利のはずですが、そう事態は単純でありません。彼を捕らえてはみたものの、彼にしゃべられたら困る米政府高官もおり、実際のところ、ブッシュ政権は彼の処遇に頭を痛めているはずです。
 83年のイラン革命によって、この革命が中東地域へ波及するのを食い止めるため、米国は西隣のイラクに接近し、フセイン政権の抱き込みを図りました。現国防長官ラムズフェルドも当時米政府特使としてイラクに派遣され、フセイン大統領と会見しています。こうして、フセイン政権のイラクは冷戦時代に、米国が石油利権を持っている中東地域における共産主義とイスラム革命に対する防波堤として、米国によって大事に育てられました。それが米国にとって邪魔となるや、乱暴にも軍事力でこの国家を抹殺しようとします。
 これだけ米国によってオモチャにされて、イラク国民は怒らないはずがありません。これは、人類文明発祥の地で暮らしてきたイラク人としての誇りと、彼らが信仰するイスラムを侮蔑してきた米国に対する、彼らの怒りの爆発にほかなりません。彼らの反米闘争の目的は、米国から石油利権を奪取し、それによる民族自決権の回復です。これは米国にとって石油資源略奪のための中東支配の終わりの始まりであり、中東の石油資源によって支えられた、世界に冠たる軍事大国、米国の終わりの始まりです。

ブッシュこそ世界中にテロを拡散
 
  私は50数年前に米軍の占領を経験しましたが、この時の占領と比べて、イラクに対する米軍の乱暴、狼藉には驚きました。東京空襲に際して、米軍は交通・運輸・水道・電力・ガスなど公共施設への爆撃を慎重に避けていました。降伏の際には、事前に日本政府代表が降伏文書に署名し、その条件に従って日本政府は粛々と軍隊を武装解除し、全ての武器・弾薬は日本政府によって米軍に引き渡されました。
 だが、今の米国はどうだったでしょうか。フセイン政権を無視した米軍は、政権そのものを武力で蹴散らしてしまいます。その結果、政権を支えていた武装組織が武器を持って地下に潜ってしまい、占領軍に対する武装抵抗闘争が続いています。
 こうして、イスラム原理主義の武装組織アルカイダを、米国はイラクに招き寄せてしまいました。もともと、イラク・バース党、フセイン政権を構成した人達はイスラム教徒でしたが、政治組織そのものは宗教とは関りのない世俗主義者の集まりでした。それが、イラクで反米闘争が燃え上がるや、彼らは続々とアフガニスタンからイラクへ移動している、と言われています。小泉首相がイラクへの派兵を表明するや、ビン・ラディンは東京へのテロを予告しました。先日、テレビでアルカイダの武装組織にいたという日本人の青年は「既に12、3人のメンバーが東京に潜入している。彼らがアラブ人とは限らない。欧米人もいれば東洋人もいる」と語っていました。
 ブッシュはイラク攻撃に当たって、「テロの脅威をなくすため」と、その目的を公言していました。しかし、現実は逆ではありませんか。彼こそ世界中にテロを拡散している張本人です。彼はフセイン政権を打倒したことによって、彼の思惑とは逆にアルカイダをイラクに招き寄せてしまったのです。その勢いが赴くところ、イラクにおける米石油利権の喪失となることは避けられません。
 誇り高いイラク国民は、かつて受けたことのない屈辱を米国から受けました。これが彼らの愛国心に火をつけてしまいました。米国にとっては“火遊び”のつもりだったのかもしれませんが、その代償は余りにも重いものについてしまいました。
 米軍の手伝いとして、自衛隊がこんな危険な国に派遣されて、無傷で帰れるとは奇跡です。もし、そうであったとしたら、何もしないで金網の中にじっと閉じこもっていた、ということでしょう。
  (渡邉)

 
  

 

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