<<特集>> イラク情勢--戦闘渦中に占領軍支援の自衛隊派遣
フセイン拘束後も、占領軍に対するゲリラ攻撃は続いている。そうした状況下、ついに航空自衛隊先遣隊が米英占領軍を支援するために派遣された。占領に加担することが正当かどうかよりも、自国民(派遣される自衛隊員)の安全しか議論されない状況に危うさを感じる。遠隔の地に占領に赴くのであれば、当地の人から武力反撃を受けるのは当然。市民であれゲリラ戦士であれ、ただ一人のイラク人も殺傷することのないよう願う。
◇ベーカー米特使 イラク債務削減求め、欧日歴訪
ベーカー米特使は16日、パリでシラク仏大統領、ベルリンでシュレーダー独首相と会談し、約1200億ドルにのぼるイラクの対外債務のうち、約210億ドルの公的債務について、一部免除と返済繰り延べによる債務削減を04年中に行うことで合意した。ドイツ政府が同日、3ヵ国合意声明として発表した。IMFによると、公的債務の内訳は、米が22億ドル、仏30億ドル、独24億ドル、日本41億ドル、ロシア35億ドルなどと見積もられている。ただし、ドピルパン仏外相は、債務削減合意にはイラク占領体制を早期に終結させ、主権の移譲と、イラク復興事業への各国の平等な参加が前提になると主張。小泉首相も29日、ベーカー特使と会談し、他の債権国が同様の対応をすることを条件に、04年中にパリ・クラブ(主要債権国会議)において、公的債務の削減に応じる考えを表明した。
◇韓国 3000人イラク追加派兵を閣議決定
韓国政府は23日、イラクへ3000人増派することを閣議決定した。韓国軍は、イラク北部のキルクークで4月末に撤収する米軍空挺旅団と任務交代する。南部ナーシリヤに派遣済みの工兵・医療部隊も合流し、韓国軍は、米英に次ぐ規模の派遣になる。
◇陸・海・空自衛隊に準備命令 空自は26日に出発
小泉首相は18日、自衛隊イラク派遣の実施要綱を承認。それに基づいて、政府は19日、自衛隊派遣のために03年度予備費から242億円支出することを決め、石破防衛長官は同日、陸・海・空の三自衛隊に準備命令を出した。航空自衛隊は、先遣隊48人のうち約20人がクウェート、カタール両国に向けて26日、出発した。防衛庁の方針では今後、空自については、C130輸送機3機と本隊約140人を1月中旬に派遣する予定。陸上自衛隊については、先遣隊28人を1月16日に派遣し、宿営地の設営部隊78人を1月31日に派遣、本隊約440人を2月21日から3月21日にかけて3派に分けて派遣する予定。自衛隊派遣に先駆けて外務省は、クウェートとの間で地位協定に署名。また米英暫定占領当局(CPA)との間で、イラク国内での自衛隊の法的地位について、裁判権免除など占領軍の特権を規定したCPA命令17号を適用することに合意した。一方、防衛庁は石川島播磨重工、三菱重工など大手の軍需産業に航空機や艦船、車両等の修理・維持管理のための民間技術者の現地常駐派遣を要請。
◇イラク米軍 反米武装勢力掃討作戦継続
マイヤーズ米統合参謀本部長は21日、イラクのフセイン元大統領を拘束したときに得られた情報により200人以上の反米勢力を拘束したと発表。さらに、23日深夜から24日未明にかけて、「バグダッド南部の反米武装勢力拠点」に対して大規模掃討作戦「アイアン・グリップ」を展開。1月3日には、バグダッド西方からシリア、ヨルダン国境に至るアンバル県で反米武装勢力の一斉捜索を行い、128人を拘束。イラク全土で、現在約1万人のイラク人が米軍に拘束されている模様。
◇フセイン拘束後も抗議デモやゲリラ攻撃続く
フセイン拘束後も各地で抗議のデモや職を求めるデモ、ゲリラ攻撃が続いている。27日にはイラク中部のカルバラで、大規模な多発ゲリラ攻撃が起こった。イラク占領軍の宿営地となっている大学キャンパスと警察署、および地元行政庁舎の計3ヵ所が自爆攻撃や迫撃砲などによる攻撃を受け、タイ兵2人、ブルガリア兵4人、イラク人警官ら7人が死亡、イラク人135人が負傷した。12月も米兵は22人が死亡している。1月2日には、バグダッドの西約60キロのファルージャで、米軍ヘリがミサイル攻撃で撃墜された。
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