侵略・蛮行の米軍追随などもってのほか
小泉首相は自衛隊派兵を断念すべき

実戦経験ない自衛隊は「いいカモ」

 自衛隊のイラク派兵が身近に迫っていますが、米軍占領下のイラクに自衛隊を派遣すれば、日本がどのように弁明しようとも、イラク人からは「米軍の手先が来た、しかも彼らよりもドジだ」と見られて絶好のカモにされるのは、間違いありません。
 それで、自衛隊のイラク派兵を根本にさかのぼって議論していきます。米国がフセイン政権崩壊後におけるイラク統治に失敗したのは、彼らを初めから侮り、軽蔑していたことにありました。この反省が米国にない限り、何をやろうとも無駄です。これを、日本の占領統治と比較しながら議論を進めます。
 米国は日本占領に当たって、天皇制政府を正式の交渉相手として認め、イラクでやったように、軍事力で政権そのものを蹴散らす、という無謀なことはしませんでした。日本政府は降伏文書に調印し、この文書に従って軍は武器を米軍に差し出し、秩序ある降伏の道を選択しました。
 ところが、イラクという国家と政権に対して何の尊敬の念も持たなかった米国は、フセイン政権を蹴散らしただけだったので、軍隊は武器を持ったまま地下に潜行します。祖国を踏みにじられた者の怒りが爆発することは、必至でした。この根底にあるのは、ブッシュ共和党政権のアラブ・イスラム蔑視です。イラク占領軍に対する彼らのテロ攻撃は、米国の側にこの反省がない限り、止むことはありえません。
 日本の自衛隊には、他の国の軍隊にない根本的な欠陥があります。それは、戦場で実際に戦争を体験したベテラン兵士が皆無であることです。これは、軍隊にとって致命的な弱点です。何故なら、実際の戦闘場面では経験が決定的だからです。教室で学ぶ座学など、実際の戦闘場面では何の役にも立ちません。
 私は兵役の経験はありませんが、兵役経験者からこの話はよく聞かされました。初めて頭上を弾が飛び交う戦闘に直面した時、初年兵は体が硬直してしまい、思考能力を喪失してしまいます。その時、頼りになるのがベテラン兵士の存在です。こんな時、彼は心身共に緊張し切った新米兵士を必ず自分のそばにおき、弾が飛んでくる方向から敵兵の配置を把握し、地形などから判断して、適切な指示を出します。これを教室の授業で学ぶことはできません。この経験の反復で、新兵はベテラン兵士に育っていきます。
 ところが、幸か不幸か、日本ではこれまでベテラン兵士を育てるチャンスがありませんでした。小泉首相も変な見栄を捨てて、この事実を率直に認め、自衛隊のイラク派兵を断念すべきです。

民族の尊厳踏みにじれば反撃は当然

 サダム・フセインの故郷、ティクリットの農村集落へ米軍は武器捜索で入っている、と伝えられていますが、各農家の家の中まではカメラは入りません。多分、米軍による農民や彼の家族に対する暴行・テロが行われ、イラク側に多数の犠牲者が出ているはずです。家の中でどんな蛮行が行われたか、マスコミは何も伝えていませんが、想像するに余りあります。
 イラク人は誇り高い民族です。イラクは人類の農耕文明発祥の地であり、16世紀に喜望峰回りの航路が発見されるまで、イラクの首都バグダットはヨーロッパとアジアとを繋ぐ唯一の商都として、繁栄を極めていました。今なお、チグリス・ユーフラテス川流域は稲作が盛んで、農民も戦争さえなければ、豊かに暮らしていくことができ、第三世界の発展途上国とは一線を画す異郷です。
 この誇り高い民族の自尊心を踏みにじったのが米国です。米軍は彼らからそれ相当の懲罰を受けて然るべきです。日本の自衛隊が米軍の後をノコノコついて行くなど、もってのほかです。
この原稿を書いた後の29日、ティクリットで日本の外交官2人がイラク人によって殺害されました。彼らはガードマンを同伴していませんでした。余りの無神経さに、私は驚いています。イラクの中でも特にティクリットが危険であることは、日本にいる私でも分かります。「戦争を知らない世代」の日本人が、ブッシュに煽られてノコノコとついていけばどうなるか、不幸な結果が待ち受けているのは、火を見るより明らかです。
 だが、「ブッシュのポチ」にはそんなことは、念頭にすらありませんでした。それで、彼らは格好の標的となりました。戦後世代の日本人が戦場にどんなにそぐわないか、この悲しい出来事は真実を語って余りあります。 (渡邉)

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