<<特集>> イラク情勢--戦争の性格規定のなし崩し的変更を狙う米国

 米国は11日、ブレマー暫定占領当局代表を急遽呼び戻し、国家安全保障会議を開催。そこでイラク人への主権移譲を来年6月までに前倒しするというイラク占領政策の軌道修正をおこなった。「安保理決議1511」後も国際社会の支援を得られない中で、一定前向きの姿勢を示す必要があったためである。しかし、主権移譲後も米軍の駐留を続けると明言しており、米国の基本戦略である「中東民主化」と市場化、石油支配という狙いは何ら変わるものではない。ゲリラ戦が占領軍対象から米国に協力するイラク人やイラク国外へ拡大する中で、米国はイラク戦争を再度「対テロ戦争」という枠組みに引き戻そうと、論を構えてくるだろう。

◇イラク駐留米軍兵員交代計画発表 交代で2万5000人削減

 米国防総省は6日、13万人規模のイラク駐留米軍の兵員を順次交代させ、来年5月までに約10万5000人に削減する兵員交代計画を発表した。

◇トルコ イラク派兵中止決定

◇大規模ゲリラ・自爆事件相次ぐ

 米軍ヘリへのロケット弾攻撃が相次いだ。7日、イラク北部ティクリート近郊で米軍ヘリがロケット弾を被弾して墜落、6人が死亡。15日には、イラク北部モスルで米軍ヘリ1機がロケット弾攻撃を受け、別の1機に衝突、2機が同時に墜落し、17人が死亡した。12日には、イラク南部ナーシリヤのイタリア警察軍の駐屯地にトラックが突入して自爆し、イタリア兵士ら16人、イラク人8人の計24人が死亡、多数が負傷した。自衛隊の派遣先とされているサマワは、ナーシリヤの北西約100キロのところ。また、トルコのイスタンブールでも大規模な自爆事件が相次いだ。15日、2ヵ所のユダヤ教礼拝所で自爆事件が起こり、23人が死亡。20日には、英総領事館と英金融グループ「HSBC」の現地本部に対して自爆事件が連続して起き、少なくとも26人が死亡、450人以上が負傷した。ショート英総領事も死亡。ブッシュ米大統領の訪英に合わせて英国関連施設を狙ったもの。

◇米英暫定占領当局(CPA)とイラク統治評議会 来年6月主権移譲で合意

 CPAのブレマー代表とイラク統治評議会は15日、来年6月に主権移譲を完了することで合意した。イラク統治評議会が15日に発表した声明要旨は―@統治評議会が04年2月までに、移行期の国家統治に関する基本法を制定。同法に定めた手続きによって、同年5月末までに暫定議会を選出A基本法の趣旨は、▽宗教選択の自由を保障▽三権分立を保障▽非集権主義▽軍隊と治安組織の文民統制を徹底▽イスラム教の伝統による国家だが、他宗教についても信教の自由は保障するB基本法で国民によって選ばれた代議員による新憲法起草への日程を定め、新憲法のもとで05年末までに正式な政府を民主的に樹立するC暫定議会のもとで04年6月末までに暫定政府を樹立、この政府が、国際的に認知された完全な主権を行使する。この時点で占領状態は終了し、米英の暫定占領当局は解散、統治評議会の役割も終了するD暫定議会と暫定政府は新憲法が承認され、選挙で選ばれた新政府が発足するまで活動E統治評議会は暫定政府発足までの間に、新たな政治システムの構築に全イラク国民が参加できるよう、あらゆる政治、社会、宗教的指導者や一般市民を含めた広範な政治的対話を始める―以上。

◇米軍 大規模な掃討作戦開始 空爆も再開

 イラク駐留米軍は17日、バグダッド北西の「スンニ派三角地帯」とバグダッドで大規模な掃討作戦を開始した。ゲリラ掃討作戦「アイアンハンマー」の一環として、18日には、バグダッド北方の攻撃に多数の500ポンドや1000ポンド爆弾を投下、2000ポンドの衛星誘導爆弾も使用された。19日には、5月の戦闘終結宣言後最大規模の空爆を行った。米軍は「砲弾の発射地点」とか「ゲリラのアジト」などと言っているが、希薄な証拠に基づく、市民を巻き込んだ無差別殺戮を行っている可能性が高い。

◇ブッシュ訪英に抗議 ロンドンで15万人デモ

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