<<特集>> イラク情勢--各国の派兵・資金援助進まぬ中 突出する日本の援助

 10月16日にイラクへの多国籍軍派遣や人道支援・経済復興協力を求める「決議1511」が安保理の全会一致で可決されたのを受けて、各国の対応が注目されていたが、仏・独・露がイラクへの主権が移譲されない段階での派兵や資金援助に慎重な姿勢を示したため、今のところ、米国にとって思ったほどの「成果」は表われていない。むしろ、ゲリラ戦がますます激しくなってきており、国際機関や占領軍に協力するイラク人も攻撃対象になってくる中で、状況は混沌としてきている。

◇トルコ首相 イラク派兵撤回を示唆
 トルコのエルドアン首相は18日、イラクへの治安維持部隊派遣の決定について「イラク国民が望まないなら何もすることはない」と述べ、イラク側が受け入れないなら撤回する可能性を示唆した。

◇イラク復興費 米国、世銀基金を通さず
 米政府高官は22日、米国が予定しているイラク復興支援203億ドルについては、世界銀行と国連が新たに設けて管理する信託基金を使わない方針を明らかにした。米国が自国資金を自由に使えるように米英暫定占領当局(CPA)への直接供与とする方向。信託基金を通じた多国籍支援型を目指す欧州諸国などとの溝が広がる可能性がある。

◇イラク復興支援国会議 330億ドル資金提供表明
 約70ヵ国と約20の国際機関が参加して、イラク復興支援国会議がマドリードで23・24の両日行われた。日本は4年間で50億ドルの支援を正式発表。議長団は表明された資金の総計は07年までの4年間で「少なくとも330億ドル」と発表した。米国が203億ドル、日本が50億ドルを表明し、総額の4分の3が日米の拠出。日本の突出ぶりが目立つ。その他、EU8億3000万ドル、英国9億2000万ドル、スペイン3億ドル、イタリア2億3000万ドル、韓国2億6000万ドル、周辺アラブ諸国が計20億ドルを表明。世銀が30-50億ドル、IMFが3年間で25億-42億5000万ドルの融資を表明。仏・独・露は国連決議「1511」に賛成したものの、主権がイラク人に移譲されていない段階での個別の拠出金の表明はしなかった。

◇ゲリラ戦 ますます活発化
 ゲリラ活動がより活発、組織的になってきている。占領軍中枢を狙った自爆攻撃や、米軍ヘリ撃墜など武器のレベルや戦術が高度化してきており、また国際機関や占領軍に協力するイラク人なども攻撃に対象にするなど、無差別化の様相も示し始めている。26日には、イラクを訪問していたウォルフォウィッツ米国防副長官が宿泊するバグダッドのラシッドホテルにロケット弾が数発撃ちこまれ、米兵1人が死亡、15人が負傷した。翌27日には、バグダッド中心部にある赤十字国際委員会(ICRC)で救急車が爆発し、ICRCのイラク人職員ら11人以上が死亡した。その後、4ヵ所の警察署付近でも爆発が起き、米兵1人を含む7人以上が死亡した。米英暫定占領当局(CPA)は一連の攻撃による死者は計34人、負傷者は224人と発表した。5件とも自爆攻撃と見られる。11月2日には、バグダッド国際空港に向けて飛行中の米軍の輸送用大型ヘリCH47チヌーク1機が地対空ミサイルと思われる攻撃を受けて撃墜され、米兵15人が死亡、21人が負傷した。

◇米連邦地裁 反戦Tシャツ禁止は違憲 高校生の訴え認める
 イラク戦争前に反戦Tシャツの着用を禁じられた米ミシガン州の高校生が、学校を相手取り、着用禁止の差し止めを求めていた訴訟で、10月1日、高校生の訴えを認める判決が出された。ニューメキシコ州でも、戦争をめぐる議論をクラスで行うなどして停職処分を受けた3人が教育当局を訴えていた問題で、和解が成立した。今回の判決は、イラク戦争の行き詰まりの中で、過剰な愛国主義的雰囲気を見直す雰囲気が出てきたことの表われ。

◇国連、バグダッド撤退を決定 スペインも外交団撤退を決定
 アナン国連事務総長は、バグダッドで起きた赤十字国際委員会などへの連続自爆事件を受け、バグダッドからの国連の非イラク人要員を完全撤退させると決めた。また、先頭にたって米英を支援してきたスペインも11月4日、バグダッドから外交団を撤退させることを決定。CPAに加わっている14人の専門家も引き揚げの対象となる。

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